第四十一話 暇
いつものように流に起こされ、流の見送りをするヨウ。
そして誰もいない玄関に一人たたずむ。
今日は流の学校は授業が午後まである。
つまり午後までヨウは一人だ。
午前だけの授業の場合、すぐに流が帰ってきて暇を持て余すことは無かった。
しかしそれが午後までとなると流が帰ってくるまで大分時間が空いてしまう。
「……さて、どうしたものか」
ヨウは一人呟き、とりあえずソファに腰を落ち着けた。
いつもならばここからもう一度布団に入り、眠ってしまうところなのだが、今日に限って目が覚めてしまっているようだ。
そうなるともう布団は不要になる。
「仕方ない。上げるか」
ヨウはソファから立ち上がると自分の部屋に戻って布団を畳みだした。
そしてたたみ終えてしまうとまた暇になる。
「……よしっ、いつもは私が世話になっているからな。たまには恩返しも悪くないだろう」
一人呟き納得すると、ヨウはソファから立ち上がった。
そして洗濯、掃除、皿洗いなどをこなしていく。
これが意外とおもしろいのか、ヨウはいつの間にか家事に没頭していた。
気がつくとすでに時計の針は二時を指している。
家事に夢中になりすぎていたためか、まだ昼食をとっていない。
「ふう……」
小さくため息をつくとヨウは自分の部屋に足を進めた。
特に簡単に作れそうなものはない。
そして料理は流に禁止されている。
つまり、外で食べるしかヨウに昼食をとる方法はないのだ。
仕方なくヨウは着替えをするため、自分の部屋へ向かった。
商店街は相変わらずの賑わい。
今は主婦などが多いが、これが夕方になると学生で賑わう。
時間は2時30分。
今から昼食をとる者なんてなかなかいないだろう。
「よう」
何を食べるか悩みながら歩いているヨウに突然話しかけている者がいた。
ヨウがそちらに顔を向けるとコロッケ屋の細川拓也が面倒くさそうに手を挙げている。
ヨウもそれに頭を下げて答える。
「今日は流の学校は午後まであるのか?」
辺りに流が居ないことを確認してから拓也がヨウに訪ねる。
「あ…はい。だから、今昼食をとろうと……」
一度話したことがあるためか、ヨウは初めての時よりも幾分話しやすそうだ。
「今昼食か?」
「はい」
「そうか。だったら腹減ってるだろ」
そう言ってケースウィンドウの中から何かを取りだし、それを紙で包むとヨウに向かって投げた。
「……!」
驚きつつもそれを手で受け取るヨウ。
中を見てみるとまだ暖かそうなコロッケが入っていた。
「おやつだ。もってけ」
「え?」
「まだ昼飯食ってないんだろ?だったらそれ食っといた方がいいぞ。じゃないと腹減ったまま店にはいると頼みすぎて後悔するからな」
「いや、だけど……」
「なんだ?遠慮してるのか?心配いらねえよ。こう見えても結構儲かってんだ」
「いや、だからってタダは……」
「気にすんなって。俺の常連の知り合いなんだ。それ位して当たり前だろ?」
「しかし私は最近ここにきたばかりで」
「おお!そうか。だったらお近づきの印にって奴だ。それなら納得いくだろ」
「私の言いたいことはそう言うことではなくて…」
「ったく面倒くせえな!これ以上何か言うようなら、てめえの口の中にコロッケ10個ぐらい突っ込むぞ!」
「………」
あまりの横暴さに思わず閉口してしまう。
しかし拓也はそれで満足したようで得意げな顔でヨウを見ている。
「……分かりました。頂きます」
仕方なく折れるとヨウは一度頭を下げてからコロッケを持って拓也に背を向けた。
「ああ。まあ、それだけじゃ足りないだろうからちゃんと飯も食えよ!」
嬉しそうに言う拓也をあとにし、ヨウは昼食探しを再開した。




