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Episode3…レトルト

「アグネス、これからどうするんだ?」


一緒に寝ていた一件は治まり、何故俺の上で寝ていたのかはあえて触れなかった。


「さぁ」


可愛げのあるその可憐な少女は見た目と裏腹にお口が悪い。


親近感を抱いたわけでもないのにやけに馴れ馴れしい。


本当に奴隷であったのか、少し怪しい。


が、あの表情を見るからに嘘っぽさは感じれなかった。


「取り敢えず行き宛が見つかるまで俺の部屋においてやる」


決して下心あっての発言ではない。


決して。


「いいの?」


潤んだ瞳がまた純情な男の恋心を擽る。


否、俺には恋愛感情など皆無と言ってもいいだろう。


今までの生涯恋に落ちたことなどない、これからもな。


別に、女の子に興味がないとかそういうのではない。


ただ理想の女子がいなかった。


それだけの事だ。


「あぁ、だがまた俺の上乗っかってくんなよ。 色々誤解が生じるから」


念入りに忠告しておく。


マナミのあのゴミを見るような顔は、俺の心が保たない。


「いけないの?」


「…………」


まさかの返答が返ってきて対応に困る。


え? 今いけないの?って言ったのか?


いやいや、こんな美少女に限ってそんな下心揺する発言はしないだろう。


きっと聞き間違いだ。


そうに違いない。


「今、なんて?」


「一緒に寝たらいけないの?」


うん。


聞き間違いではございませんでした。


いやいや、なんで。


まさかこの子俺にしちゃってる?


恋しちゃってるの?


待て待て、落ち着け俺。


寒いから一緒の布団で寝て暖まろうて魂胆だろう。


……って俺は変態か!


「ななな、何の為に?」


「だって寒いじゃん」


俺の憶測はある意味的中した。


だがここで俺が了承を出すと間違いなくロリコンリーダー行きだ。


だが確かに棺桶は寒そうである。


悩みに悩んだ。


そして俺が選んだ結果。


それは……


「ベッド交換してくれてありがとね!」


厄介な正義感で寝床を交換してしまった。


寒い、無茶苦茶寒い。


こんなんでよくあんな爆睡できたな。


棺桶コレであんなに爆睡できるんだったらベッドとか死ぬんじゃね。


阿保な妄想を膨らませている内にアグネスは夢の国へ旅立っていた。


寝顔はとても可愛い。


なんだかいい匂いもする。


だが、


「グワァーー」


コレが無ければ好きになっていたかも知れない、割と本気で。


コレが無ければ……






「アグネス、取り敢えず一緒にクエストを受けないか?」


唐突に問われ、へ?っと首を傾げた。


実際のところ、アグネスが戦闘に向いているのかを確かめてみたいのだ。


同じプレイヤーなら戦略考慮くらいは可能だろう。


連携なども取れたら戦いに不利はないだろう。


俺は質も大切だが数で押す派だからな。


ステータスを見せて貰った感じだと家政婦スキル以外の数値は俺らと変わらない。


つまり戦闘技術さえあれば俺らと同じ土俵に登れるかもしれない。


まぁ、可能性はゼロではないだろう。


その為にもまずは基礎から教えていこう。


「行き宛もまだ決まらないだろうから、俺らとモンスター討伐なんかしてみないか?」


少し考え込む仕草を見せたが、


「わかった。 でも私空気だから」


そこまでハッキリ断言されるとフォローができない。






「マナミ、左に回った! チヒロそのまま攻撃を耐えて! ポアル、アリサ、チヒロの回復を始めて!」


「「「「了解!」」」」


華麗な連携と立ち回りでゴブリンを討伐していく。


俺らは、倉山さんが敗北したキングゴブリンを討伐しに来ている。


いい練習代になるかと挑んだのだが普通のゴブリンですら激戦だ。


ゴブリンの攻撃は大体チヒロのHPを一撃で15%程削る。


ポアルとアリサの支援回復魔法でギリギリ耐えれるくらいだ。


倉山さんが言ってたようにキングゴブリンの一撃なんか即死だろう。


が、ここで引くわけにはいかない。


「アグネス、教えたこと生かしてアレを倒して!」


指を指し示す先には一匹の子供ゴブリン。


子供ゴブリンは全てにおいて最弱に等しいと言える。


駆け出し冒険者でも素手で勝てるだろう。


そんな敵なら流石のアグネスでも楽勝だろう。


「【氷隕石アイスメテオ】」


そう告げるとアグネスは大きく腕を振り下ろした。


矢先、空から何か見えてくる。


ボンヤリと何だろうか。


氷?


空から無数の氷の塊がゴブリン目掛けて降り注ぐ。


激しい爆音と共に、そこにいたゴブリンの姿はなく、大きなクレーターができていた。


……レジェンドスキル?


八ヶ月ゲームをプレイしていたが今の技は初見であった。


自分だけが所有できるスキル、レジェンドスキルに間違いないだろう。


だが、だとしたらなぜ奴隷だったから戦闘する機会などなかった筈のアグネスがレジェンドスキルを所有しているのであろうか。


それに、ベータ版の時から閉じ込められているとも言っていた。


つまり、運営側との人との関わりはない筈。


だとしたらなぜ。


「すごいです! 何故あなたがレジェンドスキルを?!」


初見の技に興奮したアリサが食いついてくる。


アリサは見たことのない魔法などを見ると興奮して自分も得ようとする癖がある。


アリサは基本珍しいスキルしか得ていないから戦闘で生かせるかと聞かれると何も言えない。


今は、支援用の回復魔法と【獄炎ヘルファイアー】というヒットポイントほぼ全て持ってかれる代償に相応の威力をもった炎を発射するという使い道があまり見つからない魔法を得ているらしい。


対し、ポアルは基礎代表と言ってもいいくらい、珍しくも大して強くもない魔法を数々覚えている。


戦略考慮を考えるとポアルの方が役に立つ。


ゴリ押しでやるならアリサがポアルを上回るだろう。


そんな魔法馬鹿のアリサが食いついたという事はアリサも初見なのだろう。


「なぜかログインした時から得ていたの」


成程。


下手くそな説明ご苦労様です。


「僕もさっきの魔法、気になるな」


更に魔法マニアが増える。


魔術師はめんどくさい奴しかいないのだろうか。


まぁ、魔法はともかくレジェンドスキルを得ている事には興味はある。


俺はレジェンドスキルと錬金術には目がないのである。


今までも多々見てきたがアグネスのは一味違った強さを秘めている。


レベルは最小値でありながらこれ程の破壊力。


「俺にも教えてくれ」


便乗するように継いだ。


「本当にわからん」


こいつの正直で素直なところは良く評価したい。


が、曖昧でもいいから思い出せないものだろうか。


嘘でも適当な理由付けてくれれば皆この衝動を抑えられるのに……


ーー俺とアリサとポアルはその後アグネスに問い詰め過ぎ、拳骨を食らった。






結局アグネスのレジェンドスキルの事は分からずじまいだ。


理由を追跡しても限界だ。


調べても分かる事は何一つ見つからなかった。


だが、アグネスのレジェンドスキルを見物できた事によって俺は一つ分かったことがある。


アグネスの所有スキルは間違いなく俺ら同様チートだ。




「ヒーナタ、ご飯の用意が出来たよ!」


ドアの向こうからマナミの声。


すっかり俺らはこの世界に馴染んでいる。


この生活が当たり前だと思う日が来てしまうのだろうか。


そんな事を考えながら食堂へ向かった。


「…………」


台所の前に、エプロンを着用する金髪美少女。


写真に収められないのがとても惜しい……


「何してるんだ?」


「何ってご飯をつくってたのよ」


何当たり前の事聞いてんの? みたいな顔で答えるアグネスの表情に眉間に皺が寄った。


家政婦スキルというものは素晴らしい。


和食とは日本らしい。


以前食べたマナミの料理の倍は美味しい!


美少女の手作りご飯。


いや、オッサンの手作りご飯だな。


味は絶品である。




ーーだが俺は見てしまった。


「ごちそうさん!」


食器を片付けようと台所へ向かう途中。


[おいしくて簡単和食パック]






レトルトかよ……

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