02話:過去へ
ひんやりとした、それでいて固い感触の何かが頭を打つ。
「っ!」
白い……大理石で作られた床の上に俺は寝転がらされていた。
そして、明るくて眩しい太陽の光が天井から差し込んで来ている。
「ようやく起きたみたいね!勇者ソラ!」
そこで俺に声をかけてくる者がいた。だがその女を見て、俺は言葉を失った。
「なにがなんだか分からないかもしれないけれど、まずは自己紹介をさせて貰うわ」
長い黒髪に、漆黒の剣。勇者と相反する、もう1人の絶対強者。
「私は魔王!魔王ルナ・メーセ!よろしくね」
滅ぼしたはずの魔王がそこにいた。
「あれ?思ったより反応が薄いね。魔王とか言ったら大抵の人は驚いてくれるんだけど」
名乗りを上げたのに、俺からの反応が薄いことに不満を言う魔王。
「今更、『私が魔王です』なんて言われても『知ってる』としか答えようがないし、俺にどんな反応を期待してたんだ?」
仕方が無いのでそう返すと、魔王は血相を変えて、
「もしかして記憶残ってるの?」
と聞いてきた。
「それはどういう意味だ?」
「今日の日付は?」
「トーリャ歴2017年X月X日」
そう返すと魔王は、うんうん。と頷いてから、なにかに納得したような顔をした。しかし、俺には聞かなければいけない事があったので聞かせてもらおう。
「……助けてくれたことには感謝するが、なんでお前が生きてるのか、王国兵共はどうなったのかとか、そういったことを教えて貰ってもいいか?」
「その質問には答えられないんだ。だって僕は斬られただろう?他ならぬ君の手で」
「話が読めないな?お前は俺に殺されたのに、ここにいるじゃないか。幽霊だとでも?」
「少し違うかな?確かに私は君の手で殺されたんだけど……そうだね、簡単に纏めると僕らは過去に戻されたんだ。君がこの世界に呼ばれた、その瞬間までね」