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第六話 不意打ち

B組の前にはやたらと男子生徒が多い。

友人と話している者、窓の外を眺めている者、誰かを呼んでいる者と、していることは様々であるがその大半は視線を教室の中へと向けていた。

大方、他のクラスから編入生を見に来ているのだろう。

「はあ……」

呆れたように小さなため息をつく流。

そしてゆっくりとB組の中へ入って行った。

「おわっと!」

教室に入る途中、流が誰かとぶつかる。

少しバランスを崩した流だったが、ぶつかった相手は衝撃で尻餅をついていた。

「大丈夫か?……って何だ、明か」

目の前で尻餅をついている人物、それは朝に流が抱きついていた少女、河野明こうのあきらだった。

「ぶつかっておいて何だは無いだろ!」

「あ、いや……まあ、そうだな」

そう言いながら明を助け起こす。

そして

「ありがとう」

と、流はにっこりと微笑みながら言った。

「………は?」

明が頭に疑問符を浮かべる。

謝罪の言葉が返ってくると思いきや、御礼を言われたのだ。

当然の反応だろう。

「いや、だってパンツ見せてくれたからさ。これは御礼言っておかなくちゃって思ってな」

「えっ!?あ…なっ……!?」

顔を赤らめながら慌ててスカートを抑える明。

おそらく転んだときにでも見えたのだろう。

流はそれを見て楽しむように笑っている。

しばらくしてようやく明が落ち着いてきたのか、表情が怒りに満ちてきた。

「流……」

明が静かに呟く。

「ん?」

そう言って流が顔を寄せた瞬間、その顔面にストレートパンチが決まった。

「がふっ!!」

妙な声をあげて床に倒れこむ流。

それを冷たい視線で明が見下ろす。

「少しは反省しとけっ!」

そう吐き捨てるように言うと明はそのまま教室を出て行った。

そして少ししてから流はゆっくりと体を体を起こした。

「いてて……」

鼻を抑えながら起き上がる流。

その時はもうすでに皆の注目の的になっていた。

「………出直すか」

さすがにこれだけ注目された中でナンパするのは困難だと判断したのか、流は立ち上がるとそのまま教室の出口に向かった。

「あの……」

しかし後ろから声がし、思わず足をとめる。

そして鼻血をたらしたままの顔で振り返る。

目の前にいるのは腰の辺りまで髪を伸ばした少女。

街中ですれ違ったら足をとめて振り返ってしまいそうなほど可愛い容姿をしている。

「鼻血、拭いたほうがいいよ」

そう言って差し出された手には綺麗な花柄のハンカチが握られていた。

「あ……ああ、サンキュ」

少し戸惑いながらもそれを受け取る流。

不意に話し掛けられたため動揺しているのか、流は先程渡されたハンカチをじっと見ている。

しばらくそうしていると、目の前にいる少女が口を開いた。

「私、桜葉沙織さくらばさおり。今年から編入してきたの。気が向いたらで良いから気軽に話し掛けてね」

沙織はそれだけ言うと流に背を向けて、女子が固まっているところに入っていった。

「………」

無言のまま立ち尽くす流。

自分が話し掛けようとしていた女の子に逆に話し掛けられ、さらにこちらからは大したことは言えなかった。

完璧に不意打ちを食らった感じである。

そんなことを考えていると不意にチャイムが鳴り、流は大きなため息を一つついて自分の教室に戻っていった。


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