55話
「そういや、柊といえば午後からしか学校来ないよなー」
「そう、それ! 黒炎君にあんまり会えなくて残念」
「いるだけで目の保養なのに~」
一人の男子が黒炎くんの話をすると、途端にその話題で持ち切りになってしまった。そう、二学期が始まってからというもの黒炎くんはあまり学校に来ていないのだ。
理由は……わからない。けれどあの日、抜け出したら良くないと言っていたからそれと何かしらの関係があるのかもしれない。
夏休みが終わったら学校でまた話そうって言ってたから楽しみにしてたんだけどな。それに今回が高校初めての文化祭なわけで……メイドと執事喫茶とか、いかにも黒炎くんが好きそうなイベントなのに。
……あれ? まさか、このまま黒炎くんが文化祭不参加なんてことないよね? 仮にもしそうだとしたら私の告白がそもそも成り立たない!
「ねぇ、知ってる? 後夜祭のキャンプファイヤーに火がつく瞬間に好きな人に告白すると恋が成就するってウワサ」
「ロマンチックだけど、なんかありきたりー」
「でも、それで何人ものカップルがその日に誕生したんだってよ!」
「だけど場所指定ないの? なんか曖昧なウワサじゃない?」
「だから、あくまでもウワサなんだって」
「……」
文化祭の準備をしながら、聞き耳を立てつつ女子たちの話を聞いていた。
……そんな噂があるんだ。どの学校にもジンクスやら伝説やらがあるけど、この高校にもそんなのがあるなんて知らなかった。あくまでも噂。それでもすがらずにはいられない。
告白は決めてた通り、後夜祭にしようと改めて決意した。って、黒炎くんが来てくれないと意味がないんだけどね。
* * *
「だから、困りますってば」
「空いている時間だけでいいんです」
準備をしつつ、あっという間に文化祭当日の朝。始まるまではもう少しだけ時間がある。
あれから黒炎くんを見かけたのは、やはり午後の授業だけ。お昼ご飯も一緒に出来なかったせいか、あんまり話す機会はなかった。
そして今現在、私は会長さんに猛烈なお誘いを受けていた。冗談だと思っていたけど、これは黒炎くんと付き合うまでアプローチ続くみたいで。会長さんとは普通の関係でいたいと思うのは私だけ、なんだよね。
私のクラスに会長さんが来てるだけでも目立つのに、そんなに距離が近いと私までクラスメイトの視線を痛いほど感じるんですけど!? しかも、相手は仮にもこの学校の生徒会長さんだから、どう対応していいか困る。
今日は黒炎くんとはまだ会っていない。うぅ、黒炎くん助けて……と、心の中で助けを呼んでいた。




