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神樹の巫女  作者: 昼行灯
12/32

12:ドレス

 お城に着くと、こちらへと女中さんの先導でドレスルームに案内される。

 「え、あの、私このままでいいんですけど、」

 身に付けてるのはいつもの陰陽浄衣(おんみょうじょうえ)、見た目は巫女さんみたいな感じなのでこの格好ならば正式な場に出ても問題ないはず。

 「リン様。舞踏会に出席する女性は皆ドレスでなくてはいけません」

 これはまさか! ドレスコードというヤツですか!? 陰陽浄衣(おんみょうじょうえ)なら全てのドレスコードをパス出来ると思っていたのに。


 手際よく服を脱がされていく。

 ああ、手慣れている。

 しかし、魔王のローブとか陰陽浄衣とかを他人の手に渡すのはまずいので、脱がされる先からアイテムボックスにしまっていく。

 女中さん達はビックリしているけど、その手が止まることはない。流石プロの方達。


 「リン様の美しいホワイトプラチナの髪にはやはり純白のドレスがお似合いかと思われます。よろしいでしょうか?」

 ホワイトプラチナだって、流石に白髪とは言えないか、というか、いつの間にか舞踏会に出席する流れになっているんだけど。

 「あの、」

 「白いドレスの胸元にはやはり、ダイヤモンドがよろしいかと、こちらのネックレスはいかがでしょう?」

 「え、あの、」

 「お似合いです。お化粧は、やはりまつ毛もホワイトプラチナでは神秘的ですがラインが曖昧ですね、アイラインを引きましょう」

 「ちょ、あの、」

 「お肌は瑞々しいので、ファンデーションを少しだけ」

 「ちょ、やめ、」

 この人達、私の言うこと初めから聞く気ないよね!!!


 あっという間に、ドレスを着せられ化粧までされてしまう。恐るべし女中軍団。


 鏡に映る自分の姿はまるで別人。肩が丸見えのドレスを着せられてなんか凄く恥ずかしい。


 真っ白に統一された私。何度も私の肩に乗ろうとしていたクロはその度に女中さんに持ち上げられて部屋の隅に移動させられていた。


 肩に乗るのは諦めて、気付けば私のスカートの中に忍び込んでいるクロ。きつく締められたガードルの壁に上に登ってっくることは諦めたのか、スカートの中でドロワーズに爪を引っ掛けてぷらぷらと遊んでいる。


 (なんか、今すぐ帰りたいんだけど)

 (リン、我は武闘会に興味津々なのだ)

 (いや、だからクロ、それ違うから)


 ドレスルームを出ると、まるで王子様みたいな格好をしたエリック王子が立っている。ああ、そう言えはエリック王子は王子様だった。

 「オオ、リン、とても美しいよ!」

 大袈裟に褒められる。あー、やだやだ。ここに初めて来た時を思い出す。

 「黒髪も神秘的だったけれど、そのホワイトプラチナも幻想的で素晴らしいね。手を伸ばせば儚く消えてしまいそうなその姿は、まるで天上界にいる天使のようだ」

 「どうも」

 としか返せない。歯の浮くセリフとはこのことを言うのだろう。


 どうぞと手を取られ、案内される。


 どうにも色々と打ち合わせがされているみたいな感じだ。おそらくヤンさんかなあ、私の髪の色はホワイトプラチナで統一するみたいだし、何よりも黒から白に変わった経緯を聞いてくる気配がない。もしかしたら、ちょうど良いと取られている節もある。黒い髪の毛というのはある特定のクラス、職業を連想させる。そのクラスの人達はある制約の下に国の支配下に入る事が多い、それは確実な国力、戦力のアップに繋がることだが、必ずしも歓迎される事柄でも無い。

 それがどうか、今の私は完全にそれを連想させる要素が微塵もない、睫毛(まつげ)まで色素が抜け落ちてしまって見た目でいえば全くの別人と言っても良いくらいの変わりようだ、脱色した、髪を染めたで通るレベルを超えている。初見の人には初めからこの色だったと認識されるレベルの見事さと言っても良い。


 この舞踏会自体が私のお披露目式の可能性さえある。

 「もしかしてこれって、私のお披露目式なんですか?」

 「何のことだい?」

 即答、そしてまったく表情には出なかったけど、今はこの様に手を繋いでいる。指先を少し動かして、その意味を伝える。

 「……参ったね。リンがコレ程の人物だったとは、見抜けてなかったよ」

 「はあ、どうも」

 「父上の案なんだよ」

 おっと、ヤンさんじゃないのね。というか、フレデリック王ってなんていうか、こちらの予想の斜め上を行くことが多い気がする。一番気をつけないといけないのはフレデリック王なのかも知れない。

 「王様って、発想力と実行力、凄いですよね」

 「ああ、父上には勝てる気がしない」

 判断基準は勝ち負けなのか、ふーん。


 「そういえば、クロはどうしたんだい?」

 露骨というわけではないけど、明かに話題を変えてきた。これ以上この話しはしたくないということなのだろう。

 「ああ、この中で遊んでます」

 ドレスのスカートを指差す。


 少し驚いた顔をして微笑むエリック王子。立ち居振る舞いが洗練されている。


 やー、なんか、こういうのは、やりづらい。

 正直今すぐ帰りたいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 虫の知らせしかないからなかなかカーサ助けにいけませんね。
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