21話
(そうだ、今日だった)
メールの内容を見て、ふと昔のことを思い出していた。そういえば小さい頃は親が留守のときはよく黒炎くんの家に泊まりに行ってたっけな。凄く懐かしい。
あれ? あのとき、黒炎くんの親に会ったかな? よく覚えていない。黒炎くんが引っ越してからは別の友達の家に泊めてもらっていた。
「今日、親の結婚記念日で…帰っても一人なんだ」
流石に高校生になった今気軽に泊めてほしいなんて言えない。それに黒炎くんはアカリちゃんと一緒に暮らしてるわけだし。
いつもは覚えているから予め頼んでおくんだけど今日はいきなりだからなぁ、難しいだろうな。
…案の定、友達からはいきなりは難しいと断られてしまった。もう高校生なんだし、留守番くらい一人で出来るもん! と思った矢先、家の鍵がないことに気付く。
「え、嘘…!」
朝、鍵を閉めていったからあるはずなのに鞄の中を探してもどこにも見当たらなかった。傘といい、鍵といい、今日はよく物を無くす日だなぁ。
お弁当箱をとる時には鍵はあったのは確認したから、おそらくそのあとだろう。うーん、思い出せない。けど、学校で落とした気がする。明日は早めに学校に行って確認してみるか。
「朱里、さっきから変な汗かいてどうした?」
「いやぁー…実は鍵どこかに落としちゃったみたいで、家に帰れないんだよね。まぁ、一日くらい野宿しても大丈夫かなーって」
「この土砂降りでそれは流石に…」
うん、普通にそういう反応になるよね。我ながらバカな発言をしたと思うよ、今のは。
「朱里が良ければうちに泊まりに来るか?」
「え!? それは流石にまずいでしょ!?」
色々な意味でそれは本当にまずい。それはつまりアカリちゃんと黒炎くんのラブラブな姿を目の前で見せつけられるってことでしょ? それはメンタルが強くなった私でも正常でいられる自信がない。
「もしかしてアカリのこと心配してるのか? あの時はあんなこと言ったけど、今は朱里にアカリをちゃんと紹介したいなって思ってるんだ」
「……」
あの時って、ただの幼馴染と言ったときだろうか? そんな前のことまだ気にしてくれていたなんて。真っ直ぐこっちを見つめる黒炎くんの真剣な表情に私は目を逸らせずにいた。
「わかった。黒炎くんが良いって言うんだったら泊まるよ」
「ああ、大丈夫だ。むしろ、今まで家を隠してるようで悪かったな…」
「いいんだよ、気にしてないから」
嘘だ。本当は再会したときからずっと気になってた。アカリちゃんという存在も、どうしてギャルゲー好きになってしまったのか、黒炎くんがどこに住んでいるかも全て。
今日、その全てがやっと知れるんだ。
あの日、深い闇の中にいるような目をしていた黒炎くん。私は黒炎くんの全てを知って、それでも尚、好きでいられるだろうか。
不安と緊張。色んな感情が入り交じる中、私たちは黒炎くんの家に足を進めた。




