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第48話 アールスラーメとお出かけ。その1。

今日は朝から老人がいない。

魔導七賢の何人かで話し合うことがあるらしく、最近では珍しくアイナスも同行している。


そして、ガウムもいない。

馬と白馬、それから、遅れてアルのお祝いに来たデロイと一緒に、竜の城に出かけているのだ。


一方、老人が動くような案件にはあまり首を突っ込まない若者と、端から突っ込む気がないアルは留守番である。


つまるところ、二人きりなのだ。


流石にいつもと比べて格段に静かな家の中の様子に、最初は、スパイスの配合でも研究しようか…と考えていた若者も少し思うところがあった。


そこで、朝食前の瞑想をしていたアルに聞いてみた。


「アル、今日はどうやって過ごすか考えてた?」


するとアルは、少し考えてから、

「今日は麓の街に行ってみたいかも。」と返した。


「麓の街?」

「うん。」

「行ったことは…。」

「1回、上を飛んだだけ。」


成程…と思いつつ、もしかして何か目的があるのかと、若者が聞くと、単純に行ってみたいから、らしい。


老人から、島から出て暮らす竜は存外少ない、という話も聞いていた若者。

もしかしたら意外と人間の街は珍しいのかな、と思い、

「じゃあ、朝食を食べたら行ってみよう。」

とアルに提案する。


するとアルは、

「分かった。」

と短く返した。


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その後、普段は否決されがちな肉々しい朝食を食べた2人は、ささっと出かける準備をする。

ちなみに、麓の街と言っても実際にはかなりの距離があり、流石に歩いていくと時間がかかり過ぎる。


ではどうするのか。


「うーん。速い。」


と若者。


答えは、竜形態のアルに乗って移動、である。


とはいえ、流石に街の傍まで飛んで移動しては騒ぎになると思い、街の近くの街道沿いまで飛んで、あとは降りて徒歩移動の予定である。


ちなみに麓の街では、老人が竜の往来について何度も説明しているので、直接飛んで行ってもほぼ問題はないのだが、余計ないざこざをあえて起こす必要もないだろう。


さて、若者が竜形態のアールスラーメを見るのは当然初めてではない。

少し前も、ちょっと大きくなったかな、と思ったばかりである。


ただ、それにしても何かちょっと違う気がする。

なんというかこう…。



女性っぽい。



女性に女性っぽいというのは失礼なのかもしれないが、最初に見たときは女性というよりは竜!という感じだったので、そこはまあ勘弁してほしい。


実際に乗せてもらうと、ますます女性っぽい感じがした。


本人にもこのことを話してみたら、何だかちょっと嬉しそうだった。

アールスラーメが嬉しそうにしているのを見て、自分もちょっと嬉しかった。


ちなみに、黒竜は基本的に背中に誰かを乗せることはない。

龍だろうと人間だろうと、何であろうと、である。


その唯一の例外が「伴侶」である。


後ほど老人に揶揄われてアイナスが暴れる様子が目に浮かぶようだが、まったく意に介さない二人は降りれそうな場所を探してから森の中を歩き、街道沿いに麓の街ペリドーへ向かって歩いて行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<アル視点>


突然の出会いから始まった島の外での生活ではあるが、アルは比較的満足していた。


知らない土地。

マルスマーダ様の絶技。

面白い出会い。

ニックとのいろいろ。


世界は驚きに満ちている!というわけでもないが、島を出て生活することに高揚していることは確かだ。


そして今。

ニックと2人でペリドーに行く途中である。


それなりに距離が遠いので、竜形態に戻ってニックを乗せていくことにした。


背中から、ほのかに感じる重さと温かさ。

多少気恥ずかしくはあるが、嫌ではない。


ニックも「揺れも無く静かで凄い。」と褒めてくれたので、ちょっと嬉しい。


そういえば、誰かを乗せて飛ぶのは初めてかもしれない。

まあ、竜が竜を乗せても意味ないな…と、頭の中で同じくらいの大きさの竜が重なっている図を思い浮かべる。


人間くらいの大きさなら普通に乗れるけど…まあ背中は死角になりやすいし、あまり気軽に乗せるものでもないだろう。


そのまま少し移動していると、ニックが多少言いづらそうに「大変失礼な言い方かもしれないが、竜形態のアルも女性っぽい感じがする。」と言ってきた。


竜同士なら男女なんて普通に見ればわかるのに、と思いつつ、何だか嬉しかった。


「もう少ししたら見えてきそうだね」

「うん。」

「そろそろ降りようかな。」

「うん。」

「ありがとうアル。」

「どういたしまして。」


さて、じゃあ降りて歩こう。

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