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第九十七話 ギャップ

流と薫はとりあえずお互いのことを知るために商店街にある喫茶店に腰を下ろした。

それぞれ注文をし、気持ちを落ち着ける。

「洋平も言い出しっぺだったら相談に乗ってやればいいのにな」

流が文句を言うと薫は苦笑を浮かべながら「そうですね」と呟く。

「でもしょうがないんじゃないですか?用事があるみたいだったし」

「いや、あれは完全に俺に押しつけたな。俺にはわかる」

流は自信ありげに頷いている。

「………やっぱり、なんか悪いですね、俺。押しつけてるみたいで」

「ああ、そのことだけどな」

申し訳なさそうに呟く薫に対し、流が忘れていたと言わんばかりに身を乗り出す。

「実はお前の恋愛を成就させれば俺にも特典がくるんだ」

「はい?」

「だから、気にしなくて良いぞ。俺は俺の意志でやってるんだから」

「そう……ですか」

一応納得したのか薫はゆっくりと頷いた。

その体躯と内面のギャップに流は再び違和感を覚え、がっくりとうなだれる。

「あの、先輩」

「ん?」

薫の呼びかけられ、流が頭を上げる。

「先輩って俺と話してるとたまにそうなりますけど、なんか意味があるんですか?」

当の本人はやはり気づいていない様子でそんなことを尋ねてくる。

「ああ。実は激しいツンデレ現象に陥っててな」

「は?」

「いや、ツンデレってさ、こう……気の強そうな女の子が照れながら何かしてくれるって言うさ、そう言うギャップがあるから良いんじゃないか」

「いや、じゃないかと言われましても……」

「それと似たような現象が起こってひどく萎えてるんだ」

言いながらぐで〜っと机に突っ伏す流。

「あの、すいません。もう少し分かりやすく言ってもらえます?」

意味が分からずに薫が尋ねてくる。

「………簡単に言うと、ちゃんと不良言葉で喋れってことだ」

「ちゃんと………ですか?」

流の提案に薫は思わず苦笑いを浮かべる。

「ああ、ちゃんとだ」

「何でですか?」

「いや、だからそのギャップだよ。お前って不良なんだろ?」

「ええ……まあ」

その質問には薫は躊躇いがちに頷いた。

『不良だろ』などとは訊かれたことがなかったので答え辛いのだろう。

「なんか……不良に敬語使われるって、俺がお前より格上の存在みたいじゃないか?」

「え?格上じゃないですか。先輩なんだから」

「いや、まあ確かにそうなんだけどさ………ああ、もう!!どうでもいい!」

言いながらプイっと子供のように顔を背ける。

それを見て薫は再び苦笑。

「でも、川瀬先輩って聞いてたより全然違う人なんですよね」

「え?」

流が顔を再び薫の方に戻す。

「もっと恐い人だって聞いてたんですけど……」

「恐い……?」

その言葉を聞いて流が眉をひそめる。

「なあ、薫。その情報ってどっから仕入れた?」

「え?……友達ですけど」

「その友達って?もしかして不良仲間?」

「?……はい。そうですけど」

薫の反応を見て流が納得したように頷き、ため息をつきながら首を垂れた。

「どうしたんですか?」

薫が尋ねると流はその状態のまま首を振った。

「なんでもない……まあ、いいや。それは置いといてだな」

言いながら流は顔を上げる。

「とりあえず、お前の恋愛成就の作戦を立てるぞ」

流は居住まいを正し、真剣な表情で薫を見た。


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