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第百一話 信頼

「あ、でもその人見知りだけどさ、あいつ無くなったみたいんなんだよ」

「あ?直ったのか?」

「ああ。結構学校でも友達ができてきたみたいだし、さっき俺の後輩を家に連れてきても身じろぎ一つしなかったからな」

先ほどのことを思い出しつつ、説明する流。

達也は納得したように頷いてから、「で?」と身を乗り出してきた。

「結局あいつの素性は何なんだよ?」

「あ、そうそう。その後輩がさぁ……」

「パク」

「あっ!ひでぇ!!」

再び流に渡すはずの紙袋からカツサンドを取り出し、それを口に運んだ達也に流が欠かさず非難の声を浴びせる。

「なにが『ひでぇ!』だ。お前がいつまでも話を逸らそうとするから悪いんだろうが」

「分かった!分かったからもう食うな!」

もう一つ取り出して食べようとする達也を流が慌てて止めにかかる。

達也はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべながらそれを元の紙袋に戻した。

「……………簡単に言うとだな。あいつは人間じゃないんだ……」

「いただきます」

「何でだよっ!」

間髪入れずにカツサンドを口に運ぼうとする達也に流が慌てて突っ込みを入れる。

「お前が真面目に話さないからだろうが」

「話してるよ!」

達也が様子を伺うように流の顔をのぞき込む。

じっと真剣な表情で見つめ合う二人。

やがてため息を付きながら達也はショーケースの上で頬杖を付いた。

「しょうがねぇ。言ってみろ」

「ああ。サンキュ」

二人とも意志が通じ合ったのか、互いにそう言って再び話題に戻った。

「で、仮にヨウが人間じゃないとして、何なんだあいつは?」

「一言で言うと『悪魔』なんだ」

「悪魔だと?」

流が答えると、流から発せられた奇妙な言葉に達也が思わず聞き返した。

「ああ。話せば長いんだけどな……」


流がこれまでの経緯を話し終えると、達也は特に取り乱す出もなくただ目を瞑って頷いた。

「なるほど……『取引』か」

「驚かないのか?」

流が訊くと達也は

「別に」

と言って肩をすくめた。

そんな言葉を聞いて流も安心した表情を浮かべる。

基本、達也は人の秘密を他人に言い触らしたりせず、それだけでなく助けになってくれることさえある。

そんな確信があったからこそ流は達也にこのことを話したのだ。

おそらく達也も助けになりたかったがために詮索したのだろう。

「ん」

声を出しながら達也が手に持っていたカツサンドの袋を一度おいて、別のものに取り替えてから流にそれを突き出した。

「え……?」

意外そうな表情で流が達也の顔を見る。

「何だよ、その顔は?」

「いや、だってこれ減ってない方だろ?いいのか?」

「ばぁか。お前俺が本気であんなことすると思ってんのかよ」

「ああ」

流が即答すると達也は呆れた表情で大きなため息を付いた。

「もういい。さっさとどっかに行けよ。もう用件はすんだ」

達也がおっ払うようにして手を振ると、流は言われるがままにそのまま背を向けた。

が、

「っと、そうだ」

流が途中で足を止めて振り返る。

「ありがとな。達也さん」

「……ああ?何がだよ?」

「俺のことを心配してくれてたんだろ?話せてすっきりしたよ」

「けっ、知らねぇな」

プイと流から顔を背けながら達也は言った。

その様子を見て苦笑しながら流は再び背を向けて走っていった。

やがて達也が先ほどの体制のまま目だけ流の方に向けて誰にと言うわけでもなく呟く。

「あんまり一人で背負い込むなよ、流」

大学受験は終わるはずでしたが、無事というわけにもいかなくてそのまま浪人という形でもう一年続くこととなってしまいました。

なので投稿が少し遅れるかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いします。

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