表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

01話:空に浮かぶ月

新連載スタートです!

俺は勇者()()()


異世界に召喚され魔王討伐の旅に出て、それで悪しき魔王を倒す。まるで夢のような冒険譚。人々を守り、救う、希望。それが俺だった。そのはずだった。


物語に出てくる勇者は、仲間と信頼を築き上げ、四天王を討伐し、魔王をも打ち倒し、世界を救う。俺も同じようにした。ついに魔王を討伐し、世界を救った。


でも、俺は物語の主人公じゃない。『魔王を倒しました。めでたし、めでたし』で人生が終わるわけではなかった。


続きがあった。目を覆いたくなるような地獄が、俺を待っていた。


裏切りだ。


「本当に俺のことを殺したくて仕方がないみたいだな」


後ろからは追手が迫ってきている。魔王を倒すことにできる勇者なんて言う存在は王にとって、脅威でしかなく、国民にとっては、人外の化け物でしかなかったらしい。


命を懸けて、守ろうとしたもの。そんなものはもはや幻影でしかなかった。


戦い、傷つき、そして手に入れられたはずのもの。それも結局は幻に過ぎなかった。ともに戦った友を斬り、信頼を築き上げていたはずの仲間も手にかけた。


『なぜ!』と叫んだ!


『殺したくなんてない』と泣いた!


でも殺さなければ、殺された。奪わなければ、奪われた。


結局のところ俺は、彼らにとって勇者という名の『駒』でしかなかったのだと、裏切られてようやく悟った。暗い、とても暗い、月の光だけが頼りな真っ暗な夜に俺は一人森の中を駆け抜ける。着いたのは断崖絶壁、後ろからは追手の声。俺は月を見上げた。


「こんな、こんな地獄が待ってるなら、あんたに殺されたほうがまだ、よかったのかもしれないな。だって、あんたの国は……みんなあんたのことを信じてた」


王への思いを残し、散っていった強敵たちのことを思い出し、彼に俺は少しだけ妬いてしまった。


自分でその全てを奪っておきながら、都合のいいことだと思いながら俺は一歩前に踏み出した。全身を包む浮遊感。


そして、俺は月明かりに照らされながら目を閉じた。流れ出す血とともに意識がゆっくりと消えていくのを感じていた。

2019/10/06 一部表現を追加いたしました


ⓒ 2019 LAZURITE@11252

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくれてありがとう!
他にもこんな小説やってます!


ラズライト
 中~長編作品集



短編も投稿しています。


ラズライト
短編集


時間がある時
読んでもらえると嬉しいです!!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ