5話
「あった! 今日発売の新作! 残り1個だったとは危なかった」
黒炎くんが入っていったのは、ゲームショップ。
そこで手にしていたのは、まさかのアレで。
「すみません、これください」
「はい、まいどあり。高校の制服も似合うじゃないか、黒炎君。入学おめでとう。それにしても、相変わらず“コレ”なんだね」
「店長、ありがとうございます。
そりゃあ……やっぱり、ゲームと言ったらギャルゲーですよ!」
そう……黒炎くんが持っていたモノ。
―――それはギャルゲーソフトでした。
「あ―――!!!!」
私は思わず大声で叫んだ。
「「!?」」
黒炎くんもショップの店長も驚いて、こっちを見ている。
「あ、朱里? どうして、ここに?」
「いや……その、私もたまたまゲーム買いに来たっていうか、その……。
そんなことより、今ギャルゲーって聞こえたんだけど!?」
「ああ、ギャルゲーだ! なんなら、朱里もやるか?
だけど、俺が全クリしてからじゃないと貸してやれないけどな。
って言っても、こんなの俺にかかれば1日で終わるんだけどな!」
「……」
やばい。黒炎くんの言ってることが半分以上わからない。誰か今すぐ通訳して。
「おや、もしかして、この子がもしかして噂のアカリちゃんかい?」
「へ? 朱里って……なんで私の名前、知ってるんですか??」
「店長、アカリはカタカナでアカリ。こっちは漢字で朱里で全くの別人です。それにアカリはお尻まである黒髪なのでもっと長いですよ。
ついでに紹介すると、霧姫朱里、俺の幼馴染です」
「あー……いやぁ~、すまない。そっか、別人なんだね。朱里ちゃん、改めてよろしくね」
「はぁ。よ、よろしくお願いします」
状況がつかめないまま、私は店長に挨拶を交わした。
* * *
その後、店を出た私たちは公園で話すことにした。
(こうしてると、なんだか昔に戻ったみたい)
隣を見ると、イケメンな黒炎くんの横顔。だけど、どこか幼げで。
身長や声が変わったって、性格まで変わることはないんだろう。
そう、思っていたんだけど、現実は違った。
「ねぇ、黒炎くん。ギャルゲー、好きなの?」
「あぁ、好きだぜ! 言ってなかったか? って、無理もないか。
俺とお前が一緒だったのって小学生の頃だもんな」
「うっ」
今、槍がグサッと胸に刺さった気分。
好きな人から、まさかそれを言われるとは、なかなかキツい。
「俺、大のギャルゲーオタクなんだ!」
なかなかキツいカミングアウトを黒炎くんは恥ずかしがることなく言い切る。心なしか、超がつくほど目が輝いているのですが、気のせいだろうか。いや、きっと気のせいではない。