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013話 『死』

え~、はい。最後の方を書き直しました。

「ぐっ............かは! ......はぁ......はぁ......」


 眼を開けると、ぼやけた(・・・・)視界一杯に『青光石(ブルーライトストーン)』の地面が入って来た。周囲を確認する為に立ち上がろうと、痛む(・・)体に鞭を打ち、ボロボロ(・・・・)の両手で体を持ち上げる。が、体に力が入らず、体を仰向けにするのが限界だった。


 零畏(レイ)の体は酷い状態だった。装備は半分以上が溶けており、右腕は血塗れで左腕は爛れた様な見た目になっている。そして何より、体全体に黒い靄の様なモノが纏わり憑いていた。


 (ぼや)けた視界にリア、リナ、(しの)、アルフレードの顔が入って来た。美少女三人なら兎も角、厳ついオッサンなんて誰得なのだろうか。アッチ系の漢女(おとめ)辺りなら喜びそうだが。


(耳も、喉も、死んでるか......)


 リア達が何か言っているのは口元が動いているので何となく分かる。何を言っているのかも何となく分かる。所詮読唇術(とくしんじゅつ)の様なモノだ。


 口形からある程度の内容を察する技術。特に難聴者などが使い、口話や読話と呼ばれる事もある。一般的には後者の方で呼ばれているが。


「......ぼくは、約束は......守る......から......」


 魔言を使って言葉を放つ。この場合、声帯を震わせるのではなく、言葉に込めた魔力が直接空気を振動させ言葉とする。だが、それでも発された言葉は弱弱しく小さい。


 眼に涙を溜めながら回復魔法を掛けていたリナが驚いて目を見開いている。対象に、篠とリアは零畏が渡した魔道具を見せながら何かを言っている。


「大......丈夫。絶対、取りに来るから......それまで、待っててくれる......?」


 アルフレードは痛々し気な表情をしながら顔を背け、リア、リナ、篠は涙を流しながら必死に何かを叫んでいる。


「......僕は、約束は、守るから......」


 零畏は、その言葉に残った魔力を全てつぎ込んだ。言い終わると同時に、意識が遠のいて行く。眼も開けていられなくなり、視界が闇に閉ざされていく。


 眼が完全に閉じ切り視界が完全に闇に閉ざされた時、零畏は意識を失った。それきり、十六夜(いざよい)零畏レイが目を開けることは無かった。




――――――――――




 眼を閉じ、完全に生命活動が停止している零畏にリア達が叫ぶ。


「零畏!! 零畏!! 眼を開けてよ!! 零畏ってば!!」

「零畏さん!! 待って!! まだ、まだ間に合うから!!」

「零畏っ、その冗談、笑えないっ! 今なら、怒らないから、早く、眼を開けて!!」


 アルフレードが顔を背け、シャタアルが悲し気に零畏の遺体を見つめ、騎士団はほんの少し顔を歪め、生徒達は大半が呆然とした表情で遺体となった零畏を凝視していた。一部の男子は、顔を俯かせ影で表情を隠し、激しく落ち込んでいるように見えるが、実際は喜んでいた。


 そんな中、零畏の体が一瞬光ったかと思うと、足先と手先から光の粒子となり霧散し始めた。零畏の体を覆っていた黒い靄も、零畏の光の粒子と共に霧散していく。


「あ、ダメ!! 零畏!! ダメ、ダメだってば!!」

「いや、嫌ぁ!! 待って、待ってよ!! お願いだから、止まって!!」

「行かないで!! 零畏!! 戻って来て!!」


 泣きながら零畏の体に縋り付き、崩壊し霧散していく零畏の体を留めようと精一杯抱きしめる。だが、三人の想いに反し、無慈悲な崩壊は進んで行く。


 零畏の体の崩壊は進んで行き、抱きしめた腕の間から光の粒子が漏れて行く。零畏の体はどんどん小さくなっていき、遂に、完全に光の粒子となり、霧散した。


 突如、零畏の体が霧散して呆然としていた三人を光が包み込んだ。三人は反応することなく、その光に包まれる。


 その様子を見たアルフレードが動こうとするが、動く前に光が晴れた。


 リアの手首には銀色に光る腕輪型の千変万化があり、リナの首元には対極の頸飾(けいしょく)が、篠の腰にはポーチ型となった無刻限の袋(ニツゼルポーチ)と、胸元には零畏が掛けていた眼鏡が引っ掛けられていた。


「零畏は、取りに来るって、言ってた」

「うん。約束は守るっても言ってた」

「零畏さんが約束を破った事ないから」

「ん。取りに来るまで私達が持っておく」

「私達に預けたって言ってたから、きっと取りに来るはず」

「その時は怒るよ。僕は」

「その時は、一緒」

「私も。一言くらい言いたいから」


 三人は、零畏に渡された魔道具を見ながらそれぞれで励ましあう。あそこまで心に傷を負えば、本来なら回復に数日は必要なのだが、リア達の装備している魔道具には鎮静作用と精神的補助の効果もあるのだ。だからこそ、こうやって話すことが出来ている。


 それでも残っている傷はある。だがそれは時間が癒していくだろう。それだけじゃない。『約束』もしたのだ。こんなところでウジウジして、立ち止まっていられない。


「お前達! 迷宮を出るぞ! 立て! 何時までも腑抜けているな!!」


 アルフレードの叱責により、心ここに有らずな状態で立ち上がり騎士団に護衛されながら動き始めた。リア、リナ、篠はフラッシュバックする零畏と会った時の記憶を見て、しっかりと歩き出す。


 三人は零畏から託されたそれぞれの魔道具に触れ、胸の内に広がる暖かさを実感し、しっかりと前を見据えた。




――――――――――




 深い水の底から引き上げられるような感覚と共に意識が戻り、無意識に目を開ける。


 そして見たのは、不思議な空間だった。四方八方が黒と白の混ざり合った空間であり、果てを認識することが出来ない。


「ぐぅぅ......」


 そんな空間を眺めていると、突如、頭痛が襲って来た。頭を抱え、蹲る。苦悶の表情を浮かべ、額には脂汗が浮かぶ。


 フラッシュバックするのは先程死んだ時の光景。そして、遡る様に今までの記憶が鮮明に甦って来る。迷宮までの道のり、宿、道具屋、王城、召喚、そして地球での生活。零畏の最も古い記憶、十二歳の時、真っ白の病室で様々な機械が繋がれて寝ているモノ。


「っ!!」


 そこから更に記憶が遡り始めた。それに伴い、頭痛も酷くなる。思い出した記憶に息を呑む。冷や汗が流れる。


「思い出したか......?」


 その時、零畏の後方から子供の様な中性的な声が聞こえた。その疑問形の言葉が聞こえた方を向くと、五から七歳程に見える子供が立っていた。


 肩まである冷たい印象を与える銀髪に、右目が金、左目が銀の金銀妖瞳(ヘテロクロミア)の子供。少女とも少年ともつかない見た目をしているが、その無表情と雰囲気が見た目に反している為チグハグな印象を受ける。


「......君は?」

「......簡単に言えば、俺はお前だ」

「つまり、僕と君は同じ存在って言う事?」


 立ち上がりつつ子供の方へと向きを変えながら聞くと、予想の斜め上を行く答えを返してきた。が、鵜呑みにせず聞き返したが、頷く事で肯定とされた。


 咄嗟に言葉が出ず、黙り込んでしまう。子供の方は相変わらずの無表情で此方を見て来る。それを気にせず思いついた事を聞いた。


「リア達は、大丈夫なの?」

「そっちは大丈夫だ。あの魔道具が落ち着けてくれる。それに何より、お前との記憶、『約束』と言った方がいいか? まあ、それのおかげで落ち着いている」

「そうなんだ......」


 子供から聞いて、安堵の溜息が出る。だが、次の瞬間、零畏の体が光に包まれた。


「これは?」

「......時間だな。お前がパンドラの函を開けた時、誓約が掛かった筈だ。その誓約の効果でお前は消える」

「そうなんだ。でも、有難う」

「何が」


 寂し気な笑みを浮かべながら礼を言う零畏に訝し気な目を向ける子供。零畏はそんな子供に苦笑しながら理由を話した。


「君が居てくれたから、僕が今まで生きて居られたんでしょ?」

「......別に、お前の為じゃない。俺が生きる為だ」

「それでも、有難う」

「......」


 顔を逸らし、何か言おうとするが、結局何も言わず黙った子供。零畏はそんな子供を見ながら、頼む。


「僕とリア達の約束。君に頼んでもいい?」

「自分の頼みくらい聞くし、果たすべき事は果たす。義理や仁義を捨てれば、それこそ俺は......とにかく、俺はお前だ。分かってる」

「じゃあね」

「ああ。俺の中で、安らかに眠るといい」


 子供が言い終わると同時、零畏は微笑み、光の珠となった。その光の珠は子供の方へ飛んでいき、同化するように消えた。


「......貴方に、お願いがあるわ」

「っ! ......お前、なんでっ」


 零畏の光が溶け込み、記憶も想いも継承した子供が目を細めると、その場に新たな声が聞こえた。子供が振り返り、その声の主を見て、目を見開いた。


 子供の目の前に居る女性は、優し気に柔らかく微笑み、愛おし気に目を細めた。




礼を言う零畏、この言葉どうにかならないですかね? ダジャレみたい(みたいじゃなくてダジャレ)で嫌なんですよね......仕方ないか。

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