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神樹の巫女  作者: 昼行灯
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03:カーサ

 ローラン王都、魔道具屋。

 棚に出してある商品を、魔法の金庫に収納していく。


 「もう! お金を儲けただけなのに、なんでわざわざ、その説明をしに戻らなくちゃいけないのよ」


 プンプンと怒っているのは、この魔道具屋の店主カーサである。

 魔道具屋はエルフ族が人間族と、ある程度の共存をはかるために人間族の街に出している、エルフ族の作った魔道具を販売する店である。


 過去にエルフ族の魔道具欲しさにエルフ狩りが行われたことがあり、そのような蛮行が二度と行われないようにと、人間族の街で魔道具を販売する事によって需要と供給を満たした上で、今後そのような蛮行を行った場合は魔道具屋の一斉撤退を行うとし、魔道具屋の存在する人間族の国同士の牽制を謀りつつ、エルフと魔道具の有用性の浸透を図っているのだ。


 魔道具を乱暴に金庫にしまうカーサ。その目には、舞っている埃のせいなのか涙が浮かんでいる。

 リン達と行動を共にするようになって、楽しい日々が続いていたのに、いきなり帰って来いなんて!

 嫌だと返信すると、人間界での行動を禁止するとか言ってきた。


 迷宮産のマジックアイテムを送り過ぎたのかもしれない。

 リン達と迷宮に潜ると一日で一年分くらいのマジックアイテムが手に入る。しかも高レベル迷宮の最下層でしか手に入らない最高級品のマジックアイテムばかり。

 私もスキルのレベルが上がるし、新しいスキルもたくさん手に入れた。良いことしかないのに、何がいけないのよ!


 「もう!」


 ハイ・エルフであるカーサは、ローランに来るまでは、カ・族の村で静かな時を過ごしてきた。

 見聞を広めるためにとローランに来てからは、人間族の慌ただしい生活に翻弄される日々が続き、ただただ目まぐるしいだけの日々が続いていた。


 そんな時に初めて友達ができた。

 それがリンだ。慌ただしく、生き急いでいる人間達。そう見下してただけの人間のひとり。エルフの秘伝の技で造った魔道具、偽りの宝石をいとも簡単に破られただけではなく、何もかもが自分より上をいく存在だった、悔しかったけどリンとクロちゃんと一緒にいる時間はとても楽しかった。

 こういう関係が、人間族でいうところの友達ということを後から知った。そういえば、姉さんにはよく分かっていなかったので好きな人が出来たと報告してしまった。

 ん、でも、好きな人と、好きな友達とはどう違うのだろう?


 もしかしたら、その報告が不味かったのかもしれない。


 エルフ族の中には人間族との交流を(よし)としない者達も多い。

 このすぐに死んでしまう人間族の激しい感情の波に感化され、共に生きていくことを選ぶエルフが少なからずいるから。

 愛とかいうよくわからない感情に飲み込まれ、人間との間に子供をもうけるという選択をするエルフも少ないがいるから。

 そして私は、その選択が可能な存在だから。


 人間族の汚さはよく知っている。

 人間族のせいで静かに滅びを待つだけの部族が存在するのも聞いている。

 私達エルフを商品として扱う人間達、そんな者達に襲われた部族がある。そしてその部族の神樹は汚され、ただひとり生まれていたハイ・エルフも人間に(さら)われてしまったと聞いている。


 人間は汚い。そう思っていた。

 けどそれは間違っていて、汚いものはどこにでも存在する。

 人間が汚いのではなくて、汚い人間が存在するだけなのだ。エルフの中にも汚いものがいる可能性だってある。

 世の中とはそういうところ。それを気付かせてくれたのはリンとクロちゃん。後はテレスかな。フジワラはキライ。


 だから、ちゃんと説明して戻ってくる。


 リンは人間だから、一緒にいられる時間は長くないけど、それでもその間は一緒にいたい。

 汚い人間からは自分で身を守れるし、マジックアイテムを大量に手に入れているのは私が強くなったから。


 ちゃんと説明して、早く戻ってくる。


 そう決意し、エルフの村へ通じる転移の扉を開く。


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