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第五十一話 待ち合わせ

商店街の奇怪なオブジェ。

何をイメージして作ったのか、とにかく意味不明なオブジェだ。

それは商店街の中心にあり、よく待ち合わせ場所として使われることが多い。

それは流たちも例外ではない。

奇怪なオブジェの下、河野明は時計を気にしながら一人そのオブジェに寄りかかっていた。

服装は少々短めのスカートに少し明るめのシャツを着ている。

そして先ほどまで着ていたのか、薄い上着を腰に巻いている。

明らしい、活発そうな格好だ。

「よっ、おまたせ」

横から軽い声が聞こえてきた。

明は横に立つ者に視線を向ける。

そこにいたのはやはり私服姿の川瀬流だった。

「遅いぞ。流」

小さいため息をついてから明が不機嫌そうに呟いた。

「あれ?時間ぴったりのはずだろ?」

流が自分の腕時計をみて確かめる。

「いや、確かに時間ぴったりなんだけどな。こういうのは早めに来るもんだろ?」

「こういうのって?」

流がすかさず尋ねる。

それはもちろん目的あってのこと。

「いや、だから………」

妙にどもる明を流が楽しそうに笑いながら見つめる。

「デート、だろ?」

少し顔を赤らめながら明が呟く。

あまり恋愛経験のない明にとって『デート』という言葉には少し抵抗があるようだ。

「んおー!やっぱり明は可愛いなあ!」

そう言うと同時に流が明の腰に抱きつく。

「なっ、おい、やめろ!こらっ」

明は慌てて流を引きはがした。

はがされた流は特に恥じらう様子もなく笑っている。

「いやぁ、やっぱデートっていいなぁ!」

「今回だけだからな!」

怒ったように呟く明。

そんな明の顔を流がのぞき込む。

「……何だよ」

「いや。やっぱり明っていい奴だなって思ってさ」

「何だよ、いきなり」

突然の誉め言葉に戸惑う明。

「だってあの時のこと、きちんと約束として受け取ってくれたじゃないか」

「………まあな」

『あの時のこと』とは四月の入学式の朝の時のことである。

そのときに意識の朦朧とした明が自分で言った言葉を覚えていたのだ。

「約束はちゃんと守らないと気が済まないんだ」

「そうか」

真剣な表情で言う明を見て流は含み笑いを漏らすと明の手を握った。

「なっ!?」

慌てて引き離そうとする明だが流の力の方が勝っているのか、離れない。

「おいっ、放せ流!」

「いやだ。せっかくのデートなんだ。ここで明の好感度を上げとかないとな」

「馬鹿なこと言ってないで放せ!と言うか、これは好感度下がる!絶対下がる!」

嫌がる明の手を無理矢理引いて移動する流。

もちろん嫌がる女の子の手を無理矢理引いているとなれば視線は自然と集まってくる。

しかしどちらかと言えば仲のいい二人がじゃれあっている風に見えるのだが。

集まる視線の中、流と明は手を繋いで…というよりも流が無理矢理明の手を握って商店街を歩いていった。

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