000話 プロローグ
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「......父さん......? ......母さん......?」
十歳程の少年が、目の前に横たわる両親を見て、呟いた。
少年の服は所々が敗れており、また見えている肌は転んだのか、擦り傷や切り傷、泥や砂といった物が付着している。更にその額には汗で髪が張り付いている。まるで、‶何か"から逃げていたかの様だ。
「父さん......っ! 母さん......っ!」
少年は横たわる両親に駆け寄り、揺すりながら呼びかけるが、二人は反応しない。
「目を開けてよっ! 父さんっ! 母さんっ!」
両親の身体には、至る所に殴られた痕や刃物で切られたような痕があり、地面には血溜まりが出来ている。
幼いながらに聡明な少年は両親が死んでいる事に気付いているが、認めたくない現実に、泣きながら必死に両親へ呼びかける。
「見つけたぞ!」
その時、不意に後方から低い男の声が聞こえた。
すると、少年の後方から数人の男達が走ってきて、少年を取り囲んだ。
「や~っと見つけたぞ」
「手間かけさせやがって、一々(いちいち)逃げるんじゃねよ」
少年を取り囲んでいる複数の男の内、二人の男が少年に向けて言った。
少年は俯いたまま、反応を示さない。表情を見ようにも、前髪がうまく隠している。
「さて、一緒に来てもらうぞ」
「......前............やっ......か?」
「あん? なんか言ったか?」
少年の呟きに反応する男達。
「お前......ち............ったのか?」
「聞こえねえんだよ。もっとしっかり喋りやがれ!」
少年はその言葉に顔を上げると、周りの男たちを見ながら言った。その瞳に内包されているのは憎悪、憤怒、哀しみ、悔しさ、苦しさ、更には未だ抜けきらない困惑といった感情が見える。
「お前達が、父さんと母さんを殺したのか?」
無理やり感情を抑えつけた様な少年の言葉に、男達は下卑た笑みを浮かべる。
「お前が逃げるから悪いんだぜ?」
「そうそう。お前がとっとと俺たちについて来てたら、こんな事にはならなかったのにな?」
「お前が何処に逃げたか聞こうと思ったんだがよ? 何も言わなかったんだよ。死んでまで子供を守るとは、立派な親だよな?」
そう言ってゲラゲラと笑う男達。その様子に、少年は俯きながらフラフラと幽鬼のように立ち上がった。
「やっと一緒に来る気になったのか?」
「......てやる............対......して......る」
「ああん?」
少年の異様な雰囲気に気付き、男達が怪訝な表情をする。
少年はバッと顔を上げると宣言した。
「お前たちはっ! 絶対にっ! 殺してやるっ!」
そう言い終わると、少年は男達へ向かって突っ込んだ。
数時間後、少年の周りには横たわった男達の姿があった。
数時間前よりも更にボロボロになり、体の至る所に痣があり、何故意識を失っていないのか不思議なほどである。
少年はそのまま前のめりに倒れると、薄れていく意識の中で、
(......俺は............人が嫌いだ......)
そう強く想い、意識を失った。
直後、その場所で爆発音の様な音が響いた。