7話
私は家に帰ると、黒炎くんとの会話を思い出していた。
最初は、黒炎くんがギャルゲーオタクという真実を知って混乱や驚きを隠せなかったが、今冷静になってみるといくつも疑問点が浮かび上がってきた。
まず、黒炎くんがギャルゲーオタクになった理由。次に、私と同じ名前の“アカリ”ちゃんという人物と何かしらの関係にあるということ。
そして、ショップの店長とあんなに親しげに話していたことだ。
あの様子からすると、中学生の頃の黒炎くんを知っているみたいだった。ということは、黒炎くんは既に中学生の頃には地元に戻って、いた? だとすると、どうして連絡をくれなかったのか。
私の家は知っているはずなのに……。だけど、会いに来ない理由は明白だ。
「アカリちゃんって子と付き合ってるんだろうなー」
あんなに嬉しそうにアカリちゃんのことを話していたのだから、ほぼ間違いないだろう。と、思うけど、これも本人に聞いてみないと実際のところわからない。
でも、昔の俺はいないって、どういうこと?
やっぱり可愛くて素直だった黒炎くんがいないってこと?
でも、そんな簡単な理由ではないことは、あの目を見たらわかる。
知られたくない過去の1つや2つ、少なからず誰にでもあるだろう。
だけど、黒炎くんのは他の人とは違う気がした。
“これ以上、踏み込んでくるな”
あの時は言われなかったが、黒炎くんの心がそう叫んでいる気がした。
「……っ」
いつの間にか、私の頬を伝う一粒のしずく。
あぁ。私……泣いてるんだ。
これは、“ただの幼馴染”と言われたことに悲しくて涙しているのか。
それとも、黒炎くんに、“アカリ”ちゃんという女の影が見え隠れしているからなのか、どっちなのだろう。
そう思うと、涙のしずくは止まらない。
その日、私は意識を手放すまで泣き続けた。
* * *
翌日、私は眠たい目を擦りながら学校へと向かった。
(ここで黒炎くんと再会したんだよね……)
再会したときは、運命だって思った。
“初恋は叶わない”って、どこかで聞いたことがある。
今なら、その理由がなんとなくわかる気がする。
昨日は、綺麗に見えていた桜の木も、なんだか今日は色褪せて見えた。
だけど、満足するまで泣いたせいか、今は少しだけ心が落ち着いている。
(こんなにネガティブなことばかり考えちゃダメだ、私!)
気持ちを切り替えなくてはいけないと私はパシッ! と自分の頬を叩いた。