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第七十五話 光景

一時限目が終わり、流は疲れた様子で机に突っ伏した。

そして顔だけ横に向けて窓の外に目をやる。

(そう言えば、今日明いなかったな……)

普段、毎日のように顔を合わしているため、会わないと調子が狂う。

しばらくそうしていると、目の前に制服のズボンが現れた。

「スカートじゃない……」

「まあ、そう言うなよ」

流が悲しそうに呟くと、目の前に立つ洋平が苦笑しながらそう返す。

「そんなことよりもよ……たまにはどうだ?」

そう言いながら洋平は教室のドアを指さした。

流にはその洋平の行動に見覚えがある。

「サボリか……?」

「ああ」

笑顔でうなずく洋平。

ため息をついて流は立ち上がった。

「ちょうど調子が狂っていたところだ。付き合おう」

「そうこなくっちゃな」

二人が歩きだそうとすると、流は誰かに腕を捕まれた。

「どこへ行くんだ、流。もうすぐ授業が始まるぞ」

腕を掴んでいるのはヨウ。

明らかに流を疑っている目をしている。

流と洋平は互いに目配せし、とぼけた表情をする。

「なんだ、ヨウ。お前知らないのか?次は外だぞ」

「え?そうなのか?」

「ああ。そうだ」

ヨウが洋平に確認をとると、洋平はもちろん頷いた。

「周りを見てみろ。移動してるだろ?」

言われて、見てみると確かに皆教室から出ていっている。

ちなみに皆が出ていっているのはただの移動教室だ。

しかしヨウは世間知らず。

つまりこういうことに関してはすぐに騙されてしまうのだ。

「そうか。ならば早くいこう。遅れるぞ」

「ああ」

「おう」

ヨウが歩き出すと、流と洋平は互いに目で合図し、その後を追った。



「お前等を信じたのが間違いだった……」

授業開始のチャイムが遠くから聞こえてくる中でヨウがうなだれながら呟いた。

「まあ、そう落ち込むなって」

「そうそう。間違いは誰にでもある」

「間違えさせたのはお前たちだーっ!」

暴れ出さないようにヨウの両手を二人掛かりで押さえる流と洋平。

「放せっ!と言うよりも戻るぞ、今からでも」

「何言ってんだよ。もう手遅れだ」

「そんなわけがないだろう!」

「いや、それが本当なんだ。ヨウ」

真剣な表情で流が呟く。

「実はうちの学校では一度遅刻したらその日は欠席扱いになるんだ……」

深刻そうに首を振りながら流が告げる。

もちろん嘘だ。

「そう言うことだ。俺達と一緒に来い。一日くらい休んだって気にする必要はないぜ」

「………くそっ!それしかないのか………」

ヨウが嘆いている間に再び、流と洋平で目で合図を送る。

「さあ、行こうぜ」

「行くぞ、ヨウ」

「……………」

しばらくジッと二人をにらんだ後

「……仕方ない。行こう………」

と言ってヨウはとぼとぼと歩きだした。


「やはり……あまり気持ちの良いものではないな」

「そうか?俺は気持ちよかったぞ」

「俺も」

ヨウが呟くと流と洋平は平気そうな表情で返答した。

三人は今、商店街で少し時間を潰して再び学校の方に歩いて行っている。

もちろん、次の授業を受けるためだ。

ヨウは先程言ったことを忘れてしまっているらしく、特にそのことを気にした様子もない。

「お前等な……ん?」

呆れたようにヨウは大きなため息をついて遠くを見ると、何かに気づいたのか、その状態のまま固まった。

「?……どうした?」

「いや、あれなんだろうな」

流が尋ねると、ヨウが少し遠くの方を見て指さしながら呟く。

ヨウが指さしたところには人だかりが出来ていて、さらに救急車まで止まっている。

「洋平、分かるか?」

「何で俺が分かるんだよ。俺は超能力者か何かか?」

「ああ」

「『ああ』、じゃねえよ。そんな訳ねえだろうが」

「おい、二人とも。そんな事していないで見に行った方が早いんじゃないのか?」

二人のやりとりを中断させ、ヨウは人だかりの方に歩いていった。

洋平と流もその後を追う。

「すいません、何があったんですか?」

流が向こうの方から歩いてくる人を捕まえてに尋ねる。

「え?ああ、何か人がはねられたらしいよ。あのトラックに」

そう言ってその人が少し離れたところにある大きなトラックを指さした。

「何でも女の子だそうで、かなり重傷みたいだよ………って、君たち、蔵町高校の生徒さんか?」

「ああ、そうだけど」

洋平が答える。

何となく雰囲気で嫌な感じが伝わってくる。

「事故にあったのは君たちの学校の生徒さんだよ」

それを聞いた途端、流は救急車の方に走って入っていった。

「流っ!」「おいっ!」

ヨウと洋平が同時に叫ぶが、流は足を止めない。

舌打ちをし、洋平が後を追いかけるのを見てヨウもその後を追った。

救急車の周りにいる多くの人の中に流が立っている。

洋平とヨウはその隣に立ち、救急車の方に目を向けた。

「あ………」

と、目の前に広がる光景を見てヨウは思わず声を漏らしてしまう。

そこで見たのは救急車にかつぎ込まれる明の姿だった。


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