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第十七話 カツサンド

「よう、こんな所でまたナンパか?」

流が商店街を歩いているといつもの聞きなれた声が流の耳に入ってきた。

声のしたほうに顔を向けるとそこにはいつもの見慣れた顔の細川拓哉と店。

「拓哉さん……残念ながら今日はナンパじゃないよ」

「何だ、違うのか……」

明らかに不満そうな表情を浮かべながら拓哉が文句を言う。

「何でそんなに残念そうなんだよ?」

「いや、まあそんな事はどうでもいいか」

「何か最近人の話を無視するのが流行ってるのか?」

「いや、もともとお前の話はそんなに真剣に聞いてないからな」

「あっそう……」

疲れたように呟く流。

そんな流を見てふと思い出したように拓哉が流を見る。

「そう言えばあの娘はどうなった?昨日の女の子」

「え?ああ、ヨウの事?」

「へえ、ヨウって言うのか……で?家に帰ったのか?」

「いや、家で居候することになったよ」

流がそう言った瞬間、頬杖をついていた拓哉がバランスを崩す。

「………何?」

「いや、だから、俺の家で居候することになったんだ」

「………待て待て待て!!お前、それってかなり危険じゃないか!大丈夫なのか、あの娘?」

拓哉の表情を見るとかなり焦っている。

どうやら本気で心配しているようだ。

「……確認のため訊くけど、何でそんなに焦ってるんだよ?」

「そりゃあ、なあ?だってお前がいるんだぜ?女にとってこんなに危険なことは無いだろ?」

当前だと言わんばかりに答える拓哉。

その拓哉の表情を見て、流が大きなため息をつく。

「一応言っておくけど、拓哉さんが考えてるほど俺は危険じゃないからな?」

「いやいや、それは無いだろう?」

弁解するが流の意見はあっさりと却下された。

「じゃあ、訊くけどどんなところが危険なんだ?」

「そりゃあお前だったら、風呂覗こうとしたり、挨拶代わりにキスしようとしたり、寝ぼけているところに変な事言ったりと色々としそうだが」

「………拓哉さん、もしかして俺の家に監視カメラでもつけてる?」

「あ?そんなもん付けるわけないだろ?」

「だよな……」

そう呟きながら流がうなだれる。

「何だ?図星だったのか?」

にやりと笑いながら拓哉が流の顔を覗き込む。

流はその問には答えずにずっと落ち込んだ様子だ。

「ま、気にすんな。それがお前の本性なんだからな。そんなことよりも新商品を出したんだ。買っていかねえか?」

そう言って拓哉がショーケースを指し示す。

「俺の性格って『そんなこと』扱いかよ?」

「まあいいから下見ろって」

拓哉を睨みつつ言われるままにショーケースの中を覗く流。

ショーケースに並んでいるものは様々な種類のコロッケ。

そしてその端にあるもの、それは……

「か……カツサンド?」

流はショーケースを見つめたまま呆気にとられている。

これまでの経緯で分かると思うが、カツサンドは流の大好物だ。

「ああ、そうだ。確かお前好きだったろ?」

「も、もちろん!」

「今日は味見係として一個ただでやるよ」

そう言って中にあるカツサンドを取り出して流のほうに投げる。

「サンキュ!これからカツサンドは拓哉さんの店でしか買わないよ!」

流はそれを受け取ると拓哉に頭を下げながら礼を言った。

「ああ、是非そうしてくれ。……まあ、どうせ余りもんだしな」

「それじゃあ、俺帰るから」

「そうだな。気をつけて帰れよ。お前は数少ない客なんだからな」

走り去る流を見ながら拓哉はそう言った。

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