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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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実家にいた猫の奇行

 今回のタイトルを見て「何じゃこりゃ」と思われた方もいるかもしれませんが、たまにはこんなのもいいのではないか、と思い書いてみました。毎回チンピラだの犯罪だのといった話ばかりだと殺伐となりますので。




 前にも書きました通り、実家には猫の夫婦がいました。雄の方はゴル、雌の方はベルという安易な名前です。

 ベルは、おっとりしたノンビリやさんでした。家の中をのそのそ歩き、時おり我々人間にジャレつく、という猫です。飼い犬とも仲良しでした。

 しかしゴルの方は血の気が多く、犬に対して猫パンチを見舞っていくこともしばしばでした。その上、あちこちで喧嘩して歩く暴れん坊でした。

 そんなゴルですが、ちょっと変わった癖があったのです。


 普段、ゴルは私を完全に無視していました。私が名前を呼んでも、ほとんどが知らん顔です。遊ぼうとして撫でても、迷惑そうにとことこ離れていきました。

 ところが、私がストレッチや筋トレをしている時に限り、向こうからちょっかいを出してくるのです。

 たとえば、私が座った状態での前屈なんかしていると、ゴルは離れた場所から、じっとこちらを見ています。「あいつ、また変なことやってるよ」とでも言わんばかりの様子で。

 私はゴルを無視し、長座前屈を続けました。すると、ゴルはとことこ近づいて来て、私の背中に猫パンチを打ってくるのです。「コラ、何してんだ」という感じで。

 それでも無視してストレッチを続けていると、ゴルの攻撃もだんだん激しくなってきまして、しまいには私の足を己の前足でがっちりロックし、猫キックをくらわしてきました。私は仕方なく、ストレッチを中断するのです。

 かと思うと、日によってはゴロゴロ喉を鳴らしながら、頬を擦りつけてくることもありました。腹筋運動などしていると「そんなのやめて、俺と遊んでよう」とでも言わんばかりにゴロゴロ喉を鳴らしながら……そんな時は、本当に困りましたね。普段は絶対にしない行動なんですが、なぜかストレッチや筋トレをしている時に限り近づいて来てました。


 ゴルにはもう一つ、変わった行動がありました。それは、週に一度くらいの割合で屋根裏の探検をすることです。

 私の部屋は実家の二階にありまして、屋根裏に通じていました。もっとも、普段は板でふさがれており猫が入ることは出来ません。

 しかし、ゴルは気が向くと二階に上がって来て私の部屋を横切り、天井裏に通じる場所の周囲をうろうろしていました。

 私がそちらに行くと、ゴルは「にゃあ」と言ってきます。分かってるだろ、とでも言いたげに……まあ、私も何をすればいいかは分かっています。仕方なく、板を外してゴルを屋根裏へと送り出しました。

 すると、ゴルは小一時間ほどガサゴソと屋根裏を探索し、気が済むと降りて来るのです。こんなやり取りが、週に一度くらいの割合でありました。

 ゴルは、いったい何をしているのか……私も気になり、月に一度くらいの割合で屋根裏を見てみました。中にネズミでもいるか、あるいはトイレ代わりにされていたら悲劇だからです。

 しかし、中は綺麗なものでした。虫の類いはいたかもしれませんが、ネズミなどの害獣のいるような気配はありません。まあ、奴らも私に見つかるほど愚かではないでしょうが。

 ともかく、ゴルは週に一度くらい、屋根裏を探索する癖があったのです……とまあ、ここで閉めれば、ほのぼのエピソードで終わるのでしょう。

 しかし、それで終われない話があります。




 ある日のことです。

 その時、私は部屋でスーパーファミコンもしくはプレステで遊んでいました。すると、私の部屋を横切っていくものがいます。雌猫のベルでした。

 ベルは隣の部屋に行き、天井を見上げました。そして「なあ、なあ」と鳴き始めたのです。まるで、親しい友人に語りかけるかのように。

 私は首を傾げました。ベルは人懐こい猫ですが、そこには誰もいません。いったい何をしているのでしょうか。

 私は近づいてみました。しかし、ベルは私を完全無視です。何もない空間に向かい「なあ、なあ」と鳴き続けていました。

 どうやら、ベルは何かの存在を感じ取っているようなのです。親しげに挨拶するような、何かの存在を……。

 背筋に冷たいものが走り、私はベルを抱き上げてそこを離れました。一階のリビングに行き、家族が帰って来るまでそこに留まっていたのです。

 ちなみに、その時ゴルは外に出ていました。ベルの方は、まだ二階に行きたいようでしたが、ウェットフードの缶詰を開け皿にあげたら、美味しそうに食べてました。


 ゴルが週に一度、屋根裏に上がっていた理由……それはひょっとしたら、屋根裏に訪問しに来ていた私には見えない何者かと遊ぶためだったのかもしれませんね。ゴルとベルにだけ感知できる不思議な存在と。

 そう考えると、私の日常はにわかにホラー小説のごときものと化していくのです……。





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