刑務所の中での喧嘩
アメリカのドラマの中には、刑務所の中が舞台になっているものがあります。見てみると、まあ恐ろしい世界ですよね。
高い塀に囲まれ、部屋の壁は灰色のコンクリート。自由がなく、喧嘩は日常茶飯事で、看守に警棒でぶん殴られ、さらには大物の囚人を怒らせた者が殺されたり……もう、なんというか完全に異世界ですよね。
もっとも、こうした描写は刑務所が「怖い場所である」という意識を植えつけるためにも必要なのかもしれませんが。
では、日本の……それもフィクションではないリアルの刑務所はどうなのかと言うと、だいぶ違うようです。なお、ここから先は複数の友人知人らに聞いた話をまとめたものです。したがって、場所によって多少は異なる部分もあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。
いきなりですが、再犯の刑務所では喧嘩は多いそうです。
特に府中刑務所を出た人の話は凄まじかったです。まず、些細なことからいきなり喧嘩が始まるらしいのですが……場合によっては他の囚人たちも加わり、さながらバトルロイヤルのような状況になるとか。
何故そんなことになるのかといいますと、府中刑務所は再犯もしくは本職のヤクザが行く場所です。ヤクザや再犯の人間は、おとなしく務めて仮釈放をもらおう……などというつもりはありません。
そしてヤクザといえば、当然ながら「○○組系」「○○会系」といった派閥があります。
仮に「なろう組系」のヤクザが「カクヨム会系」のヤクザと揉めたとしましょう。その場合、近くにいる「なろう組系」のヤクザは加勢しなくてはならないらしいんですよ。特に、喧嘩の当人がそれなりの地位にいる場合など「自分がいきますから」などと言い出す奴が出てくるとか。
ところが、カクヨム会系のヤクザがそばにいたりすると、話はさらにややこしくなるようです。「おいおい、お前らカクヨム会に喧嘩売ってんのか」などと言いながら参戦してきて、さながらバトルロイヤルのごとき喧嘩となってしまうそうです。なんとも恐ろしい話ですね。
もっとも、こうした喧嘩もすぐに看守たちが押し寄せて来て、あっという間に収めてしまうそうです。
それとは対照的なのが、初犯の刑務所です。
初犯の行く、いわゆるA級刑務所には……基本的にヤクザはいません。そのため、喧嘩などはあまり起きないそうです。おとなしく刑期を務め上げ、仮釈放をもらって出所する。そのため、皆なるべく問題を起こさないよう気を配っているとか。
したがって、仮に喧嘩になったとしても、せいぜいが襟首を掴み合う程度……それでも、すぐに看守が飛んで来て懲罰用の部屋へと連れて行かれてしまうそうです。
ここで話はズレますが、刑務所の懲罰というと、両手を背中の部分で拘束する革手錠を連想する人もいるかもしれませんが、あの革手錠は二十年くらい前から、ほとんどの刑務所で廃止されているそうです。よっぽど反抗的なケースでも、革手錠は使わないとか。理由は、後で訴えられたら面倒だから……だそうです。
さて、刑務所の中で喧嘩をして、相手に怪我を負わせたとしましょう。その場合、事件送致という処分になるそうです。
たとえば、Aという囚人がBという囚人を殴り怪我を負わせたとします。すると、Aは一時的に囚人ではなく容疑者という立場になり、警察もしくは検察の取り調べを受けることになります。そこで刑を加算され、また囚人の立場に戻るわけです。
しかも、事件送致になった囚人に仮釈放は与えられないそうです。つまり、Aは刑を満期まで務め上げた後、さらに加算された新たな刑を務めることとなるわけです。
要するに、刑務所の中で喧嘩をしたとしても何も得しないわけです。ヤクザならともかく、そうでない人は喧嘩などしても仕方ありません。
これはおまけですが、刑務所の中では喧嘩を止めても懲罰になるそうです。止めるふりをして喧嘩に加わる者もいるから、だとか。何とも怖い世界ですね。
初犯の刑務所は、再犯の行く刑務所よりは安全なようですが……それでも、ひどい場所であるのに変わりはないようです。ましてや、ヤクザでもないのに再犯の刑務所などに行ってしまったら……まあ、悲惨な目に遭うこと間違いなしでしょうね。というわけで、月並みな結論で申し訳ないですが、悪いことはしないようにしましょう。




