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第二十九話 恥じらい

「さてと……どこで買うか」

商店街の入り口で腕組みをしながら流が悩む。

格好はふつうのズボンに長袖のシャツ。

そして白い上着を羽織っている。

いかにもそこら辺にでもいそうな格好である。

そして隣を歩くのはヨウ。

前にも言った通り、ヨウの服装は簡素なものだ。

この二人を見て誰がデートだと思うだろうか。

「どこで買うかって…おまえこの町の住人だろう?だったら服やとか知らないのか?」

「…まあ、知っていると言えば知っているんだが、女物の服は売ってないと思うぞ」

「別に私は男物でもでもいいんだがな」

「何で?」

「いや、スカートとかヒラヒラしているのは昔から苦手でな……着るときはいつもズボンだ」

それを聞いて流がしばし考え込む。

ヨウがスカートをはいて恥じらっている姿……

「よしっ、女物の服を買いに行こう!」

張り切った様子で流はその場から歩きだした。

「待て!何でその答えを聞いて女物の服を買いに行くんだ?」

「何でってそりゃあ……」

流が立ち止まり、空を仰ぎ見る。

そして目を細めて

「お前のためを思ってに決まっているだろ?」

「流、お前、絶対に自分のことしか考えてないだろう?」

「そんなことないっ!俺とその他大勢の人のためだっ!」

「その大勢の中に私は入っているのか?」

「………まあ、いいじゃないか」

「おいっ!それただの嫌がらせになっているぞっ!」

「そんなはずはない!嫌がらせようなんていう気持ちは全くないぞ!俺はただ純粋にお前のスカートをはいて恥じらってる姿を見たいだけだ!」

言ってから流はあわてて自分の口を手で押さえた。

「なるほど……それは十分に嫌がらせじゃないのか」

「いや、だから俺はただお前にスカートをはかせたいだけで……」

そう言ったすぐ後に流が眉をひそめる。

「そう言えばさ、お前すごいスカートを嫌がっているみたいだけど、学校はどうするんだ?」

「え?」

「言っておくが、学校の制服はスカートだぞ」

「………よしっ、学校に行くのは無しにしよう」

少し考えた後、ヨウは顔を上げて思い立ったように言った。

「おいおい、それじゃあ、俺の『美少女と一緒に登校大作戦』ができないじゃないか」

「待て。なんだその変な名前の作戦は?」

「変とか言うな!これは俺が密かに……」

言った後で流は後悔の表情を浮かべた。

「密かに、何だ?」

ヨウが不気味な笑みを浮かべながら流に歩み寄る。

流も一歩後ずさる。

「いや……計画していたんだけど…」

「……はあ…ただでさえ気が引けるのに、何だか余計に嫌になってきた…」

大きくため息をつくとヨウはそう言ってうなだれた。

「そう言えばお前って前から学校に行くの嫌がってたよな。何でだ?」

流が尋ねるとヨウは流から視線を逸らした。

「それは……」

ヨウが躊躇いがちに呟いた瞬間、流のすぐ後ろでシャッターが開いた。


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