表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/112

7話

私は家に帰ると、黒炎くんとの会話を思い出していた。


最初は、黒炎くんがギャルゲーオタクという真実を知って混乱や驚きを隠せなかったが、今冷静になってみるといくつも疑問点が浮かび上がってきた。


まず、黒炎くんがギャルゲーオタクになった理由。次に、私と同じ名前の“アカリ”ちゃんという人物と何かしらの関係にあるということ。


そして、ショップの店長とあんなに親しげに話していたことだ。

あの様子からすると、中学生の頃の黒炎くんを知っているみたいだった。ということは、黒炎くんは既に中学生の頃には地元に戻って、いた? だとすると、どうして連絡をくれなかったのか。


私の家は知っているはずなのに……。だけど、会いに来ない理由は明白だ。


「アカリちゃんって子と付き合ってるんだろうなー」


あんなに嬉しそうにアカリちゃんのことを話していたのだから、ほぼ間違いないだろう。と、思うけど、これも本人に聞いてみないと実際のところわからない。


でも、昔の俺はいないって、どういうこと?

やっぱり可愛くて素直だった黒炎くんがいないってこと?

でも、そんな簡単な理由ではないことは、あの目を見たらわかる。


知られたくない過去の1つや2つ、少なからず誰にでもあるだろう。

だけど、黒炎くんのは他の人とは違う気がした。


“これ以上、踏み込んでくるな” 


あの時は言われなかったが、黒炎くんの心がそう叫んでいる気がした。


「……っ」


いつの間にか、私の頬を伝う一粒のしずく。


あぁ。私……泣いてるんだ。


これは、“ただの幼馴染”と言われたことに悲しくて涙しているのか。

それとも、黒炎くんに、“アカリ”ちゃんという女の影が見え隠れしているからなのか、どっちなのだろう。


そう思うと、涙のしずくは止まらない。


その日、私は意識を手放すまで泣き続けた。


* * *


翌日、私は眠たい目を擦りながら学校へと向かった。


(ここで黒炎くんと再会したんだよね……)


再会したときは、運命だって思った。


“初恋は叶わない”って、どこかで聞いたことがある。

今なら、その理由がなんとなくわかる気がする。


昨日は、綺麗に見えていた桜の木も、なんだか今日は色褪せて見えた。

だけど、満足するまで泣いたせいか、今は少しだけ心が落ち着いている。


(こんなにネガティブなことばかり考えちゃダメだ、私!)


気持ちを切り替えなくてはいけないと私はパシッ! と自分の頬を叩いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ