嘘を楽しめる余裕
今回は、とある有名作品に対し毒を吐いてます。そういうのが嫌いな人は、読まないことをオススメします。
かつて私の高校には、嘘つきが異様に多かった……というのはこれまでに何度も書いてきました。実際、ありもしない武勇伝などをべらべらと喋る人間が大勢いましたね。
ですから、私は嘘に対し常人より耐性が低いのかもしれません。嘘を得々と語っている人間を見ていると、どうしても不快になってしまうんですよね。
以前なろうで、あるエッセイを読みました。内容はというと、とある人気作家さん(私とは全く交流のない人ですが、人気は凄く何作か書籍化しています。私は読んでませんが)の数々の体験を面白おかしく書いたものです。実話だとあらすじには書かれていたのですが、まあ嘘が目立つ作品でしたね。
分かる人には、一目で嘘だと分かるような内容でした。
特にひどかったのが、警察の取り調べです。作家さんは、警察で取り調べを受けたらしいのですが……とんでもないことが書かれていました。
「両手両足の指紋を採取された。ただし、DNAを採取されたかどうかは覚えていない」
一度でも補導されたり逮捕されたりした経験のある人なら分かると思いますが、普通は両足の指紋なんか採取しません。よほどの大きな事件で、床に足跡がくっきりと残されていた……などという場合でないかぎり、足の指紋などいちいち採取しないんですよ。
さらに、DNAを採取したか覚えていない……という部分に至っては話にならないですね。DNAの採取なんかは、結構なイベントらしいんですよ。テレビの刑事ドラマでは当たり前のように行われていますが、実際には事件の証拠がらみでないかぎり採取したりしません。ましてや、補導した人間のDNAをいちいち採取したりしていたら、金がかかって仕方ないでしょうね。
しかも、そんなDNA採取を「されたかどうか覚えていない」の一言で終わらせるとは……どういう記憶力なんでしょうね。
さらに、取り調べた刑事さんを「ヤクザのような風貌。パンチパーマだったかもしれない。スキンヘッドだったかもしれない。よく覚えていない」と書いております。こうなると、もはや笑うしかありません。ヤクザのような風貌は覚えていながら、パンチパーマかスキンヘッドか覚えていないとは……どちらも特徴的であり、間違えないと思うんですけどね。
ちなみに、以前にも書いたように、私も警察の取り調べを受けました。挙げ句、留置場にて一泊し検察庁に行って、ようやく解放された経験があります。
その時のことは今もはっきり覚えていますが、指紋は両手のものを採取されました。両足の指紋もDNAも採取されていません。これは断言できます。また、取り調べを担当した刑事の顔も名前もはっきり覚えています。薄いバーコード頭に銀縁のメガネをかけた、物凄く嫌な感じの中年男でした。名前はあえて書きませんが。
さらに言いますと、逮捕された知人たちもまた同様です。両手の指紋を採取されましたが、両足の指紋を採取された者はいません。DNAもまた同様です。
とにかく、このエッセイは私の目から見れば嘘だらけでした。他にも嘘と分かる部分は幾つもありましたが、取り調べを受けた場面が一番ひどかったです。
ただし、こうした話にいちいち目くじらを立てていても仕方ないんですよね。
おっさんたちの読む週刊誌やスポーツ新聞には「淫乱女子大生の赤裸々な告白」「熟女たちの秘密」などというようなバカ丸出しのエロ記事があります。説明の必要もないでしょうが、編集部まで送られてきた女性の実体験を記事にした……という触れ込みなものです。
この記事、一応は実話……ということになっていますが、そんなものを本気で実話だと信じている人はまずいないでしょう。いるとしたら、よほどのバカでしょうね。その実態は……言うまでもなく、どっかのライターが書いているのでしょう。
前述のエッセイも、こうしたエロ記事と同レベルのものであると考えるのが正解なんでしょうね。突っ込み所は数えきれないくらいありますし、実際に底辺の環境で過ごしてきた私からすれば「嘘書いてんじゃねえよ」と不快になる部分もあります。
しかし、そんなことを言っていても仕方ありません。それを嘘だと分かっていながら、余裕を持って楽しむ……それこそが、大人の態度なのでしょうね。実際、ほとんどの人がそういうスタンスで読んでいるのでしょうし。
それでも、本音を言うなら不快になってしまうんですよね……明らかな嘘を「実話だ」などと書かれてしまうと。これは、私という人間の器の小ささ故なのかもしれませんが。
ちなみに、私のエッセイには嘘はありません。この言葉を信じるか信じないかは、あなた次第ですが。
蛇足かもしれませんが……なろう読者には、騙されやすい人が多いような気はしますね。だからこそ、小説のふりをしたダイエット広告が何度も投稿されるのかもしれません。




