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神樹の巫女  作者: 昼行灯
15/32

15:注目

 少し強引にエリック王子が私の手を取り立ち上がらせる。


 ぽてっと、クロがスカートの中から落ちる。


 断って良いものかと周りを見れば、何故かホール中の視線が私達に集中していて、とても断れる雰囲気ではない。まいった。


 (ちょっとクロここで待ってて)

 (やなのだー!)


 クロがドレスに爪を立てて登ってくる。

 「イタ、痛いって、」

 背中が丸見えで、肩まで素肌が晒されているドレスなので、途中から登ってくるクロの爪が素肌に刺さる。

 (リン、バランスが取りづらいのだ!)

 収まるフードも何もないため、素肌状態の私のそれほど広くない肩に乗って、爪を立てないようにいつもより強めにつかまってくるクロ。爪が出てなくてもやっぱり痛い。


 クロのお腹に手を入れてひょいって持ち上げ、私が座ってた椅子にちょこんと置く。


 おっと、視線がいきなり出現したクロに集中している。

 クロの見た目は、可愛いモノ好きには堪らない見た目だからね。ネコも珍しい生き物だというし、初めて見る人もいるかもしれない。


 (ちょっとクロ君、そこで可愛さアピールでもしててよ、そしたら私目立たなくなるし)

 (だが断る!)

 (なんでそんな意地悪言うの?)

 (意地悪したいお年頃なのだ!)

 (そんなお年頃は今すぐ卒業してください)

 (だが断る!)

 (もー) 


 給仕さんからケーキをいくつか貰い、サイドテーブルに並べる。

 「これ食べてていいから、待っててね」

 クロをサイドテーブルに乗せると、すぐさまケーキを食べ始める。

 (しょうがないもぐもぐもぐにゃん)

 うん、いいんだけど、ゆっくり食べなね。




 階下に降りて皆と同じところで踊るのだと思っていたのに、階段途中のフロアで立ち止まるエリック王子。聞いてない、聞いてませんよ!


 しかも、貴族の皆さん踊るのをやめて全員こちらを見ているんですけど!


 王族が踊る時にはみんなが見るとかそういう事なの!?


 やめてほしいんですけど!


 演奏が始まる。


 階下で皆に囲まれて踊るよりマシかと自分を納得させ、先ほど見て覚えたステップを踏み、ダンスを踊る。

 皆の視線が痛いんで、なるべく背中を向けるようにしているけど、丸出しの背中への視線が見えてないのに痛いほど感じる、こういう視線というのは見えてなくても何故か分かってしまう、自意識過剰とかそういうのではなく、ほんとに視線を感じるのだ。


 ここは何という地獄なのだろうか、、ほんとにヤダ。


 時間の感覚というのは本当に、意識によって延びたり縮んだりするモノだと実感する。永遠に続くかのように思えたダンスが終了する。


 「リン様、わたくしともぜひ一曲!」

 「いや、わたくしと!」


 ダンスが終わった途端、見ていた貴族の人達からダンスへのお誘いの声が其処彼処(そこかしこ)で挙がる。絶対無理と思いながら愛想笑いをしているとエリック王子が助け舟を出してくれる。


 「リン、嫌なら席に戻ろう。断る権利は此方(こちら)にあるんだからね」

 立場が上の者からのお誘いは断ることが出来ないが、逆ならば問題無いとのこと。此方(こちら)は王族で立場は絶対的に上なので、ゴメンなさいと言って頭を下げようかと思ったけど、もしかしてそういうのはしたらいけないんじゃ無いかと思い、愛想笑いしながらスカートをちょっと摘んで腰を落とすだけにして席に戻る。


 「リンはダンスも上手いんだね、何処で覚えたのかな?」


 エリック王子が何故か嬉しそうに聞いてくる。というか、もしかして、あの時、エリック王子からのダンスのお誘いも普通に断ってもよかったのかな?


 なんていうか、わからないことだらけな事に少し混乱している。王族の公的な場での礼儀作法とかあるのかなどと思ってみたり、覚えなくてはいけないのだろうかとか思ってみなかったり。



 席に戻ると、クロが行方不明になっていて。

 私の事を見ている視線以外で注目を集めてる視線の先を追ってみれば、王様のテーブルの上でケーキをパクついているクロの姿が、


 王様が差し出すケーキを遠慮無くパクつくクロ、、うん、王様に餌付けされてるね。


 クロ、ちょっとそれはチョロすぎない?

 と思いつつも、楽しそうに微笑む王様も珍しいのか、私よりもクロと王様の絡みを見ている人の方が増え、視線が完全に分散された事に少し安堵する私、リンでしたとさ。


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