第六十八話 部活
学校が終わり、放課後。
流とヨウはHRがいつもより早く終わったので、少し早い帰宅となっていた。
「なあ、ヨウ。お前って部活とかには入らないのか?」
「部活……?」
不思議そうに首を傾げるヨウ。
「………お前、まさか部活も知らないとか?」
「ああ。知らない」
ヨウのその言葉を聞いてがっくりとうなだれる流。
そんな流を見てヨウが眉をひそめている。
「何だ、いきなり。……それよりも『部活』とは何なんだ?」
「分かった。恐ろしいまでに世間知らずなお前に分かりやす〜く説明してやろう」
「何だかすごく気に障る言い方だな」
ヨウが不機嫌そうな顔をするものの流は気にせずに話を続ける。
「部活ってのは、学校の放課後とかにやる…………まあ、そうだな。簡単に言えば趣味みたいなもんだ。たとえばバスケとか、サッカーとかな」
「趣味?」
「ああ。それをそれぞれ好きな奴らが集まってやる活動だ」
「なるほど」
納得したように頷くヨウ。
「お前は何か入っていないのか?」
気づいたようにヨウが流に尋ねる。
「いや、俺は入っていない。俺はほとんど一人暮らしみたいなもんだからな。家事とかもしなきゃいけないんだ」
「そうか………」
少しの間考えた後、ヨウは決心したように顔を上げた。
「だったら私も入らない」
「何でだ?」
「宿主であるお前が家事で忙しいのに、居候のみである私がそんなところのんきに部活などやっていたら悪いだろう?」
「いや、気にしないでいいぞ」
「気にする………と言うよりも私が嫌なんだ」
ヨウのその言葉を聞いて、流は微笑むと
「そうか。分かった。じゃあ、そうしてくれ」
と言ってヨウの頭をなで始めた。
「よしよし。良い子、良い子」
しかし、すぐにその手を払いのけられてしまう。
「人の頭に手を乗せるな!」
「……………」
流は一瞬驚いた表情をしたものの、すぐに表情を一変させてニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
「お前、またよからぬ事を企んでいるだろう?」
「当たり前だ、うりゃっ!」
鞄を地面においてから流はヨウにしがみつき、頭を撫で始めた。
「っと………!……だから、何でお前はそうやって人の嫌がることをするんだっ!」
流の腕を取り、前に体重をかけながら流を投げる。
いわゆる一本背負いという奴だ。
「ぐはっ!」
流は背中から地面に落ち、悲痛な声を上げる。
それを身ながらヨウは地面においてあった流の鞄を拾い上げそれを流の方に放った。
「ぐふっ!」
それはちょうど流の腹の上に落ち、流の口からは再び悲痛な声が漏れた。
「全く………お前が変なことをするからだ」
そう言いながらヨウは倒れている流に手を差し伸べる。
流もその手を握ろうとして途中で何かに気づいたように手を止めた。
「?……どうした?」
「いや、今日は『白』か、と思ってな」
「?」
頭に疑問符を浮かべるヨウ。
少し間をおいてヨウはようやく気づいたのか慌てて後ろに下がった。
顔を赤らめてスカートを押さえている。
「流、お前は余程死にたいらしいな」
「いや、待てっ!今のはお前にも非がぁっ………!」
必死に叫んだものの、流の声は途中で途切れた。