3.街に降りよう
続きましたね。作者は生きてます。
今回の話はわりと重要になってくる気がしますね~。
それではご覧下さい。
どうも。朝には弱い天才精霊使いのエルシィ・ハピネスです。
「……ごしゅ…まぁ、…お…て…ださい…」
「んー…」
スズネちゃんが何か言ってる気がする…でも眠い…
「…スズネちゃーん…もうちょっと寝かせて…」
「…もう!ご主人様!!…明日は朝から街に降りようって言ってたじゃないですかー!!」
はっ!!!!
「そうだった!!!!」
「ひゃぇ?!お、おはようございます!!ご主人様!!」
言われて思い出した…スズネちゃんに少しでも楽しい思い出を残して欲しいと言って、街に降りようと言ったのは私だった!!!
「ごご、ごめん!!スズネちゃん!!!今着替えるからね!!」
そう言って高速で着替える私。スズネちゃんとの楽しい時間を一秒でも増やす為には着替えに時間を掛けている暇はない…!
「よし!!!服装OK!!金貨OK!!!行こうか!!スズネちゃん!!」
「は、はい!!行きましょう!!ご主人様!!」
スズネちゃんの手を取って家から出る。…あぁもう本当街から遠いなココ!!神様もうちょっと良い物件無かったんですか!!!
「よし、ちょこっとだけ飛ぶよー!スズネちゃん!!」
「え?!こ、心の準備が」
困った時の精霊ちゃん!…待って、そんな呆れたような顔しないで…
「風の精霊!!お願い!!」
はいはいと言わんばかりの表情で、精霊ちゃんが風を巻き起こす。落ちない様にしっかりとスズネちゃんを抱いて、風を纏って街までひとっ飛びする。風が気持ちいい~!!
「ひゃああぁあ~?!?!」
「ひゃっほー!!!」
―――「よっ…と!」
街に入る前の門ぐらいの所に降りた。完璧なまでに衝撃を抑えた着地。100点満点!!
「あぁあ~…」
スズネちゃんが目をぐるぐる回して混乱している。…そういえば前に親友のあの子を抱いて飛んだ時も目を回してその後怒られたなぁ…
「ご、ごめんね…大丈夫?」
スズネちゃんの脳が回復してきた頃にようやく心配になってきて、安否の声を掛ける。
「だ、大丈夫です…でも今度からは、心の準備を…」
「心の準備…分かった!本当にごめんね…?」
とりあえず大丈夫だったみたいで安心した。…よく考えたらすっごい申し訳ない事したな私…
「大丈夫ですよ!!もう治りましたし!…ま、街へ行きましょう?ご主人様!」
スズネちゃんが体を揺らしながらワクワクした表情で私を急かす。…楽しみなんだなぁ…可愛過ぎんか?この子…
「…ふふっ」
思えば私は随分この子に助けられていたらしい。……実を言うと私は奴隷市場へ行く前辺りから、しばらく家に引き込もっていたのだ。…一人で前世の家族の事を考えながら…
「じゃあまずはあそこに行ってみない?美味しい物とかもいっぱいあるよ!!」
「わ、分かりました!!早速行きましょう!!ご主人様!!」
…もっとこの子の期待に答えなくちゃね!
―――スズネちゃんと、横に並んで道を歩く。
いつも通りの、がやがやとした活気のある道。もう見慣れた筈なのに、いつ見ても飽きない。…やっぱり皆が笑顔なのって、いいな!!
「…あら!エルシィちゃん久しぶりね~!! 横に居る子は親友かしら?…最後に降りてきたのは街のお祭りの時以来だったから皆心配してたのよ?…特に私の夫がね!」
そう話し掛けてくれたのは、いつも仲良くさせてもらってる内のよく喋る店の店主のシエルさんだ!!相変わらず綺麗だなぁ…私の事を思っててくれてたとか超嬉しい!!
「久しぶりです、シエルさん!! そうです、この子は私の新しい家族、スズネ・ハピネスちゃんです!!!仲良くして下さいね!!…ラートさんにはきつ~く言っとかないとダメですよ~?…あの人、未だにギルドでナンパとかしちゃってるみたいですから…」
「……」
ピシッと。シエルさんの手に持たれている時計にヒビが入る。…ら、ラートさんの自業自得だから…多少はね?
「…あら~、いい事聞いちゃった…うふふ♪」
あっこれラートさんやられるな。私は心の中でラートさんの無事を祈った。
「えーっと…スズネちゃんだっけ?新しい家族って事は…もしかして…」
あっ流石に気付かれたか。私は小さい声で、「後で話します」と伝えて、とりあえず仲良くなってもらう事にした。
「私の名前はシエル!…馬鹿な夫を持つごく普通の一般人よ。…スズネちゃんみたいな、可愛い子にうちの夫は声掛けやすいから…何かされたらすぐに私に言ってね?私がやるから!」
…シエルさんは自分の事を一般人と言い張ってるけど、この夫婦さん冒険者の中で超強かった二人なんだよな…元々ラートさんがプロポーズした筈なのに。
「わ、私は、スズネ。スズネ・ハピネスと言います!…シ、シエルさんはとてもお綺麗でビックリしました…こんなにもお綺麗なのに何故夫さんはナンパするんでしょうか…?」
…あーそれね。…ラートさんも本気でやってる訳じゃ無いんだよね…
「…綺麗だなんて、嬉しい事言ってくれるじゃない!!いい子ね~!!…夫はね、本当は私に嫉妬されて欲しいだけなのよ…それでもやるけど。」
…そう。シエルさんとラートさんは実は驚く程仲が良い。毎晩…そ、その、愛し合ってるぐらいには仲が良いらしい…冒険者時代から互いに両想いだったとか。…良いよねー。そういうの。
「そ、そうだったんですか…!な、仲が宜しいんですね…!」
スズネちゃんが衝撃の事実を知ったかの様な顔でそう言う。…可愛いよぉ…まさに天使…
「ありがとうね!!…そんなに畏まらなくても良いのよ?私達もう友達じゃない!」
「…!ありがとうございます!!シエルさん!!」
…やっぱりこの世界の人達は皆、優しいなぁ。…私の前世もこんな人達が、友達だったら…
「…!お~い!!エルシィちゃん!!随分久しぶりだな!!…久しぶりに俺に会いたくなったか?…そっちの子も!!可愛いねぇ!…エルシィちゃんの友達かな?今度お茶しない?」
キメ顔でそう言うのはさっきまで地獄の様な話をされていたラートさん。流石!!うざいです!!
「お久しぶりです!ラートさん!…この子は私の家族のスズネ・ハピネスちゃんです!!…スズネちゃんは渡しませんよ?」
「よ、よろしくお願いします…!」
「おーおー、可愛いねぇ!!いかにも俺好みって感じだ!…あれ?なんか殺気が…あっ。」
……思わず私達までも身震いしてしまう様な、強い殺気を放つのは…シエルさんでした…
「…うふふ♪彼方…お帰りなさい。」
「たた、ただいま…シエル…」
…これはまずいですね。私達はここら辺で…
「そ、それじゃあ私達はもっと他の所を見てきますね!!それでは!!」
「さ、さようなら!!」
「行ってらっしゃ~い!!また来てね~!!…さて、彼方?ギルドで何してました?」
「…い、いやぁ…その…」
あっ…御愁傷様です。私は会話内容に耳を傾けながら改めて心の中でラートさんの無事を祈った。
―――それから私達は、お店、有名な観光場所、学園など…様々な所を見に行った。その間もスズネちゃんはずっと目を輝かせて楽しそうにしてくれていた。…可愛い…本日何回目かも忘れたけど可愛い…と、思っていた時にスズネちゃんがふと、こんな疑問を投げ掛けてきた。
「あの…突然なんですが…」
「ん?どうしたの?スズネちゃん」
「…ご、ご主人様は何故、わ、私に奴隷契約を結ばせさせなかったんですか?」
…なんだ、そんな事か!
「…スズネちゃんは、奴隷契約をしたらどうなるのかは知っているよね?」
「は、はい!確か…契約した奴隷に言う事を何でも聞かせるのと、契約者自身が死んだ時に奴隷も死ぬと言う…ある意味呪いみたいな物ですよね…」
…そう、私が奴隷契約をしなかったのは、このえぐい内容のお陰だ。まぁ元々するつもりは無かったけど。
「…そう、そのやばい内容のせいだよ…それに、最後の契約者自身が死んだ時に奴隷も死ぬって言うのが特に…」
契約者が死んだら奴隷も死ぬって可哀想過ぎないか?奴隷悪くないじゃん…それに…
「…私の職業は、冒険者だからさ。いつ死ぬか分からないじゃない?…そんなのに、スズネちゃんを巻き込みたくないなーって。」
一応お金は余る程あるが、多いに越した事は無いだろう。それに冒険者やってて楽しいし。
「…私の為だったんですか…ご主人様は、どこまでも優しいですね…」
…まぁ、私も前世が…ね…
「…そんな事無いよ!…もし、仮に、万が一私が死んでも、ボックスにお金が余る程あるから、そのお金で生き延びてね?」
まぁ死ぬ予定なんてないがな!!もう既に一回死んだ身だし!!!
「…ご主人様が死ぬ時は、私も死にます。」
それは、心の底から言ってる様に思えた。
「…や、やめてね?!私はスズネちゃんには、たーっくさん幸せになって欲しいんだから!!」
「…わ、分かりました…そこまで言うなら…」
いやー良かった…考えを改めてくれて…
「良かった~…まぁまず死ぬなんて事、無いんだけどね!!」
―――「…私はご主人様が死んでしまったら、生きて行ける自信がありません。」
「…ん?何か言った?スズネちゃん」
「…いいえ、何も…帰りましょうか!!」
「…そうしよっか!!」
私達は、そんな会話をしながら最後に見に行った世界樹の根っこの部分で、笑い合った。
もっと百合百合させたいのに...!
リアルが忙しい..!!
今回も見て下さりありがとうございました。
それでは次回もご覧下さい。




