14:羞恥心
フレデリック王の合図と共に、オーケストラの演奏が始まり、各々挨拶回りで見つけていたパートナーと手を取り合いダンスが始まる。
ダンスなど踊ったことがない。と思いつつ、用意された豪華な椅子に座りそれとなくダンスの動きを見取り稽古する。特に問題なさそうだ。
(リン、ここではダンスを踊れないポンコツさをアピールしてからの恋愛要素全壊の脳死お花畑乙女ゲーが基本)
(クロ、夢見る乙女を普通にディスってるよね)
(そんなことはない、ダンスと同時に小キックからの小チョップ連打からの中パンチで仰け反りを入れて超必殺技で即死コンボを入れた後に、武闘会と勘違いしてましたわオホホムーブ)
(それは、こう言ってはあれだけど、テレスさんのムーブだよね? ていうか相手殺しちゃってるよね?)
(後でテレスに伝えておくのだ!)
(いいけど、伝えたら一週間ご飯抜きね)
(なぬ!?)
しかし、私に集中する視線が、なんか、無理なんだけど。
(クロ先生、隠密を発動しようかと思ってるのですが、ダメですか?)
(うむ、隠密を持っているのがバレるだけだな)
(ですよねー。だけどこんな大勢の視線に晒されるのキツいんですけど)
(うむ、しかしリンよ、ここにいる奴等を皆殺しにすれば、国取りが一瞬で完成するという事実に気付いているか?)
(はい、ここにいる人達皆殺しにしたら、次の日から国の運営が成り立たなくなるという事実も考えてから言おうね?)
(それは些細な事)
(クロって後のこと考えないことが多すぎるよね)
(取り敢えず行動することこそベンチャー企業の経営者的考え)
(取り敢えず行動してほとんど失敗している中のほんの僅かな成功例を自慢げに言われても、ねえ)
(宝くじは買わなければ当たらないのだ!)
(はいはい、そうですねー)
(むぅ! 討論から逃げるななのだ!)
(じゃあ論点をコロコロ変えないでよ?)
(変えてないのだ!)
クロがスカートの中で暴れる。
(ちょっと、変なとこで暴れないでよ!)
(じゃあ負けを認めるのだ!)
(ナニソレ!? 横暴すぎ!)
(地の利を活かす、これこそ兵法の基本!)
ムギュっとスカートの上からクロを押さえつける。あるモノを有効利用して戦う、戦いの基本。
(卑怯なのだ!)
(卑怯なんてどの口が言うのかなー?)
クロをスカートで包み込む。
(正々堂々と戦うのだ!)
(はいはい、正々堂々正々堂々)
(むきゃー!)
「リン、その、あれだよ」
エリック王子が声を掛けてくる。
「あ」
気が付けば、なんていうか、うん、凄く注目されている。
思わず顔を真っ赤にして俯いてしまう。恥ずかしすぎる。
(クロのせいだからね!)
(くくく、我の作戦勝ちなのだ!)
作戦なんか無かったくせに! だけどなぜか負けた気になるのはどうしようもない。だって恥ずかしくて顔を上げられないし!
(リン、我はここで裏技を使い好感度メーターの数値を画面表示しようと思うのだ!)
(うん、クロ君の言ってる意味が理解出来ないのだ!)
(真似するななのだ!)
(真似してないのだ!)
(むぅ!)
好感度メーター発動!
変態紳士。
デュフフ、神々しい見た目なのに人目も気にせずスカートをたくし上げるなんてなんて悪戯っ子なんだ。好感度プラス100。
変態嫡男。
ブビュビュ、そ、そ、そ、それは僕ちんへのアピールなんだね、なんていけない子なんだ。好感度プラス300。
変態御令嬢。
オホオホオホ、なんて綺麗な御足でしょうかしら、ナデナデしてみたいですわ。好感度プラス500。
(変態しかいないんですけど!)
(貴族はみな変態、コレは常識なのだ!)
(そうなの!?)
(うむ、いっそ皆殺しにすべき!)
(そうなの!?)
(うむ、これが真理!)
なんか怖くて余計顔を上げられなくなってしまう!
実際、頭のおかしい貴族に会う確率高いしね!
見なくても感じる視線が全然離れる様子も無くて、恥ずかしくてずっと俯いていると。
「リン、一曲踊ってくれないか?」
と、ずっと私を見ていたエリック王子に声を掛けられる。うん、エリック王子もずっと私の事見てたよね? 断ったらダメなのかな?
俯きながら迷っていると。エリック王子が私の手をソッと握り、、




