監督はスパイ?
監督は密かに大夢をチェックしていた。
というのも、癖は読まれているはずなのに裏をかく行動。
そのルーツはどこにあるのか、めちゃくちゃな程気になっていた。
「坂上大夢・・・身長160cm体重52kg・・・野球選手にしてはとても小柄だが、彼は自分の特性を良く分かっている。そんな気がするんだよなぁ。まさか彼は10年、いや、四半世紀に1人の逸材かもしれん・・・。」
まずは登校。眠そうな顔で登校する。
しかし、大夢自身も負けてはいなかった。
先生に会うと必ず笑顔で元気よく挨拶を交わす。
「おはようございます!」
「坂上か、おはよう!」
挨拶は人間生活を営む上で基本中の基本である。
どんなに気分が悪くても、性格が暗い奴だとしても、憎たらしい人がいるにしても。
むしろ悟られないように、挨拶だけはしっかりと交わそう。
もちろん大夢は暗い奴ではないが。
まして中学時代と違っていじめの心配はまず無いのだから、元気になれない理由などないだろう。
大夢の中学時代はひどかった。とにかく荒れていた。常識のない奴が多かった。
問題もいっぱいあった。地域住民からクレームもあった。
しかし、今通ってる高崎商業は有数の文武両道校である。
進学校でなくても、文武両道の実践は可能だし、実現できた人は社会でも活躍している。
大夢自身も、甲子園に行きたい気持ちもあるが、
何よりもまず社会人になるための土台を身につけようと3年間頑張る覚悟を持っていた。
もちろん挨拶だけじゃないだろうと。
時間あれば監督自身もまだまだチェックしていくつもりだ。
もちろん監督自身もチームから大夢に対して贔屓してると悟られないように。
大夢はシャイな性格だが、同時に熱い一面をも持っている。
例えば若駒杯で不甲斐ないデビューを果たして敗戦を知り涙を流した件。
そりゃあれだけ投げたのだから何も感じないわけが無い。
裕登が火に油を注ぐ形で大量失点を重ねてしまい、ベンチ外から反感を買われ、
事件沙汰になるところを、大夢が珍しく怒鳴った件もある。
その話は次回にでも記そう。