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第99話 『ルベドの子供たち』に会いに

「……他にも俺みたいな(やつ)がいるのか?」

「もちろん。……ただ、体に直接アニミウムを入れた例は聞いたことがないがな。アタシたちは『ルベドの子供たち』の補佐をしている。彼らが『箱』を探し、破壊するのを手伝ってるんだ」


 俺と同じような体質の(やつ)らがいる。そして、彼らは『箱』を破壊して回っている。俺がさっきいとも簡単に『箱』を破壊し、かつ、何か(つな)がりを感じたことと関係がある気がしてならない。


「『箱』と俺のような『ルベドの子供たち』にはどんな関係があるんだ?」

「それは直接本人たちから聞いたほうがいい。そうすれば、ニコラ、お前はこの街に来る前から『箱』の当事者だったんだとわかるだろう。お前の体の秘密もな」


 俺の体の秘密。『ルベドの子供たち』。それはもちろん聞くしかないだろう。


「どこに行けばいい?」

「ギロリダという海岸沿いの街だ。ツダムという魔道具の聖地の近くにある。そこに数人の『ルベドの子供たち』が集まっている」


 ツダムは最近聞いたな。ちょうどいいからクロードと一緒に行くか。どうせそれほど長い間ここを離れることにはならないだろう。




 数日後、俺とクロードは準備を完了していたが、キカはついてこないらしかった。


「こいつが気になるんだ」


 そう言って指さしたのは見送りに来ていたローザだ。


「こいつって言わないでくれる?」


 ローザはグレンを通して文句を言う。キカのサーバント、デクスターとシニスターは人型になっていて、グレンのことを興味深そうに眺めていた。


「すごい完全にご主人様に従順です!」

「どれだけいじめられたらそんな風になれるんですか!?」


 こうしてみると同い年くらいの少年が三人ふざけ合っているようにも見えなくもない。グレンは()(げん)な顔をして二人を見ているけれど。彼にしては珍しい表情だった。


 キカはローザに近づくと腰を曲げるようにして顔を近づけた。


「アタシの知り合いでもここまでサーバントを使える(やつ)はいない。アデプトを使えるやつでもだ。鍛えがいがある」


 ローザは見下ろしてくるキカとは目を合わせず、グレンを通して言った。


「アデプトを教えてくれるのであれば、あなたに師事してもいい」

「よし、決まりだ」


 キカはローザの肩を(たた)いた。ローザは眉根を寄せている。無理だろうと思って言ったら承諾されてしまった、そんな感じに。


「本当に教えられるの?」

「ああ、もちろん」


 キカはぐっと口角を上げた。本当ならローザの「今までより強くなる」という目的を今まで以上に早く達成できそうだけど、ローザも俺も半信半疑だった。キカについてはわからないことが多すぎる。


「アタシは厳しいぞ。いじめ抜くからな。覚悟しろ」


 キカが言うとデクスターとシニスターが(ほお)を染めた。


「「いいなあ。いいなあ」」


 グレンが冷たい目で二人を見ていた。


 馬車がやってきて俺たちはそれに乗り込む。俺たちというのは俺とクロードだけのはずなのだけど、なぜかジェナが一緒に乗ってきた。


「おい、何でジェナが乗ってる」

「冒険に連れてってくれるって約束したから」


 ヒルデがジェナと入れ替わる。


「冒険だ冒険だ」


 ヒルデは言って、馬車の中で寝転んだ。それは絶対冒険に行くポーズじゃねえ。


 はあ。まあいいか。いざとなったら隠れるだろう。街の中でさえセブンスやゴドフリーから隠れてこれたんだ。


「じゃあ、一()(げつ)か二()(げつ)か、そのくらいで帰ってくるよ」


 クロードはそのくらいあれば情報は仕入れられると言うのでその期間をローザに言った。


 馬車が動きだす。俺はローザに手を振った。


 転移装置で移動すればいいじゃないかと言われればその通りなのだが、ツダムやギロリダの近くにそんなものはないらしい。なので馬車で移動をする。一週間くらいかけて馬車を乗り継ぎ、時折俺が二人を背負って《身体強化》を使って運び、ついにたどり着いたその場所で俺はぎょっとした。


 なんか空に浮かぶ島が見えるんですけど。そんな場所、俺は一つしか知らない。あれは……


「ノルデアだ」


 こんなところにあったのか。アリソンは今、あそこにいるはずだ。


次回は火曜日になります。

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