25:絶望
転移の扉をくぐり出た先は、廃墟というか廃村のような、遥か昔に人が住まなくなって草木が生茂るようになった村の跡。
しかし家であったものをよく見てみれば、焼け落ちた跡や壊された跡が幾つも残る。ここは人が住まなくなったのではなく、住む人達が何者かの手によって殺されたか追い出されたか、その様な過去があったと想像出来る場所。
そう、ここは、ア・族の村。
しかし、残念ながら、私たちの望んだ場所では無いようだ。おそらく村は何処か別の場所へ移転したのだろう、神樹ごとというのは無理なので神樹を探してそこから歩ける距離を探索すれば見つかると思うのだけど、心配なのは相手が神樹の破片を使っている事。下手をすれば神樹自体が既に存在しないのかもしれない。まさかと思うが、カーサを攫った目的ってそういう事なのか、けどそれは、つまり、、、とりあえず神樹を探さねば。
おそらく神樹は肉眼では認識出来ないようにカモフラージュされているだろうから、実際見たかぎり神樹らしき木は見えないし、魔眼で探した方がいいのかな、、
あとなんか、むさ苦しい男の人達がこちらを見ている。
………………
…………
……
今から隠密発動しても遅いかな?
あ、けど、あそこにハーフエルフの人がいる。ラッキー、道を教えてもらおう。
「あのー、」
何やら、私の事をエルフの仲間か? とか精霊か? とか話してる様だったけど声を掛けると、ちょっと驚いた顔をした後、悪い顔になり。悪い顔というのは悪い事を考えていそうな顔という事で、私が人間だと分かった途端、最近は見なくなったけど、昔よく見ていた自分を神様か何かと勘違いしている様な人達の顔をして私の事を見てくる。
周りに居るガラの悪そうな人達も、私の戦闘力は皆無と判断したか手に掛けていた武器から手を離し私の事を観察しだす。うーん、気持ち悪い。けど九匹いる大きな犬だけは流石に動物の感か、それとも自分を神より上の存在と思い込み天より上からの超絶見下し視線を送っているクロに恐れをなしてか尻尾を完全に丸め込みキュンキュンと鳴きながら飼い主らしき人を前面に押し出してきている。押し出されている飼い主の人は他の人達同様クロの存在には気を留めずに私の事だけを舐め回す様に見つめてくる。うーん、なんか一番気持ち悪い。
私を他所に話が進む。
「オイ、アレはなんなんだ」
この集団のトップであろう男がハーフエルフに質問する。
「エルフの魔道具だ」
「なんだと、ならアレはエルフの関係者か?」
「違う、人間には使えないはずだ」
(リン、気付いているか?)
(うん。あのハーフエルフもだね)
(うむ、鑑定するとヤバイか?)
(たぶん、鑑定はエルフの十八番だから十分な対策をとっていると思う)
(ふむ、どうする?)
(私が気を引くからクロどうにか出来る?)
(ふむ? 意識があるということか?)
(おそらく、精度が良すぎるからね。自動的にどうこうという類のものじゃ無いと思うんだよね)
(ならば今も、神樹の破片を通してこの光景を見ているということか?)
(うん)
思ったのだけど、アレは魔道具なのだと思う。しかも神樹の破片を使った禁忌の部類に入るおそらく同族にさえも知られてはまずいもの。その為に見つかった時の破壊を徹底していて全てを巻き込んで消滅する造り手が完全に一線を超えてしまっているタイプの禁断の魔道具となっている。
私をどうこうの為に作られたのではなく、既に作ってあったソレを埋め込んだ者が私のところに来たというだけ。つまりソレを作成したであろうアテンは、既に壊れてしまっているということ。越えてはいけない一線を既に越えてしまっているということ。
何故壊れたのか、など一目瞭然。ア・族の村を滅ぼされたのだ。これが要因の一つである事に間違いはない。
「関係無いなら、どう扱っても問題ないな?」
「どうも何も、これから俺達はエルフの村をを滅ぼしに行くんだろう?」
「それもそうだな、おっと、こんな事を聞かれちゃあ、ただで返すわけにはいかないな、へへ」
「アア、他人に喋っちゃいけないと身体に教え込まないといけないな、ゲヘヘ」
ああ、そういえば、エルフの村を襲うために人を集めてるとか、闇の一族の人から報告があった。それがこの人達か。
「フフフ、ここだけの秘密だがな。ここを滅ぼしたのも俺の先祖なんだ」
「なに、本当か?」
「ンンッ? お前知らなかったのか」
「ニーガンから情報が漏れたとは思っていたが、本人だったとは、オオッ、オオオ!」
「ンンンッ? お前何を言っている? ニーガン様だろうが!!!」
ニーガンがいきなりハーフエルフを殴る。これはまずい。
「ちょっと!」
「ア゛ア゛ッ!?」
凄い目で睨まれる。
「リン、いいぞこれは」
「ウオッ! 猫が喋った!!!」
クロが気を失ったハーフエルフを念動力で持ってくる。
「どうしたの?」
「ハーフエルフの意識がリンクの条件だったらしい」
「あ、そういうこと?」
「うむ」
不幸中の幸い。意識を失ったことでおそらくアテンとの意識リンクが切れたようだ。
途中からハーフエルフの口を借りてアテンが喋っていた節があった、あのままだとここにいる全員をまとめて殺す為に自爆するのではとヒヤヒヤしていたのだけど、結果オーライという感じに収まったようだ。
「オイッ小娘!」
声に顔をあげれば、武器を抜いて構える男達と、その中心で怒りを露わにしているニーガン。
「キサマ、エルフどもの仲間か! まさか俺達をここでどうにかしようなどと思っていまいな?」
どうやら、このハーフエルフを助けようとしていると勘違いしているらしい、それで仲間と。
「なにやら奇妙な術を使うようだが、のぼせ上がるなよ? たかが女の分際で!!!」
ひどい差別的発言を受けている気がする。
「今からお前を絶望のどん底に叩き落としてやろう!」
このニーガンって人、自分の言葉に興奮するタイプの人間らしい。
「絶望だ! この意味がわかるか? 想像してみろ!?」
「違う、違うぞ? いまの想像では生温い」
「もっと、もっとだ、今からお前に真の絶望を味あわせてやろう」
「まずはそうだな、手足を切り落としてやろう、フフ、どうだ? 自分の意思で動くこともできなくなる。恐ろしかろう?」
「そして犯す! 全員で犯す! 俺達だけでは無いぞ、当然ここにいる犬達にも、、」
ニーガンの演説がここで止まる。




