第百話 物(?)質
「と、言うわけでカツサンド」
「……どう言うわけだ?」
流の言葉にカツ屋の経営者である達也がつっこみを入れた。
「いや、疲れてるからカツサンド」
「まあ、売れるんなら良いけどな」
言ってカツサンドを包み出す。
「いやぁ、ヨウが来てからあんまりカツサンド食ってなかったからさ」
カウンターにお金を出しながら流が文句を言う。
達也はその言葉に反応して、ふと手を止める。
そして真剣な表情で流の方に顔を向けた。
「そう言えばあいつの身元は訊いたのか?」
「え……?ああ、聞いたよ」
「へえ………で?」
言いながら達也は再び手を動かし始める。
「何だよ、そので?って」
「いや、だからヨウの素性は?」
「ああ、そのことか。そのことならもう解決したよ。大丈夫」
「へえ。で、どっから来たんだ?あいつは」
ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべながら達也が尋ねてくる。
興味津々のようだ。
「アメリカから泳いで渡ってきたみたいだ」
「ほう。そいつはすごいな」
言いながら拓也がカツサンドを一つ口に放り込む。
流に渡すはずの袋から。
「あっ、何するんだよ」
「何をするも何もこれは俺のカツだ。俺が食って何が悪い」
「いや、そうじゃなくて俺の袋から盗っただろ、今」
「あ?ああ、そうだな」
当たり前のように頷く拓也。
「お前が本当のことを言わないからだろ?」
「だからってそんなことして良いと思ってんのか!?」
「ああ」
即答。
じっと拓也を睨みつける。
「おーおー。恐いねぇ。流石、元不良」
「そのことはもう良いから、早くカツサンド返せよ!」
「そうだな。本当のことを話せば返してやろう。言わないのなら全部没収だ」
「くっ……!………ここのカツ、もう買わないぞ」
「ああ、いいぜ。ただ、お前もここのカツが一番おいしいことは知ってんだろ?」
「うっ……!」
流がたじろぐ。
確かにカツのおいしさでここにかなうものはまずこの町にはないだろう。
そしてそれはどこに行っても変わらないだろう。
「だ、第一それは俺一人で決めて良い問題じゃないだろ?」
それを話すにはまずヨウの承諾が必要だ。
「あっそ」
言って、また一つカツサンドを口の中に放り込む達也。
まさに問答無用。
「くそっ………分かったよ!話せばいいんだろ、話せば」
心の中でヨウに謝りつつ、達也に事情を話すことにした。
突然で済みませんが、大学受験が近くなり、忙しくなってしまったため、半年ほど休載します(おそらく復帰は三月から四月になると思います)。
また、再び書き始めた時はよろしくお願いします。