表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/104

第44話 肉好きの若者が、なつかれる話。その4。

アイナスが不在の間、アルの竜形態を見た若者が、不意に気づいた。


「少し、大きくなった?」


それに対してアルが、うん、と答えた。


普通に成長しただけなのか、それとも何か他に理由があるのか聞いてみたところ、若干答えにくそうなアル。

若者は、答えにくそうなところに聞き直すのも失礼かと、話題を変えようとする。


すると、老人を連れたアイナスが戻ってきた。


「ただいま!」

「何とも忙しないのう。」


多少うんざり気味の老人の様子に苦笑する若者。

一方アイナスはやり切った感を出している。


すると老人が、アルを一瞥して、少し大きくなったの、と呟いた。


「マルス翁もそう思いますか。」

「まあおかしくもないがの。」

「そうなんですか?」


若者は、どうやら老人が何かを知っているらしいと感じ、差し支えなければ教えて下さい、と聞いた。


老人は、竜族に限らず一般的な傾向と思うがの、と前置きした上で、

「体が家族を増やすために準備をしとるんじゃろ。」

と答えた。


一瞬、「?」と思った若者も、すぐに合点がいった。

そして視線アルに向けると、バッチリと目が合う。


そして、

「あーもう、さっさとやりますよ!」

というアイナスの言葉に、妙な雰囲気にならずに済んだ、と正直助かる思いの若者であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、『七璧』を展開すればよいのじゃな。」

「ちゃちゃっとやっちゃいましょう!」


先程の勢いそのままにけしかけるアイナスだが、七璧は、長らく存在すら怪しまれていたものを老人が再現した絶技であり、見学を優勝賞品にして大規模な魔導大会が開ける程度の技である。

「やってみるから真似せい」とあっさり若者に告げる老人も無頓着極まりないが。


一方3人が準備をしている間、少し離れた3頭は、何やら話し込んでいた。


「ぐおー(がっちゃんは人形態にならないの?)」

「がうがう(それが駄目だったんすよねー。)」

「一応コツはある。簡単なものだけど。」

「ぐおー(どういうコツですか?)」

「出来るだけ具体的に想像する。性別だけでなく、体型や髪の色、長さとか。誰かを参考にしてもいい。」

「がうがう(アールスラーメさんは誰を参考にしたんすか?)」

「色々な国の人を見たりした。」


なお、アルはいわゆる王女なので、会う人族も王族が中心であり、容姿も相当に磨かれている人ばかりだが、アル自身に拘りは無い。


「ぐおー(人族はほとんど見たことがないです。)」

「がうがう(そうっすね。)」

「ぐおー・がうがう(見たら問答無用で切り掛かってくるか、全力で逃げ出す人ばっかりですしね~☆)」

と、笑いあう2頭だが、遭遇した人からすれば間違いなく死を覚悟する存在である。


その後アルが「二人とも人族を見る機会が増えれば、そのうちなれる。」と言ったところで、どうやら老人達の準備が出来たようだ。


「で、まあこんな感じじゃ。」

「師匠、ちょっとこの結界切ってみていいですか?」

「後にせい。」

「アイナスさん、先ずは練習しますので、ちょっとだけ待ってて下さい。」

「ぶー。」

「こんな感じでしょうか?」

「そうじゃな。大きさは好きにするがよい。」


どうやら、準備どころか粗方若者に伝え終わっていたようで、早速大きさを変えながら結界を試す若者と、嬉々として光る剣で切り掛かるアイナス。

「かった~い!」

と言いながら、ガッキンガッキンと遠慮なく襲い掛かっている。


なお、「ニックならこんなもんだよね」とあっさり流しているが、そもそも真似できるのがおかしいのも、いつもの事である。


そして、ニックさんこれめちゃくちゃ固いですね!と楽し気なアイナス。

どっこいしょと一休み中の老人。

これはこうしてみて…と張り方の研究に余念がない若者。


当初の目的が忘れがちになってしまうのも、いつもの事であった。



「ぐおー(あのお兄さん、もしかして凄い人ですか?)」

「がうがう(凄いというかヤバい人っす。)」

「ぐおー(絶対に敵に回したらダメな系?)」

「がうがう(もちろんっす。)」


…この2頭の感覚はどうやら正常なようである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ