20:流天
森を散策していると、
「もうし、もうし」
と、ニーガンという若者から声を掛けられる。
聞けば行商を生業としている人間である。
ここ、ア・族の森の深層へ命を賭けて商いに来たのだという。
我等エルフの作る魔道具を売ってくれないかという。
アテン様が旅立たれて幾年経ったのだろうか、人間の世の情報を得る良い機会と判断する。
大望の子アーニアには、残念ながら神樹の巫女の才能が無かった。
人間の世の情報と引き換えに、関わりを持つこととする。
時が流れる、、、
ア・族の村に来たニーガンがいう。
「アテン殿。もう少しお会い出来る間隔を短くしてくれませぬか」
初めて会った頃とは別人のように変わり果てたニーガンがいう。
人間とエルフの時の長さの違いを諭す。
「これでは利が出る前に死んでしまうわい、世間を知らぬバカのくせにワシに説教するなど、片腹痛いわ」
人間の世界にいるエルフの情報があるという。少し遠出になるが、直接行かねば話を聞けないと諭される。
「留守の間、頼みましたよ」
「はい、アテン様」
心許無いが、すぐに戻る。
「全てを奪い尽くせ! 火を放て! ギャハハ!」
全てを失う。
「アア、アアア、アアアアアアアアアアアアアアア!!!」
アテン様がお戻りになる場所を、アテン様が、、
唯一燃え残った神樹を移し、新たな地に一人だけの村を、アテン様のお戻りになる村を、ア・族の村を再建する。
時が流れる、、
「アテン様、アテン様!」
変わり果てたアーニアが汚らしい人間との間に産んだモノ達と村へ戻ってくる。
神樹は穢され、村も穢された。ア・族の未来は穢され終わった。
アテン様、
それでも、アテン様の戻る地は護らねばならない。
時が流れる、
カ・族に才能に祝福された子がいると噂になっている。
アテン様、
しかし、その子は人間と共にいるという、穢らわしい。
アテン様、
アテン様、その子をア・族の新しい神樹の巫女にしませんか?
アア、アテン様、そのとおりです。
アテン様、
アテン様がお戻りになるその日まで、私が全てを賭けて、御守り申し上げます。
アア、ワタシのすべて、、、、
始祖アテン、、、、、サマ、、、、