大好きな人
あなたは毎日私を褒めてくれる。
世界で一番美しいと、私に囁きかけて、うっとりと見つめる。
少しずつ暖かくなるこの季節は、とても気分がいい。
太陽の光が気持ち良くて、少しずつ日暮れが遅くなる。
あなたは今日も私のそばで跪いて、私の身の回りの世話をしてくれる。
私が少しでも美しくいられるよう。
手が汚れることも惜しまず、一心不乱に私だけを見つめてくれる。
あなたが時たま、知らない人に私を見せびらかすのはあまり好きではないけれど、あなたが誇らしげだからいつも許してあげる。
あなたのその顔を見ると私まで胸を張りたいような温かい気持ちになれるから。
私は口がきけないから、あなたに話しかけることはできない。
でもあなたの愛を感じるほど私は美しくなるから、きっとあなたにも伝わってると信じてる。
あなたと過ごす時間は穏やかで優しかった。
幸せだった。
あなたに触れられることが好きだった。
微笑んで世話をされることが楽しかった。
ずっと一緒にいたいとすら、思った。
でも私は、もうすぐ消えてしまう。
それは、あなたも私も知っていた。
むしろあなたが甲斐甲斐しく私の世話を焼くのは、私が消えるからなのかもしれない。
そう思うとやっぱり寂しくてたまらないけれど、仕方のないことだともわかってる。
あなたが美しいと褒めるこの体はとても弱くて、この国の夏の暑さにはきっと耐えられない。
夏の前に、私の命は消えてしまうだろう。




