05:狂気
目が覚める。が、眼を開けずに状況を確認する。
身体が動かない。拘束されている。指は、動く。足も感覚はある。
眼を開き状況を確認する。
両手を頭上で拘束され。両足は地面に別々に拘束されている。
服が脱がされている。何も身につけていない。
「よう、起きたか?」
私のことを見張っていたであろう男が声を掛けてくる。
鑑定するまでもない。その特徴的な耳が通常の半分も無い、そして妙に人間臭いその立ち居振る舞い。男のハーフエルフだ。ハーフエルフにはハーフな為か明確に性別が存在する。
私のことを不躾にジロジロと見てくる。気持ち悪い。
「ヘッ! 本当に何にもないんだな。アーニアとは大違いだぜ、へへ」
身体に触ってくる。気持ち悪い!!!
無詠唱でウィンドカッターの魔法を発動する!
しかし、発動しようとした途端、魔力が両手と両足の拘束具から吸収される。
「へへ、魔法を発動したな。無駄だぜ、ヘヘヘッ」
男が執拗に身体を弄ってくる。
気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い!
永遠に続くかと思った悪夢のような時間、それが突然破られる。
扉が開き。アーニアが入ってきたのだ。
その瞳はどんよりと淀んでいて、焦点が合っていない。
その後ろから、次々とハーフエルフの男達が入ってくる。その男達の顔に違和感を覚え、、ある事に気付く。
似ている。
その顔立ちが、アーニアに似ている。
淀んだ瞳のアーニアが、顔を近づけて私の耳元で囁く。
「フフフ、カーサちゃん。紹介するわね、私の息子達、フフフ、素敵でしょう?」
その言葉に絶句していると、アーニアと男達が私の顔を見ながら、とんでもないことを始める。
「フフフ、この子達はパパでもあるのよ。フフフ」
そう言うアーニアに群がる男のハーフエルフ達。
狂っている!
「へへッ! 顔を背けるなよカーサちゃんよ、しっかり見るんだ」
そむけた顔を掴まれ、無理やり眼を開けさせられる。
狂っている! 狂っている!
蕩けた顔のアーニアが、私に近付き囁く。
「フフフ、けどね、もう百年以上こんな事をしてると、飽きてしまうの、ねえ、今度は貴女が私の息子達の相手をしてくれないかしら?」
吐き気がする。気持ち悪い。
「私もね、ハイ・エルフだったの。けどね、人間達に無理やり女にさせられたの、自分で選んでないのに、強制的に女性の身体に変化させられたのよ?」
絶句する。そのような方法がある事を初めて聞く、本当なのか!?
「こんな風にね、男と女のまぐわいを一日中見せつけられるの、それにね、」
何かを無理やり飲まされる。
「フフフ、特別なオクスリよ」
フフフ、ヘヘヘ、フフフ、へへへ、
ハッハッハッ、ヒィヒィヒィ、
獣の様な嬌声が部屋に響く。
頭がぼうっとしてくる。
バンッ!
という扉の音に、朦朧としていた意識が、少しだけ戻る。
「出て行きなさい」
アテンの静かな声に、皆、静まり返り、クモの子を散らす様に部屋を出て行く。
「アーニア、あなたは残りなさい」
その言葉に黙って従うアーニア。
静まり返る部屋にアテンの声が響く。
「巫女様、ご無礼をお許し下さい。二度とこのようなことがない様にいたします」
何を言っているのか。身体に力が入らず、言葉を発することができないため、視線で、ならばこの拘束を解けと伝える。
アテンの顔が笑みの形のまま、まるでその表情で凍りついたかのような顔で言ってくる。
「何を仰います。巫女様。貴方様は神樹になっていただく大事な御身体」
アテンの笑みだけが深くなる。
「やっと、手に入れた。貴重な神樹の苗木」
アテンがアーニアの頭を掴む。
「どうぞ、我等がア・族の血をお吸い下さい」
ミチッ、ブチッと、アーニアの首が千切られる。そして首から勢いよく溢れ出す血が私を赤く染める。
「ア・族の純血種です。存分にご堪能ください。そして、これはア・族の神樹です」
アテンが手に持った、神樹から作ったのであろう杭を私の手と足に次々と突き刺す。
「これで、完成します。これで、、アァ、アテン様」
アテンがうわ言の様に自分の名前を呟いている。
意識が朦朧とする。
意識が、、
助けて、、、、リ、、ン、、、