表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/105

第二十六話 おごり 

「よっ!」

商店街を歩いていると流は突然後ろから肩を叩かれた。

振り向くとそこには見慣れた顔、並川洋平が立っていた。

「何だ、洋平か」

「何だとは何だ。それが親友に対して言う言葉か?」

「あー、はいはい。分かりました。ごめんなさい」

「何だ?やけに元気無いじゃねぇか」

「……色々あってな」

「まあ、あれは格好つけすぎだったもんな」

「ああ……って、聞いてたのか!?」

流が焦ったように洋平の顔を見る。

「まあな。何となく嫌な予感がしたし。土手の裏側に隠れてたんだが、意外と気付かれなくてな」

「チッ……!やられたな。……で?どう思う?」

「どう思うも何も格好つけすぎだって言ってるだろ?それ以外に何もいえないって。それにあの言葉」

「言葉?」

「ああ、言葉だ。ほら、『人は一人じゃ生きていけないんだよ。……だから、俺がお前の友達になってやる』って言っただろ?あれ、むかし俺がお前に言った言葉そのまんまじゃねえか」

「そうだっけ」

もう気付いているのか、流は笑いながら洋平から視線を逸らしている。

そんな流を見て洋平は大きく呆れたようにため息をつくと、流の肩に手を置いた。

「まあ、あの言葉は女に言ったら相当効くだろうよ。それこそ告白ぐらいの威力はあるだろうな」

「マジでか?」

「ああ、マジだ。これは相当だな」

横に首を振りつつ洋平が答える。

「はあ……どうするかなあ」

「まっ、カツサンドでも奢ってやるから元気出せよ」

「本当か!」

洋平が言うや否や流はすぐに明るい顔を洋平に向けた。

「立ち直りが早いな……」

「いやあ、今お金に困っててさ。もう、居候がいるし大変なんだよ」

「?……今なんて言った?」

「へ?居候が……あっ、そうか。まだ言ってなかったか」

しまった、という風に流が自分の額を叩く。

すると、続いて洋平が流の額を叩いた。

「いって!何すんだよ!」

「いや、叩いて欲しいのかと思ってさ……」

「そんなわけ無いだろう!ジェスチャーだジャスチャー。……ったく」

流は赤くなった額を抑えながら、洋平を睨みつけている。

「悪い悪い。で?その居候って?」

「ん?ああ、水名ヨウって言ってな。歳は17才。これが料理作るのが上手いのはいいんだが、この前って言うか昨日か。大量に作りやがってさ……それで今金欠になってんだよ」

「……お前、そいつってもしかして女か?」

洋平が真剣な表情で流に尋ねる。

「え?ああ、まあ……そうだな」

「いいのか、お前は」

「あ?お前さっきから言っていることが……あっ、そういうことか。ああ、そのことに関しては大丈夫だ。俺が保証する」

「本当にいいのか?」

「ああ、大丈夫だ」

「……分かった。お前がそこまで言うんなら大丈夫だろう」

そう言うと洋平は小さなため息をついて元の表情に戻った。

「しかし女と二人屋根の下って、どんだけ良い生活してるんだ、お前は……。で?その娘は可愛いのか?」

「え?ええと、まあ……かなり可愛いな。うん、俺が言うんだから間違いない」

「で?いつ転入して来るんだ?」

「へ?」

「だから、転入してくるんじゃないのか?この辺で高校っつったらうちの学校しかないだろう?」

「……そうか。そうだったな。ええと……たぶんそろそろだと思うけど」

「そうか。その時はちゃんと紹介しろよ」

そう言うと洋平は小銭を何枚か財布から出し、それらを流の手に握らせた。

「?……どうした?」

「いや、俺この後用事があってさ。ちょっと急がなきゃいけないんだ。あっ、それ、カツサンド代。じゃあな!」

「あ……ああ、じゃあな」

戸惑いながらも流は手を挙げてそれに答えた。

そして小さなため息をついて流は青い空を見上げた。

「……高校ねえ」

そして小さく呟き、家路に着いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ