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神樹の巫女  作者: 昼行灯
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02:アテン

 始祖(しそ)大樹(たいじゅ)

 始まりの神樹と呼ばれるソレから生まれたエルフ達。彼等いや、彼女等は皆、神樹の巫女であった。


 彼女等はそれぞれの意志で神樹となることを選び、それぞれの名の始まりの言葉で分派していった。


 ア・族の族長アテン。

 その名は、ア・族の神樹となった巫女の名であり。代々の族長がその名を継いでいる。

 彼女の前には素晴らしい才能を持ったエルフが立っている。才能という面ではハイ・エルフだけがズバ抜けて高いということではなく、エルフにも素晴らしい才能を持った者が生まれる。


 神樹の巫女の条件である錬金(れんきん)スキル。

 神樹になることで錬金スキルが練生(れんせい)スキルへと変化し、命を生み出す神樹となる。


 彼女もその素晴らしい才能、錬金スキルを持ち、その常識に囚われない発想で様々な魔道具を生み出していた。彼女ほどハイ・エルフでなかった事を惜しまれた存在はいない。


 「始祖アテン。御用でしょうか?」

 ア・族の始まりの神樹と全く同じスキルを持って生まれた彼女が族長を継いだ時、称賛を込めて皆が彼女のことを始祖アテンと呼ぶようになっていた。

 「才に祝福されし子よ、」

 その顔を愛おしく撫で、美しい髪を()き、抱きしめる。

 「私はこれから世界の知識を巡る旅に出ます。そして、、、神樹となります」

 「!」

 彼女の身体に驚きと拒絶と諦めが走る。


 その永遠に思える時を過ごす神樹にも終わりは訪れる。

 樹としての終わりではなく、エルフの母としての終わりがあるのだ。

 代々の族長、という表現の通りほとんどの族長はハイ・エルフであり、彼女達はア・族の神樹が終わりの時を迎える前に自らが新しいア・族の神樹として生まれ変わってきたのだ。


 知識を巡る旅。

 当然のことながら、神樹のスキルは、子に受け継がれる。

 より多くのスキルを持って神樹となる。これが、ア・族の将来を考えたアテンの出した答え。


 「貴女にアテンの名を譲ります」

 「!!」


 巫女でない自分に族長を譲るなど、という言葉は、自信に満ちたアテンの抱擁にかき消されていく。

 それに、現在ア・族にハイ・エルフはアテン以外存在しない。


 「はい、お帰りをお待ちしています」

 エルフ族の寿命は長い。アテンの旅は数年、又は数十年、もしかしたら数百年かかるかもしれない。

 その間に、新しい子が、神樹の巫女となれるハイ・エルフが生まれるかもしれない。その時はその子に族長の座を譲ろう。

 始祖アテンの帰還まで、このア・族を守ろう。そう誓う。

 「ありがとう、可愛らしいアテン」


 しばらくして、新しいアテンを残し、名も無きハイ・エルフが旅立つ。






 これが、全ての始まりであり。終わりである。


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