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神樹の巫女  作者: 昼行灯
19/32

19:専用装備

 「ム、ムムム。これは」

 ここでヨランさんの声が、会話を中断する。

 「どうしたんですか?」

 天魔の火筒を持とうとしているのはわかるけど、

 「リン様、重すぎて持てません」

 「え?」

 そう言いつつ、ひょいと天魔の火筒を持ち上げる。


 簡単に持ち上げた私の手にある天魔の火筒をマジマジと見ながらヨランさんが、

 「…………これは、もしかして、専用装備品ですか?」

 「あ、はい。そうですね。私はこれの重さをほぼ感じないです」

 「ハハア、なるほどなるほど、私が持ってみますので、手を離してもらえますか?」

 「はい。いいですか?」

 「お願いします。オオット!」


 ドガンッと音を立てて、ヨランさんの手から落ちた天魔の火筒が床にメリ込む。


 「これは、重量自体が変化していますね」

 「確かに、そうみたいですね」

 「リン様、もう一度同じ高さから落としてみてもらえますか?」

 「あ、はい」


 カシャンと今度は見た目通りの音を立てて天魔の火筒が床に落ちる。


 「フムフム、他人の手に渡らない時は見た目通りの重量のようですね」

 「みたいですね。これは、私の意志で重さを変えられるんですかね?」

 「いや、私に聞かれても解りかねます」

 「ですね。時間のある時に色々試してみます」


 重量変化か、うーん、どんな使い方があるのだろうか。


 「リン様、私にも拝見させていただけますでしょうか?」

 ヤンさん。ヨランさんが興味を示したため言い出すタイミングを待っていたのだろう。

 「はい。どうぞ」

 天魔の火筒を床から拾い上げ、テーブルの上へと置く。


 「有難うございます」

 ヤンさんが天魔の火筒に手を当て、能力を確認している。

 「これは、素晴らしいですね。各種能力の上昇に、物理耐性ですか、」

 未鑑定のアイテム以外は基本的にアイテムの能力が見れる。ただ、隠し能力のようなものは効果が出るまでわからないけどね。例えば童子切が鬼族に対して特別攻撃力アップ、いわゆる特攻があるとか。

 「クリティカルが無いんですよね」

 伝説級の武器にはもれなく一撃必殺のクリティカルがついてると思ってた私。

 「リン様、銃にはほぼクリティカルは付きません」

 「え、そうなんですか?」

 「はい、クリティカルにも種類が存在しますが、倍撃や三倍撃、ましてや一撃死などがついていたら困ります」

 と、ヨランさん。


 「天魔の火筒ですか、天魔、テンマというと、東方の地でいうテングという魔物のことでしょうか?」

 「そうなんですか?」

 (リン、たしかに天狗は天魔族なのだ!)

 (そうなの?)

 (うむ!)

 (魔族が東方では天魔族って言われてるんじゃないの?)

 (違うのだ、ちゃあんと魔族にも分類があるのだ!)

 (えー、そうなの?)

 (そうなのだ!)

 そうなのらしい。まあ、けど、何も答える気ないからどうでもいいんだけどね。だって私記憶喪失設定だし。こんな簡単な手には引っ掛からないですよ?


 「そういえば、剣もあったと見受けましたが」

 「え、見てたんですか?」

 「はい」

 やだー、ヤンさん悪びれもせず真正面から肯定してきた! けど特に気にしない、記憶喪失設定だし!

 「なんか、どっちか一個しか取れないようになってたらしくて、それを取ったらもう一個は消えてしまいました」

 「そうなのですか」 

 「そうみたいです」


 「ヤン、物理耐性とはどのようなものだ?」

 と、王様。

 「はい。ドラゴン族やデーモン族の上級魔物に付いていることがある、物理攻撃自体のダメージを減少させるスキルになります。基本、割合でダメージ軽減になるのですが、魔王クラスになりますと特定以下のダメージが通らないということもあります」

 「ほう、物理耐性スキル自体にもランクがあるということか?」

 「おそらく、と言えます。魔物の場合は持っている本人自体のランクにより効果が増減している可能性もありますので」

 「フム、リン、良い物を手に入れたな」

 「あ、はい、有難うございます」

 何故か礼を言ってしまった。


 「リン様、もう一方の剣の名称はわかりますか?」

 「はあ、天魔の(つるぎ)です」

 「そちらも天魔とつくのですか、それにケンでなくツルギですか」

 「はあ」

 ツルギの部分は気にしなくて良い気がするけど。

 (火筒もヒヅツだしな!)

 (うん、ホヅツじゃないんだよね)

 (ヤツは中二病の先駆者だからな!)

 (そうなの?)

 (うむ!)

 信長さんと蘭丸さんに怒られそうな会話を中二病真っ只中のクロがしてくる。


 物理耐性とか確かめようが無いんだけどね。確かめるために殴られるとか絶対嫌だし!

 「確かめる気無いですからね?」

 なんとなく宣言しておく。








 夜。


 ローラン王都、魔道具屋を見つめる。


 部屋の窓から魔道具屋が見える家に住みついて、今日で何日目になるのだろうか。

 代わり映えのしない景色、それに突然変化が起きた。


 ここ一月開くことのなかった魔道具屋の扉が音も無く開いたのだ。


 その緊急事態に、身体に緊張が走る。


 暗闇に立つ人影。


 その人影の頭がグルリと辺りを窺う。


 数瞬、こちらを見た時、顔が止まったような気がした。まさかこの暗闇の中、見えているのか?


 緊急連絡用の魔道具に手を伸ばす。その一瞬、視線を外した、その一瞬、コッという音を聞く。


 絶命。


 翌日、交代要員により、矢に頭部を貫通された男の死体が見つかる。


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