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神樹の巫女  作者: 昼行灯
10/32

10:深行

 豪商ニーガンは、商品を検品している。

 暫く見ていくと苛立ちが隠せなくなってくる。ここ一月、急激に商品の質が落ちてきている。


 仕入れ元が親から子に変わっただけでこれほど質が低下してしまうとは。やはり半分(ハーフ)は半端で使えない。


 ニーガン家を、豪商と呼ばれるまでに大きくした初代が仕込んだというエルフの女。そいつが流してくる不思議な木片、ガンガンにキメたい奴等や、得体の知れない魔術師達が高額で買い取ってくれる。とても貴重な商品。持ち込むたびに初代が仕込んだ人間界の快楽で楽しませてやっていたのだが、一月ほど前から取引が女エルフからハーフの男に変わった、その途端質の低下が著しい。おそらくまともな教育を受けていない、半端な知識しか持ち合わせていないクズなのだろう。


 挙げ句の果てに、ここで楽しんだ商品の女を持ち帰りたいなどと言い出す始末。

 ハーフは生殖機能は持っているが、生殖能力が無い半端者。アイツらが商品の女を孕ませ、さらに商品価値の高い女が生まれるならばいくらでもくれてやるが、ただ使い潰すだけの為にくれてやる商品など持ち合わせていない。

 初代に仕込まれた時点で狂ってしまっていた女エルフの戯言を信じている愚かなハーフ共。自分達の親は、ここに来るたび女エルフと楽しんだ人間だということさえ知らず、自分達が女エルフを孕ませているなどと狂った女エルフ言った言葉を信じている。ハーフにその様な機能がないことはあの女が産んだハーフの女達によって証明されている。商品として女のハーフエルフを取り扱ったのは先代だったか、その時もとてつもない富を生み出したときく。


 隠している様だが、既にあの女エルフは亡くなったのだろう。

 これ以上質の低下が続くならば、こちらの信用にも関わってくる。先日来たハーフに手持ちの商品達によるスペシャルサービスを行った結果、狂った女エルフの奉仕しか知らなかったハーフは自分が複数の女達に奉仕されるという新しい喜びを知り簡単に堕ちた。そして、いとも容易く直接取引の交渉に成功した。


 なんと、新しい女エルフが村に居るらしい。

 しかも、そいつも特別性のエルフで初代の使った方法を行うことで孕む事ができるエルフに変えることもできるという。


 巨万の富を獲るチャンスだ。


 初代が略奪した村の跡、そこで取引の詳細な擦り合わせを行い。新しい村への略奪計画を立てることになっている。

 しかし、自分がどの様なことをしているかも理解できていない簡単に色に惑わされる教養のないハーフはとても扱い易い。

 この際、色に溺れさせ子飼いにしてしまうのも良いかと思っている。




 戦力を集める。


 不可侵とされているエルフの村を攻めるのだ。

 表の人間は使えない。情報が漏れただけで、潰されてしまうかも知れない。


 裏の人間を、闇に生きる者達を、人を商品とする者達の伝から、エルフが独占している魔道具の秘密を知りたい者達から、秘密が漏れない様に、慎重に、戦力を集める。









 闇の一族。


 光魔法と闇魔法。

 そして、火、水、風、土魔法。


 光魔法と光の神を信仰する教会。これを光の一族と呼称するならば。

 闇魔法と闇の神を信仰する者達を、闇の一族と呼ぶ。


 教会、そして聖都、表舞台で活動を続ける光の一族と違い。闇の一族は、裏の世界で、闇の世界で活動を続けている。


 ただの町民、教会の聖職者、国の重鎮。闇の一族は様々な表の顔を持ちつつ、裏の世界に精通している。


 ここにも一人、闇の一族が存在する。

 闇の刻印をかざす事で起動する魔道具。今日もそこから裏の世界の情報を収集する。


 様々な情報の中の一つ。エルフの村の襲撃計画。


 エルフというワードに反応し、それを声に出して読み上げる。その瞳はまるで何か強力な催眠にでもかかったかの様に虚ろだ。


 しかし、その様なことはあり得ない。闇の術に精通する彼等に気付かれないように、強力な洗脳を施す事が出来るものなどこの世には存在しない。


 彼等こそが闇の深淵、それさえも侵す漆黒の暗闇などこの世には存在しない。存在してはいけないのだ!


 なんの前触れもなく、ひら、ひら、ひら、と魔道具に止まっていた紙で出来た蝶が舞い上がる。


 その蝶を虚な瞳で見送り、元の生活に戻る闇の住人。








 闇の中。


 パキン、バキ、と木が折れる様な、成長する様な音が響く。


 「巫女様、巫女様、何故その様に抵抗なされますか?」


 笑みを貼り付けた感情の無い声が聞いてくる。


 「……」


 その笑みが深くなる。


 「わかりました。それが未練なのですね。ならばその未練を断ち切ってここに持って参りましょう」


 バキンッ、バキ、と狂おしく神樹が身悶える。


 「フフ、フフフ、フフフフフ」


 闇が深まる。


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