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第五十四話 プレゼント

日は傾きはじめ、辺りは全体的にオレンジ色に染まってきた。

そんな中、流と明がカラオケ店から出てくる。

「いやぁ、やっぱりカラオケは良いなあ」

満足げに伸びをしながら流が明に話しかける。

「まあな。だいぶストレス発散も出来たしな」

「?…おまえにストレスなんてあったのか?」

意外そうに尋ねる流。

それを見て明は呆れた表情で流を見つめた。

「どうした?俺に惚れたか?」

「何でだよ!今の私の行動にそんな雰囲気があったか?」

「ああ、目を潤ませながら俺のことをじっと見てた」

「潤ませてないだろ!呆れてたんだ、お前を見て!」

「………何で?」

「何でじゃない!明らかに私のストレスの原因になっているのはお前だろ!」

「なっ!?」

たじろぐ流。

しばし明を見つめた後、

「またまたぁ、明は冗談がうまいな」

「いやいや、私は真剣だからな」

「…………」

「…………」

二人とも沈黙。

「あっはっはっはっ」

突然笑い出す流。

「少しは真剣に受け取れ!」

そう言って流のわき腹に拳をねじ込む。

笑いながら流はそのねじ込まれた部分を手で押さえた。

「分かった分かった」

流がなだめるようにそう言いながら明の肩を叩く。

「それじゃあ、お詫びに何か買ってやるよ」

「えっ、あ…いや、別にそんなつもりで言った訳じゃ……」

突然素直になった流に明が少なからず動揺する。

「良いんだよ。お前の好感度が上がるならば、俺はそれで十分だ」

「………そう言う魂胆か」

「いや、俺はただ明にプレゼントをしたいだけさ」

「もう本音聞いたから嘘は止めとけ」

「チッ!」

舌打ちをして流は明の周りを一周、ぐるりと回った。

そして明の顔を見ながら真剣の表情で口を開いた。

「お前……」

「ん?どうした?」

「洒落っ気ないなぁ」

「ほっとけ!」

怒ったように顔を背ける明。

そんな明を見て流は何かを納得したように大きく頷いた。

「よしっ、決めた」

「何が?」

「明へのプレゼント」

「私に相談もなく決めたのか?」

「ああ。これは自信がある」

相当自信があるのか、流はそう言って自分の胸を叩いた。

「ズバリ!………リボン!」

「……………は?」

しばらくの沈黙の後、明はその一言だけ口に出した。

「リボンだよ、リボン!お前洒落っ気ないからリボンを買ってやるって言ってるんだ」

「………勘弁してくれ。とてもじゃないが、柄じゃない」

「そんなのやってみなけりゃ分からないだろ?」

「分かる。そんな物付けて学校行ったら笑いもんになる……」

「いや、みんなが明の可愛さに気づくんじゃないのか。それに今は付けたくなくてもそのうち好きな人でも出来たときに付けたくなるさ」

「……それはないな」

少し考えた後に断定するように明が首を振った。

そんな明を見て流が嫌らしい笑みを浮かべる。

「何だよ」

「いや、何でもない」

わざとらしく話を切る流。

「ま、付けても付けなくてもどっちでもいいさ。とりあえず俺から明へのプレゼントだ」

そう言うと流は明の手を取って再び先行しだした。

明も一瞬反論しようかためらったものの、これ以上は無駄だと悟ったのか小さくため息をつくと流に引かれるまま歩きだした。

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