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017話 更に二年経って

久々の投稿です!! 待っていただいて、感謝の念が付きません!! 皆さま! 見捨てずにいて下さってありがとうございます!!(日本語が怪しいのは気にしないでください)

「アマルー! 遊ぼうぜー!」


 そう声を掛けて来るのは村の子供の一人、ルイスだ。一年前に声を掛けられて、当たり障りの無いように断っていたのだが、諦めずに毎日毎日遊びに誘って来るので諦めて遊んでやったらこうなった。


 水を汲んで来た帰りで水入りの壷を持っているのに、何故今声を掛けたのか理解に苦しむが、まあ拒否すると後で面倒なのだ。


「水を家に運んでからだ」

「よっしゃー! ならさっさと家に行こうぜ!」


 そう言って走り出したルイスの後ろから、ルイスと同じ明るい茶髪に茶目を持ったルイスより背の低い少年が来た。


「ごめんね。アマル兄。兄ちゃんがあんなで」


 弟であるクリスにまで『あんな』と言われているが、弟が謝った所で本人が変わらなければ意味がない。


「お前が謝った所で、彼奴(あいつ)が変わらなかったら意味無いからな。謝る必要は無い」


 気にしてないという様に肩を竦めたアマルにクリスは笑って話しかけて来る。今の内から苦労性が滲み付くと苦労人になる様な気がしないでもない。


 そんなこんなで家に水を運んだアマルは、家の奥に置いてある鉄のナイフを服の下に隠した。これは三日程前に来た行商人に譲ってもらった物だ。隠し貯めした獣皮を鉄のナイフと交換したのだ。


 交換した当時は不自然に錆で覆われていたのだが、それのおかげで譲ってもらえたも同然なので気にしないことにしている。


 手入れの方はどうとでもなったし、鞘の方も革で作ってある。これを見れば商人も売らなかっただろう。なんたって錆を落とした後のナイフは銀と見紛う程の物だったのだから。


 そんなことをチラッと頭の隅で思い浮かべながら、ルイスとクリスの家に向かう。


 因みに、このナイフを商人から貰った時は商人から「お前も子供なんだな」的な視線と、母親方から温かい視線を向けていたが、これでも兎くらい狩れると言い、更に温かい視線を向けられた事があった。


 それはともかくとして、ルイス達の家の前には当人であるルイスとクリス以外に、同い年のユーリとその妹であるジーナの二人。計四名が集まっていた。


 その中で一番最初にアマルの事に気が付いたジーナが、ピョンピョンと飛び跳ねんばかりの雰囲気でアマルの事を呼び、更にそれでアマルに気付いた他の三人もアマルの事を呼んだ。


「あ! アマルおにいちゃん! こっちだよ!」

「おそいぞー! アマルー!」

「アマル兄ー!」

「アマルー!」


 騒がしくアマルを呼ぶが、走り出すとか笑顔を浮かべるとかそんな事はなく、何時も通りに三人の下へ歩いて行く。


 アマルが来ると、直ぐ様ルイスが口を開いた。


「アマル! アンナとセリアの所に行って、いつもの場所で遊ぶぞ!」


 そう言って走って行ったルイスに、それに追随するように駆け始めるジーナ。そしてジーナに引っ張られて行くように走るユーリ。


「おにいちゃん! 早くいかないとルイスおにいちゃんにおいてかれちゃうよ!」

「う、うん。わかったから、わかったから待ってよ! ジーナ!」


 そうして走って行く三人を見て、クリスは隣に立つアマルに聞いた。


「アマル兄はいかないの?」

「......クリス。俺は先に何時もの場所に行っているって言ってきてくれ」

「うん。わかった。じゃあ後でね、アマル兄」


 伝言を伝えたクリスが走っていくのを見て、アマルは別の場所へと足を向けた。その場所は森。『迷いの森』や『不帰の森』と呼ばれる森とは別の方向にある森だ。その森の浅部にある、直径にして百メートル程開けた場所が、ルイス達が言う何時もの場所である。


 この場所は村人もよく来る場所なので殆ど危険は無い。そこで遊ぶのがルイス達の楽しみなのだ。


 村を歩き、森へ向かう。その途中、幾人かに話しかけられたが『何時もの場所に行く』と言えば笑って『行ってらっしょい』と言われた。


 こういう小さな村だからこそのやり取りかも知れない。若しくはアマルの顔が広いのだろうか? その辺は個々人の解釈によって変わると思う。


 そして村人が周囲から居なくなった時に神出鬼没を使い、更に身体強化を使って周囲に影響(地面が凹むとか)が出ないように調節して、高速で森へ向かう。


 目的地である森の広場には一分ほどで着いた。幾ら距離が近いと言っても早過ぎる様な気がするが、アマルの能力(スキル)は大抵こんなモノだ。転移とかしないだけましである。まあ尤も、出来たとしても鍛える為に走っただろうが。


 広場に着いたアマルは能力(スキル)を解き、手近な木を背凭(せもた)れにして腰を下ろした。待っている間特にすることも無いので、魔力支配、修復、破壊、神出鬼没の四つの能力(スキル)を発動させる。魔力支配で効率を上げ、神出鬼没で体から発される魔力を遮断する。そうする事で体から魔力光(あの銀色の光)が放たれることが無くなるのだ。


 傍から見ればボーッとしてる様にしか見えないが、これでもしっかりと鍛えているのだ。現に肉体の破壊と修復以外に、脳内に展開した智慧乃書(アクル・リーブル)から情報を仕入れたりしているのだ。怠け者なガキだと馬鹿には出来ない......それに気が付けばの話だが......


 そうして、アマルは皆が来るまでの時間を潰した。




――――――――――




 それから十分程して六つの足音と声が聞こえた。能力(スキル)にもある通り地獄耳なアマルは直ぐに分かった。詳細は少年の声が三つ、少女の声が三つ。丁度半々だ。


 六人が姿を見せる前に立ち上がると、五分程前から二メートル程離れて座っていた兎や鹿が森の奥の方へ逃げて行った。何故二メートル離れていたのか分からないが、気にしない事にした。


 広場の真ん中辺りまで来ると六人が森の中から姿を現した。向こうからも此方が見えたのだろう。ルイスを筆頭に皆が走って来る。


 ルイスが何か喚いている様な気がするが何も聞こえない。例え「アマルのバカー!」とか「なんで先に行ってるんだよー!」とか言っていてもアマルには一切聞こえていない。


「それで? ルイス。今日は何をするつもりなんだ?」

「冒険者ごっこやろうぜ! 冒険者ごっこ!」

「却下」


 自分の所に来たルイスに聞いたが、意味の分からない事を抜かしたので速攻で却下した。因みに、ルイスの言う冒険者ごっことはあくまで『ごっこ』だ。誰かが冒険者役をしてもう一方が魔物役をする。そして倒される魔物役は殴られたり蹴られたりするのだ。やる訳がない。


「ねえアマルおにいちゃん。キャッカってなに? 食べ物? おいしいの?」

「ジーナ。アマルの事だから食べ物ってことはないと思うんだ」

「ジーナちゃん、わたしも食べ物じゃないと思うな」

「アマル! キャッカってどういう意味よ? 早く教えなさい!」


 ジーナが可愛くアマルに聞き、それをやんわりと否定するユーリとセリア。そしてアンナがアマルに迫りながら聞いてくる。


「近いぞアンナ」

「なんで押すのよ! 別に押さなくてもいいじゃない!」

「そんな事よりアマル。キャッカってなんだ?」

「キャッカではなく却下だ。つまりルイスが言う冒険者ごっこはやらないという事だ」

「なんでだよ!」


 説明するとルイスが喚き始めたが、軽く無視する。若干膨れているアンナも含めて聞いてみる。当然だがルイスには聞かない。どうせ碌なことは言わない。


「それで、お前等は? 何がしたい?」

「はいはい! 勇者ごっ......」

「却下」

「なんでだよ! おれさいごまで言ってないだろ!」


 予想通りだった。勇者ごっこは冒険者ごっこと殆ど変わらない。冒険者役と魔物役が勇者と魔王に変わった位の違いしかない。


「わたしはお花つみたいな。それで冠とか花束とかつくるの」

「それジーナもやりたい!」

「おれはやだね!」

「じゃあルイスは何がしたいのよ?」

「だから! おれは冒険者ごっこか勇者ごっこがしたいって言ってるだろ!」

「それはさっきアマルが却下? っていうのをしてたじゃない」

「あのさ、僕は前にアマルが言ってた竜追いって言うのをやってみたいな」

「何だそれ?」

「僕はわかんないからアマルに聞いてみて」

「じゃあアマル。竜追いってなんだ?」


 そうして聞いてきたルイス達に、竜追いについて説明した。竜追いとは、この世界風に言っているだけで、鬼ごっことあまり変わらない。


 先ず竜となる人を一人決めて、残りの者が決められた時間内逃げ続ける。竜の役を交代する時は、逃げる役の者を掴むのだ。触るのでなく掴むのだ。そして二回捕まった者は終了。それだけの簡単なルールだ。


 説明し終わったら何故か目を輝かせているルイスと、ウズウズしているジーナが視界に入った。


「なんだ? やりたいのか?」

「やるやる! おれ竜やりたい!」

「ジーナも! ジーナもやる!」


 二人のテンションが何故か爆上がりしているが、それを無視して他の四人にも聞いてみた。


「お前等は? これ、竜追いで良いのか?」

「わたしもやってみたいな」

「僕もやってみたいかな」

「仕方ないわね。やってあげるわよ」

「分かった。ルイスが竜として、俺達が逃げる方だ。範囲はこの広場だ。ルイス。一旦俺達がお前から離れるから、俺が合図したら始めだ。わかったか?」

「分かった。わかったから早くやろうぜ!」

「皆、この広場の中だけで広がったくれ」


 アマルがそう言った後、ルイスを除いた全員が広場に散らばった。そしてアマルが合図を出す。


「いいぞ。ルイス」

「よっしゃ! 行くぞー!」


 そうして始まった竜追い。何時もの光景。子供達が遊ぶ楽し気な光景。それは変わらずに続く。


 そして、この日から更に二年が経つ。




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