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神樹の巫女  作者: 昼行灯
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08:誤算

 その後、迷宮内なので日は当たらないのだけど、日が暮れる時間まで最下層のボス部屋を周回して帰路に着く。


 周回中にはレアボスも勿論、激レアボスのアークデーモンとかもポップしたので、魔玉もたくさん取れたしドロップ品も色々手に入れた。


 そういえば、この前まで道化師(クラウン)とかは、そのトリッキーな動きで少しだけ手こずっていたのだけれど、クロの魔眼や、道化師が姿を消すという行動を起こす前に倒してしまっていることで、ただの珍しい装備を落とすカモと化していた。

 私とクロだけでなくテレスさんも連携に加わっていた事を考えると、テレスさんもギルドの仕事をこなしながらも修行を怠ってないのだと実感させられた。


 ま、結局、戦闘はクロとテレスさんしかしてないんだけどね。


 暇な私のしてたことといえば、テレスさんに気づかれないように神眼を発動すること。

 魔眼もそうだけど、特に神眼は発動すると瞳が金色に輝いてしまう。これではとても目立ち人前では発動することが出来ない。私とクロだけの時や本気で発動した時はしょうがないとして、少しだけ発動する時は光らない様に出来ないかと試行錯誤してみた。結果は(かんば)しくないのだけど、髪の色素が抜けたことで白髪というか銀髪っぽくなっているので、少しくらいなら金色に光っても目立たなくなっているのがせめてもの救いといったところか。

 会う人全てに髪のことを聞かれるのが面倒だったので、早めに元の黒に戻そうかと思っていたのだけれど、神眼の扱いに慣れるまではもう少しこのままでもいいかと思い始めている。


 後はそう、神眼を発動しても魔力が枯渇しなくなった。

 無茶な使い方をしたおかげ、というのもなんだけど。神眼発動時の消費魔力が減って、私自身の魔力量が大幅にアップしたとこがその要因。

 クロ(いわ)く、何度も死の直前まで行き復活を繰り返した事で、スーパーななんかになったとか言っていたけど。あながち間違ってはいないだろう。

 クロも相当無茶をしたことでなのか、私と同じく大幅にパワーアップしている。本人は先日の戦いの後、我だけなんの報酬ももらっていないのは不公平だと駄々をこねまくっていたんだけどね。

 縮地中の特殊空間にいる時に魔眼を発動する事で、普通の人からは紅くなっている目を認識出来ない様にするという工夫も発明したみたいだ。けど、それ、同じ空間にいるテレスさんにはバッチリ見えてると思うんだけどどうなのだろう。ワザワザ聞いてこないのはテレスさんの気遣いなのか、こういう所は流石大人の女性なんだなと思ってしまう。


 脱出用転移魔法陣に入り迷宮を出る。


 魔法の明かりが灯り始めた道をテレスさんと歩く。


 …………

 ……


 すれ違う人達が、私のことを見ながら通り過ぎ、そのまま立ち止まり振り返って見ているのがわかる。

 やっぱり、この髪の色は目立つ。魔王のローブを灰色にしている事もあり、魔法のランプの明かりを銀髪が必要以上に反射して目立ってしまっているのだ。背中に垂らしているフードの中からクロを取り出して胸元にしまい、そのフードを被り頭髪と顔を隠す。

 クロが胸元のローブの中で良い位置を模索しながらモゾモゾと動きまわり、結局頭と前足だけを胸元から出して、前足の爪でしっかり位置を固定して下半身をローブの中でブラブラと揺らして遊びだす。


 …………

 ……


 「リンちゃんも大変ね」

 と、テレスさん。この大変は振り返る人達のことを指しているのではない。

 「まあ、そうですね」

 と、答える。


 私達の移動と共に、移動する気配がチラホラと見受けられる。


 「けどあれですよ、移動を制限されてないだけマシかなあって思ってます。」

 「そうね、でも窮屈になったらリンちゃんいなくなってしまうのでしょう?」

 テレスさんが、こちらを見ながら心配そうに言ってくる。

 「さあ、どうでしょう。自由にさせてもらってることには感謝してますよ?」

 「そう、、、冒険者もいるのね、ウィリアムかしら」

 私の護衛には王家の暗部の他にも、この様な仕事を専門に請負う冒険者の姿も混じっている。おそらくテレスさんの見知った顔か気配があったのだろう、それを冒険者ギルドが依頼元の仕事と判断し、依頼主をウィリアムさんの依頼と断定したのだろう。


 「これだけぞろぞろと引き連れて歩いていたら、無闇にちょっかいかけてくる人もいなくて逆に楽ですよ」

 「そうなの?」

 「そんなもんです」


 さっきまでみたいに、迷宮の最下層などには付いて来ない、というか付いて来れないので、別段邪魔というわけでもない。それに本当に単独行動したい場合は転移魔法で移動してしまえばついてくることなど不可能なのだから。付いてきて欲しくない時は自分の部屋から直接転移する事で、一日中宿に引き篭もっていると思わせて実は自由行動しているというのも何度かやっている。

 向こうにしてみても、私の護衛が主というよりも、私に無闇に人を近づけさせないという目的もあるのだろうと思っている。実際これだけの護衛がいたら秘密裏に私に接触してくるのは難しいだろう。


 私の泊まっているマルアさんの宿に到着する。


 「お疲れ様でした」

 「ええ、お疲れ様」

 と言いつつ宿の中についてこようとするテレスさん。


 「えーと、お茶でも飲んでいきますか?」

 「あら、有り難う。いただくわ」

 「はい。でも私今夜は王様に呼び出しくらっているんで、すぐ出かけちゃいますよ」

 「そうなの?」

 「はい」


 「じゃあ、リンちゃんも今夜お城で開かれる舞踏会(ぶとうかい)に参加するの?」

 「へ?」


 ナニソレ?


 「私もウィリアムに護衛として参加してくれというのを断っていたのだけれど、それなら私も参加しようかしら」

 「え? いや、何ですかそれ?」


 晩餐会じゃないの?


 「リン、我も参加するのだ!」

 「いやクロ君、そっちの武闘会(ぶとうかい)じゃないから!」


 一体何がどうなっているの?


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