03話:仲間になりたそうに......
「過去に戻された?俺を馬鹿にしてるのか?そんなこと起こるわけがない」
「なら、後ろに鏡を用意したから自分の姿を確認してみなよ。きっと君にもここが過去だということがすぐにでも理解出来るはずさ」
そういった魔王は俺に後ろを向くように促した。
「どうしたんだい?」
「いや、魔王が目の前にいるのに後ろを振り向くのもどうかと思ってな……」
俺はバツが悪くなり、そう答える。
「ふふっ」
それがよほど俺に似合わないとでも思ったのか、吹き出す魔王。
「少しは信用して欲しいな?君がここにいる時点でそれに足るだけのことはしているつもりだよ?」
「まあ、お前に殺す気があるなら、俺は気絶している間に殺されただろうし……」
後ろを振り向くとそこには同じ姿、同じ鎧を着ているにもかかわらず、顔だけが少しだけ若く見える俺がいた。
「え!?若返ったの!?まじで!?まじで過去に戻ったのかよ!?」
「……信じてなかったんだ」
後ろから魔王の悲しそうな声が聞こえてくるが、無視!
頬をつねってみたり、するが痛い。
「夢じゃないみたいだな。うん、お前を信じよう!」
「……」
「なんだ」
「君、勇者じゃん?僕、魔王だよ?無視しないでよ」
「分かった、分かったから泣くな」
何故か泣き出しそうになっている魔王を慰める勇者。おかしな構図が出来上がる。
少しして泣き止んだ魔王。
「もう、無視しない?」
「ああ、しないさ」
「本当に?」
「もちろん!」
「本当の本当に?」
「ああ!」
《魔王ルナが仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしてあげますか?》
《はい/いいえ》
「おう、いいぞ!」
《魔王ルナが仲間になった!》
「……って!おい!どういうことだ!」
俺が魔王に怒鳴り声をあげると、
「どうもこうも、君が仲間に入れてくれたんじゃないか!」
魔王はそんなことを言いながら抱きついてきた!
「さあ、パーティーを確認してみなよ。僕がいるはずだ!経験値なんかも共有できるよ!やったね!」
この世界のコモンスキルで誰にでも使える魔法《パーティー編成》を開くと、
「いや、なんだよこれ!パーティーから外せない!」
「魔王からは逃げられないんだよ!諦めて僕と冒険の旅に出かけよう!」
勇者に抱きつきながらそんなことを言う魔王がここにいた。