表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神樹の巫女  作者: 昼行灯
16/32

16:景色

 少し落ち着いてきたところで、ダンスホールを眺める。

 魔眼を発動して、出席している全ての顔を記憶しておきたいのだけれど、ずっと私だけを熱心に見ている人が今もいる状態ではそれも難しい。下手に魔眼を発動して目が赤くなったのを見られてしまったら大騒ぎになってしまう。当然、神眼も同じ理由で発動出来ない。

 素で瞬間記憶能力とかを持っているわけでは無いので、普通に目の色に変化のない鑑定を発動し、出席者の顔と名前を見ていって出来るだけ覚えるように努力する。


 瞬間記憶能力スキルとか存在するのだろうか?

 と思ったけど、魔眼の能力の一部にあるので単体スキルとしては存在しないだろう。ある場所で手に入れたファウストの書の中にもその様なスキルを知っていたものはいない。


 ホールの中に見知った人達を何人か見つける。

 さっきの人もそうだったけど、給仕として暗部の人達が何人か紛れ込んでいる。王様の(そば)に常にいる給仕さんは荒事担当のヤンさんだ。給仕服が似合っていない。頭脳はヤンさんはここには居ない、おそらく何処か会場を見渡せるところで指揮を取っているのだろう。


 次は、ダンスホールで女の人に囲まれているのは宮廷魔術師長のヨランさん。おそらく独身なのだろう、宮廷魔術師という花形職のトップを務めているためなのかモテモテだ。


 ラムダ君もいる。というか、年齢的には年上なので本来ならばラムダさんと呼ぶべきなのだろうけど、発言や行動がクロっぽくて思わず君づけで呼んでしまう。クロとフジワラ君はブロンドさんブロンドさんって呼んでるけど何なんだろう、確かにラムダ君の髪の色はブロンドだけど、何かのキャラクターの名前なのだろうか、謎だ。

 剣も鎧も着けていないラムダ君は、シュッと背の高いイケメンさんだ。英雄であることも相まってヨランさんよりもモテモテ状態。格好付けて話しているのを見ていて気付いたけど、私の視線が外れたタイミングで何故か此方をチラチラと見ている。何だろうと思ったけど、そういえば白髪になってから会うのは今日が初めてだった事に気づく。


 ウィリアムさんとテレスさんを発見する。

 二人とも冒険者ギルド職員の制服だ。よく見れば普段着ている制服よりも意匠が凝っていて、おそらく正式な場に着る用の制服なのだと分かるけど。

 ドレスコードは? え、私そこでも騙されてたの?

 いやいや、それは無いか。貴族の人達は皆ドレスコードを守っている。これはつまり、明確に貴族とその他で区別しているということなのだろう。ある意味分かりやすい。実際、ウィリアムさんとテレスさんに話しかける人はいない、微妙に距離を取られているのが分かる。


 もしかして、私に配慮して呼ばれたとか?

 私の素性が(まこと)しやかに流れているのは知っている。作為的なものを感じるのはおそらくヤンさんあたりが絡んでいるからだと思っていたけど、この場にわざわざウィリアムさんを呼んだのはその辺りの真実味を際立たせる為とかなのかもしれない。そうだとしたら、悪い事をしたなと思う。

 どう見ても居心地がよさそうには見えない。二人とも気にした風が無いのはこういう扱いには慣れているという事なのだろうけど、、テレスさんが私が見ているのを気付いたみたいで軽く手を振ってくれる。私も微笑みながらテレスさんに向かって軽く手を振る。


 (この時リンは気付いていなかったが、自分に手を振ってくれたと勘違いした貴族の暴走に巻き込まれるのであった)

 (クロ、変なナレーション勝手に入れないでね)

 (それこそがこの後に起きる国家存亡に関わる大事件へと発展する引き金だった事をリンはまだ知らない)

 (やめてもらえませんかね、浮気者のクロさん)

 (なぬ! 我はリン一筋なのだもぐもぐ!)

 (なにもぐもぐしてるんですかクロさん?)

 (もぐもぐもぐもぐごっくん! もぐもぐしてないのだ!)

 すたたたたと、王様の所から私のところへ駆け足で戻ってくるクロ。


 (何しに行ったの?)

 食べ物に釣られたというのもあるだろうけど、ワザワザ王様のところに行く必要はないはず。

 (うむ、どんなものかと観察に)

 少し得体の知れないところがあるしね、フレデリック王は。

 (で、どうだったの?)

 (美味かった?)

 (なにが?)

 (ケーキ?)

 (ふーん、良かったね?)

 (うむ?)

 取り敢えず、クリームまみれのクロを置いてあるナプキンで拭いてあげる。


 一通り拭き終わった時点で、ナプキンをかじかじと囓り始めるクロ。

 (で、ホントのところは?)

 (うむ、よくわからんのだ。強いて言えばリンっぽい?)

 (私っぽいって、どういうことさ)

 (掴みどころが無いみたいな?)

 (うーん、それじゃあ何もわからなかったってことじゃん)

 (そうとも言う)

 まあいいか。




 そんなこんなで、続いていく舞踏会。

 宴もたけなわな所でエリック王子を残し、王様と私は退出する。

 いつまでも主催者がいると堅苦しいだけで、砕けた話ができないからとかなんとか、ここから先はダンスパーティーではなく貴族同士の交流会の(てい)をようしてくるのだろう。その場を任されたエリック王子は王様から信頼されているんだなぁと思いながら、ご愁傷様と思ってみたり。


 やっと帰れるかと思ったのだけど、私達はこれから晩餐会という事らしい。


 晩餐会もやるのね、と思いつつ着替えていいかと問うてみるが、そのままでと返される。食事するのにこんなお腹を締め付けられている状態でなんてなんて理不尽な、と心の中で抗議しつつ素直について行く。


 出席者は、私に加えて、ウィリアムさんテレスさん、そしてヨランさんという事らしい。


 来ない筈だったテレスさんが加わった事で冒険者ギルド側が三人で、ローラン側が二人で人数的に勝ってるとか思ってみたが、私はローラン側でもあるのかと思ってみたり、みなかったり。


 わかりやすいというかなんというか、つまりは晩餐会という名の報告会って事だね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ