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第30話 肉好きの若者が、3頭と島の状況を確認する話

訪ねてきた3頭のうち2頭は、それぞれハツキ・トウキと名乗った。

もう1頭は、めり込んでから呻いていたシンキである。


人形態になった2頭と若者、それからアイナスは、老人の家の1階、居間のテーブルを囲むようにして座っている。


ハツキは、アールスラーメよりも少し年下に見える女性、トウキは長髪が印象的な男性である。

なお、シンキは目つきが鋭くきつめな印象の男性だが、この時点では若者は知らない。


「それで、ご用件はどのようなことでしょうか。」


と、若者が、何となく一番話が通りやすそうなハツキに聞く。


するとハツキが、

「まあ、大したことじゃないのよ。それと…。」

というと、若者を見て、

「私たちに敬語も遠慮も不要よ。」

と軽く微笑みながら言った。


「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「理由も何も、貴方、アルの相手でしょ。畏まられると、それこそやりにくいわ。」


いずれ、こっちが畏まることになりそうだしね、とハツキ。


若者は、色々思うところがあったが、ここで取り乱したらかえってアルに迷惑がかかってしまうのでは、と考えた。


そして、

「じゃあ、慣れるまでちょっとぎこちなくなるかもしれないけど、なるべく普通に話すよ。」

と返した。


すると、顔を見合わせた2頭…2人が、明らかにホッとする表情を顔に浮かべた。


「どうかしました?」と若者がつい敬語交じりで聞くと、トウキが、

「あの、ニックさんがアルの竜紋の相手だということは、見てすぐに分かりました。それで…。」

と返す。

そこに続けてハツキが、

「初対面であいつが凄い偉そうに振舞ってたでしょ。だから、機嫌を損ねたらどうしようって、結構ドキドキしてたのよ。内心はね。」

と言った。


すると次の瞬間、ドアが「バン!」と開くと、

「脇腹はやめろと何度もいってるだろ!」

と怒鳴りながら、人形態のシンキが家に入ってきた。


すると次の瞬間、ハツキが「ドゴン!」とシンキの顔面を殴打すると、

「いい加減にしないと脇腹じゃ済まないわよ!」

と怒鳴りながら、人形態のシンキを更に数発殴って外に吹き飛ばした。



雰囲気を読んだトウキが、ちょっと様子を見てくるよ、と言って外に出る。


ハツキは何事もなかったかのように振り向くと、ごめんなさいね、次はないから、と若者に謝罪する。


若者は多少引いていたが、横で見ていたアイナスは、「あのくらいじゃ大した傷も付かないんですねーさすがー。」と呑気に分析していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


多少の騒ぎも収まり、アイナスが、

「大した用事じゃないって言ってましたけど、結局のところ目的は何だったんですか?」

と、ハツキとトウキに向かって聞く。


なおシンキは無言でテーブルを囲んでいる。


するとハツキが、「私たちは、小さい頃からアルと一緒によく遊んだり狩りに行ったりしていたのよ。」

と話し始めた。


合わせてトウキが、「アルは王女様ではあったけどね、身分的なものにはあまりこだわりは無くて、仲良く遊んだりしていたんだよ。」

と続ける。


「それでまあ、なんで急に来たかというと、ホント大したことじゃないのよ。」


若干のため息交じりのハツキの話を要約するとこうなる。


とある竜の城での会話。

ハ「アルの竜紋の相手って人間らしいわね。」

シ「アルより強い人間なんてマルスマーダ様くらいしか知らない。いくら強いとはいえマルスマーダ様がアルの、その、相手というか…伴侶というか…とにかく色々納得できない!主に見た目!ちょっと行って確かめてくる!」

ト「いや、ちゃんと話を聞いてからでも遅くない…って行っちゃったよ。」

ハ「しょうがないわ、殴って止めに行きましょう。止まっても殴るけど。」


「結局、シンはアルのことが好きだったのよね。勝てないけど。」

「まあ、勝ててはないかな。」

『いつか勝ってアルにプロポーズするんだー。まってろー。』

「そうそう、何の時だったかな…アルの誕生日のときに慣れない酒を飲んだ時だっけ?」

「それを聞いて一番冷静だったのが当のアルなのが笑うわよね。」


このあたりで、黙ってうつむいていたシンキの顔が赤くなりはじめる。

が、会話は続く。


「で、その相手が、島を出て戻ってきたら、いつの間にか他人の物になっていたと。」

「あんな爺さんに…とか何とか、まあ誤解なんだけど、ひとしきり騒いで、バタバタと島を出てこっちにやってきた、というわけです。」

「ほんと勘違いにも程があるわよね。」

「まあシンの気持ちも分からないではない…いや、分からないな。」

「分からないわね。」


そろそろシンキのHPがゼロになりそうだが、会話が終わる気配がない。


なので、若者は話題を変えてみようと、

「実は、マルス翁から島…竜の城が騒ぎになっているという話は聞いたんですが、実際のところはどういう感じなんでしょうか?」

と聞いてみた。


「すんごいわよ。」

「すごいね。」

「はあ…。」

「何というか、アルが可哀そうなくらい、周りが騒いでいるわ。」

「一番騒いでいるのは、エルメラさんかなあ?」

「エルメラさんというのは…?」

「アルの母親よ。」

「立場的には王妃だけど、普段は温厚で誰にでも優しいから、島の皆から慕われているのさ。」


そのアルの母親であるエルメラさんが、ついにアルが結婚!急がなきゃ!と、普段の姿からは想像できないくらいはしゃいでいるらしい。


「まあでも、いい方向に騒ぎになっていると思うよ。」

「そうね。」


その報告を聞いていた若者は、もしかしてきちんと挨拶に行かないといけないのでは、と思ったが、機先を制するかのようにハツキが、

「あ、でも島に来るのはもう少ししてからの方がいいわよ。」

と述べた。


「それは、何か問題が?」

「アルの竜紋の相手ってことで騒ぎになっているところに、直接本人が行ったら…。」

「歓迎、決闘、要請、決闘、祝福、決闘、色々吹っ掛けられるかもしれないね。」


しかもちょっと決闘要素が多い。

そんな種族だったのか?と若干疑問を感じる若者。


そこにハツキが、

「もう少ししたらアルが来ると思うから、待っているのが正解かしらね。」

と若者に言うと、続けて、

「それと実はちょっとお願いがあって…話だけでも聞いてもらえないかしら?」

と遠慮がちに言った。


若者は、出来る限り対応してあげたい程度には親しみを感じていたので、何だろうと思いつつ話の先を促した。

するとハツキが、こう言った。


「アルの…というかあなたに刻まれた竜紋を見せてもらえないかしら。」


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