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ORERA -俺等-  作者: 吉田 翔
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鈴木家①



 鈴木家の居間。

最初に起きて来るのはこの家の主婦・由美。

6時頃には、使い古したトレーナー姿でキッチンに立つ。

用意するのは、夫である一夫と美優紀・大地の朝食と3人分の弁当である。

朝は卵焼きとウィンナー。サラダも付けて・・・。


 「おはよう。」

部屋の奥からのっそりと一夫が出てくる。

中小企業の係長である一夫は、昨日もサービス残業で遅かった。

顔色もあまり良くないが、帰宅した時程ではない。

「お父さん、今日一日頑張れば明日は休みよ。あと一日、頑張って」

言いながら豆腐の味噌汁を差し出す。

「有難う・・」

ため息をつきながら、大事そうに味噌汁椀を持つと、ゆっくりと味わうように食べ始める。

(この人のため息をつく癖、何とかならないのかしら・・・。

辛気臭いから、万年係長って呼ばれているのよね)

袋にいれたお弁当を一夫の手元に置いて、溜まっている洗い物に取り掛かる。

「お母さん、お早う!やばい、寝過ごしちゃった!!」

長女の美優紀がいつも通りけたたましく2階から降りて来る。

その後に中学性の大地も、競うように階段を駆け下りて着席する。

美優紀の少々ヒステリックな声。

「今日、早めに行かないといけないの。お弁当だけ頂戴!」

重ねるように、大地の一言。

「母さん、昨日のおにぎり美味しかった。でも、足りないからもう一つ足して」

「美優紀、味噌汁くらい飲んでいきなさい。小さいおにぎりも作っておくから。

大地、もうおにぎり作っちゃったから、明日から追加するよ」

言われて、急いで席に着いた美優紀が味噌汁を食べている間に、ラップでおにぎりを握って、娘の好きなふりかけをかけてお弁当袋の中にしまって手渡す。

「有難う!」

言い捨てて、勢いよく家を出ていく美優紀。

「大地、あなたも行く時間でしょう?

間に合わなくなるわよ」

「今日の朝練、先生居ないから、ちょっと遅れても大丈夫。おにぎり・・・」

時計を横目で見ながら大地がご飯をかきこんで、ついでに余っていた美優紀の目玉焼きまで口に詰め込む。

「仕方ないわね」

急いで大きめのおにぎりを作ると、やはり特大のお弁当箱と一緒に渡す。

「●▼◇」

口いっぱいに詰め込んだまま、大地何事か呟くと走り去る。


 「まったくあいつ等は何時になったら静かになるんだ?」

一夫がいつもと同じ様に、嬉しそうに愚痴をいう。

席を立って玄関に向かう一夫に、使い古した鞄にお弁当を入れて渡す。

「それじゃ行ってくる。

明日はゆっくり休みたいから、今日も遅くなると思う・・」

「分かったわ。あまり胃に負担がかからないものを作っておくね」

うなずいて、朝から草臥れた様子の夫が家を出ていく。

由美はやっと一息ついて、時間確認の為につけられていたワイドショーに目を移す。

「あっ、こんな時間!」

小さくつぶやくと慌てて自分も仕事に行くための身支度を始めた。


 出社前に2階へ急ぐと、手前の部屋を覗く。

そこには今年小学5年になる末っ子の大洋が、ぐったりとした様子で寝ていた。

ドアを開けた音に目が覚めたのか、熱に潤んだ瞳がこちらを見る。

「大洋、ここにお薬置いておくから、軽くご飯食べてから飲んでね。

あなたの好きなパンとクッキー、スポーツ飲料を置いておくわ。

お母さん、今日は仕事で休めないから、頑張ってね」

そう声を掛けると、ベッドの中から小さな頭がうなずいたのを確認する。

インフルエンザを発症してもう3日目だ。

由美も昨日は看護の為に休みを貰ったから、今日は出社しなければならない。

よく熱を出す小さな息子の事を考えると可哀そうだが、皆の明日の為には頑張らなきゃならない。


出がけにもう一度、仏壇に向かってお願いする。

(大洋のインフルエンザが、一日も早く良くなりますようによろしくお願いします)

朝一番に水を取り換えた花ぴんと粗末な供え物を見ながら由美は思った。

(もう一度線香を供えるのは止めましょう。子供一人留守番の時に火事が心配・・。

・・・今日は奮発してご先祖様に、良いお供えを買ってこよう!)

時計を確認し由美は身支度を整えると、ローンの残る我が家の扉をパタンと閉めた・・・。



初めて投稿します。

色々わからない事がありますので、教えていただけると嬉しいです。


毎週土日のどちらかに投稿します。

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