26:真の絶望
ふよふよふよ、と黒い獣がニーガンの前に浮いている。
そして、伸ばした前足の先から一本の爪が伸びている。
その爪は、ニーガンのアゴから脳天へと口を強制的に閉じる様に貫き、ニーガンが言葉を発する事を遮っている。
「そろそろ黙れ」
脳へのダメージが少なかったのか、ニーガンはまだ生きている。
「ゼツボウ、絶望か、お前が語った絶望はどの程度か、試してみろ」
その言葉とともに、ニーガンの両手両足の付け根に痛みが走る。爪に貫かれて動かせない顔、目だけを動かし下を見れば、地面に転がった自分の手足が見える。
「ーーーーー!」
声にならない悲鳴を上げる!
「絶望したか?」
紅い瞳の黒い獣が聞いてくる。
顔を貫いていた爪が抜け、地面に落ちる。
手足がない為、起き上がれない。
「こいつを犯せ」
黒い獣が、九頭の黒犬達に恐ろしい命令をする。
「キャゥン、キュウウ!」
九頭の黒犬達が恐怖に萎縮し、イチモツは縮こまったままだ。
「コロスゾ?」
黒い獣の言葉に、
「キャン、ギャン!!!」
狂ったかの様に吠える九頭の黒犬達、死なない為に生存本能が暴走したのか、血走った目でヨダレをダラダラと垂らし地に転がる俺の手足を喰らいながら死の恐怖に狂ったかのようにそそり立つイチモツで、、、
「ーーーーー!」
男としての尊厳を蹂躙され破壊される。
「ーーーーー!」
人としての尊厳を蹂躙され破壊される。
九頭の黒犬に犯されながら喰われる。理解したくない!
見るも無残に縮こまった俺のイチモツを喰いちぎられる。アアアアアア!
腹をカジられ臓物が引き摺り出される。理解したくない、理解したくない、理解したくない!
臓物を咀嚼されながら犯される。理解したくない、理解したくない、理解したくない、理解したくない!
ナゼ死なない? ナゼ? 何故? なぜ? 理解したくない、理解したくない、理解したくない、理解したくない、理解したくない!
死にたい。シニタイ。死なせてくれ、シナセテクレ!!!!!!
「絶望したか?」
耳元で、黒い獣の言葉を聞く。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ニーガンさん!」
「ニーガンどの!」
呼び声に、目を覚ます。
「ハッ!? な、ナンダ? なに、が」
気を失っていた?
「どの程度の絶望だった?」
その声、
「ヒッ!!!!!」
女の肩に座ったままの猫の言葉に命が凍る。
記憶が蘇る!!!!!!!!!!!!!!
「ニーガンさん、大丈夫ですか?」
その言葉に振り向けば、こちらを驚いた顔で見るネロ。そしてその後ろに、
「ヒィッ!!!!!」
イッヌ!!!!
「ゲ、ゴェ、エロエロエロ、、」
吐く、胃の中のものを全て吐く、
ブリュブリュブリュ!!!!
漏らす、前と後ろから、大と小を、同時に洩らす。
「エベガベボダダベベベエベベ、」
意味を為さない言葉を吐いて、ニーガンが地を這いながら逃げ出す。
「たしゅけへ、ころピテ、たひゅへシテ、アアアア、あピャペパー」
ドンッ! ザシュ! ザンッ!
地を這うニーガンの背をデスサイズが貫き、地に繋ぎ止め。
斬馬刀が体を二つに叩き斬り、宙に舞った上半身の首を二本の剣が切り離す。
「依頼主が死んでしまった」
「困ったな」
「アア、敵討ちが必要だな」
処刑人。
彼等にとっては依頼人も処刑対象なのか?
非情な処刑人達が、敵討ちを開始する。
その敵とは?
自分達ではないのか?
二刀流の男が、バッと剣についた血を払いながら言ってくる。
「降参してくれないかな。女の子を斬るのは好きなんだ」
え、この人なに言ってるの?




