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森の中の管理人は世界を知らず  作者: 煉双 戯六
3/3

3.子供と襲撃と…

お久しぶりの投稿です。

なんだかんだで夏は多忙ですよね。

それに最近暑いですよね。


冷房の効いているカフェでゆっくり珈琲を味わいながら執筆したいものです。

子どもの背後からある程度近づくと、森の精霊の気配に気付いたのか、振り返った。

そのタイミングをチャンスと捉えた森の精霊は話しかけた。


「やぁ、人間の子供よ。主はこのような辺境で一体何をしておるのだ?」

瞬く間に子どもの顔が唖然としたものに変わってしまったのも無理はないだろう。

突然、宙に浮かぶ光る球体に話しかけるという摩訶不思議な現象に触れたのなら誰であろうとそうなるはずである。

そして、この現象を受けて停止した思考が再び起動した時、ワンテンポ遅れてやってくる感情は不可解な物に対する恐怖であろう。

出方を間違えてしまった、最悪戦闘になるかもしれない、という森の精霊の懸念は杞憂に終わった。


「わぁ、すごい!ピカピカ光ってふわふわ浮かんでる〜!どうやってやってるの?」

これは子ども特有の知的好奇心が恐怖に勝った結果である。

そんなことなど露知らず、どうやら戦闘になることは回避したらしいということしか分からなかった森の精霊は安堵の胸をなで下ろす。

そして情報を引き出すべく会話を再度持ちかける。


「………やぁ、人間の子供よ。主はこのような辺境で一体何をしておるのだ?」

「え!?喋ってるの!?すごい!もっと喋って!んーじゃあ名前なんて言うの?」

「………」

まるで成立しない会話にどうしたものかと森の精霊は考え込む。

のだが、「ねぇねぇ、どうしてピカピカ光れるのー?」「ねぇねぇ、どうしてふわふわ浮いてるのー?」「ねぇねぇ、なんか喋ってよー!」などといった、考え込む暇も与えない程の猛烈な質問と要望のラッシュが襲いかかる。

それを森の精霊は「精霊だから」という一言で一掃すると、「なるほどー、せいれーか!」と子どもは頷く。

質問が収まったのを確認した森の精霊は子どもから情報を引き出す方法を再び考え始める。


「ねぇー、せいれーって何?」


そう思った矢先にこれである。

「その答えが知りたければ私の質問に答えて欲しいんだけど、どうかな?」

このまま受けに回ってしまっては完全に子どものペースになってしまう。

それは不味い、と考えた森の精霊は交換条件という方法を用いることにしたのだ。

「うんっ!いいよ!」

子どもには拒否する理由なんてなく、勿論二つ返事で呑んでくれた。

「ありがと。じゃあ、質問だけど、主はこのような辺境で何をしておるのだ?」

「うーんとね、───」


子どもの話を要約すると、目が覚めて気付いたらこの森に既に独りでいたらしい。

見知らぬ地に、しかも常に薄暗い森の中に独りだったのが心細く、また恐怖であったために泣いてしまい、その泣き声で引き寄せられた魔物を目にした時は死を覚悟したという。

魔物が飛びかかって来た時、反射的に目を瞑ってしまう。

しかし何時までも痛みがやってくることはなかったので不思議に思い恐る恐る目を開くと、そこには魔物の肉塊が転がっていて、後は森の精霊が見た光景通りである。


「───って感じかなぁ。」


子供の様子は魔物という恐怖から解放された故なのか、ホッと安心しているように見える。

そして森の精霊は子供の話を聞いて、子供が嘘を吐いているようではないと思った。

しかし、そうなると魔物をどのようにして倒れたのか、という疑問が残る。

この子供がやったのか、それとも別の何かがやったのか。


森の精霊の思考の進展が行き詰まり始めていたその時。

森の精霊と子供が向き合っているその横の叢がカサカサと音を立てた。

突然の音に子供はビクッと肩を震わせる。


もしや、この茂みの中の何かが魔物を倒した犯人なのだろうか。

森の精霊がそう考えたとしても仕方がないであろう。

警戒しながら揺れる叢を注視していると、一段と大きな音と共についに姿を露わにした。

その大きな音に子どもは肩を震わすだけでは物足りなかったのか、尻餅までついてしまっていた。


しかし、その正体はなんてことはない、ただの群れの狼だ。

おそらく魔物の死臭に誘き寄せられたのだろう。

今は魔物から避難した動物が多く、この近辺にはあまりいないのだろうが、いつやってくるかは分からない。

魔物の死骸は早めに処理した方がいいだろう。

森の精霊は呑気にそんなことを考えていた。

それは狼が、動物が自分を襲わないことを知っているからである。

だがしかし、いくら森の精霊の近くにいるとは言え、銀色髪の子どもは狼にとって獲物であることに変わりはない。

それを森の精霊は失念していた。


そして狼の群れは一斉に尻餅をついたままの無防備な子どもへと襲いかかった。

しかし、これは強者が弱者を襲うという自然の摂理であり日常茶飯事の出来事の一つに過ぎない。

故に森の精霊が銀色の子どもをいくら守りたくとも、手を出すことが出来ないのだ。


そこで森の精霊は自身の思考に違和感を覚えた。

それは、目の前で繰り広げられようとしている日常茶飯事の出来事の一つに過ぎないものに何故介入したいと思ったのだろうか、というものである。


子どもが可哀想という哀れみからだろうか。

もしそうであるなら、それは矛盾した話である。

森の精霊は長い期間この森にいる。

その間に幾度もこのような光景は見てきている。

川で熊がなす術のない魚を捕食している場面。

木々の間を通り抜ける野兎を瞬く間に口に咥えている狼。

これらを見ても森の精霊は何も感じなかった。


なのに、この子どもだけは違った。

普段通りの出来事と何ら変わりないのに、失念などしていないのに失念していたと錯覚したのだ。

だが、その謎についてよりも、今は子どもを助けることを最優先に行動すべきだろう。

優先順位をやはり客観的に付けた森の精霊は動き出す。


精霊だから緊急時以外に管轄地の出来事に介入してはいけない。


森の精霊が生まれながらにして背負った制約の鎖はこうして解かれたのである。


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