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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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脱獄のリスク

 二〇一八年の四月、松山刑務所から受刑者が脱獄しましたが、後に広島市で逮捕されました。この受刑者にどんな事情があったのかは不明ですので簡単には語れませんが、あまりにも軽率な行動だ……と言わざるを得ません。

 さて、かつて刑務所に行っていた知人らに聞いてみると、みな口を揃えて「脱獄など、考えたこともなかった」と言っておりました。その話を基に、今回は脱獄というものがいかに割に合わないか……について語ります。私のような一般人ですら、話を聞くと「そりゃ、脱獄なんかしたくないわな」と思いましたので。




 脱獄を阻む大きな理由として、日本の刑務所は人権を守っている場所である……ということが挙げられるでしょう。

 食事は三度きちんと出ますし、服や布団はちゃんと貸し出されます。北海道や東北あたりの寒い地域にある刑務所では、スチームの暖房も設置されているらしいです。

 また、本を読むことも出来ますし、週に二日の休日もあるそうです。さらに部屋の中には将棋と囲碁があり、囚人同士で遊ぶことも出来ます。

 さらには、刑務所にいる限り、世の中のつまらん雑事とは無縁でいられる……と、知人の一人が言っておりました。

「いや、シャバにいたら色々と面倒なことがあるだろ。でも刑務所にいたら、あとは出ることだけ考えていればいいからな。楽といえば楽だよ」

 この話を聞いた時、私はちょっと複雑なものを感じてしまいました。罪に対する罰のはずの刑務所……なのに、楽といえば楽。それは、果たしていいことなのかとは思いましたね。

 事実、寒くなると留置場や刑務所には「志願兵」と呼ばれる人種が増えるそうです。外の暮らしがキツくなったホームレスが、しょうもない罪を犯して入ってくることを指すスラングだとか。刑務所側からすれば、困った人たちではあります。

 この志願兵ですが、聞いた中で一番ひどかったエピソードが……刃物で女の子を脅して二万円を奪い、その金でパチンコをしてスッカラカンになり、交番に自首したホームレスの話です。まあ、ろくでもない奴ですね。万が一、女の子を傷つけてしまったら……などとは考えなかったのでしょうか。ホームレスになるのも仕方ない、と言えます。

 志願兵の件はともかくとして、話を聞いた限りでは、刑務所という施設はそんなに居心地の悪い場所ではなさそうです。少なくとも、ホームレスよりはマシなようですね。世間の人は、あまりいい気持ちはしないでしょうが。




 ただ管理する側から見れば、これは仕方ない部分もあるんですよね。

 海外には、劣悪な環境の刑務所もありますが……やはり看守に対する反抗、さらに暴動も多いようです。看守が囚人に殺されるケースもあるとか。

 刑務所という施設には、逃げ場がありません。学校や職場ならば、気に入らない人間がいても家に帰れば顔を合わせずに済みます。

また、ガス抜きの手段もいくらでもあります。

 しかし刑務所という、閉鎖された自由の空間……そこで不快な思いをしても、我慢するしかないのです。

 人間の不満というものは、放っておけばどんどん溜まっていきます。やがて耐えきれなくなれば爆発するでしょう。

 刑務所における爆発、それは脱獄という形を取る場合もあります。今回の脱獄事件ですが、付近で開催されるはずだったイベントが中止になるなど大騒ぎになりました。逃走中は、付近の住民の方々にしてみれば、「警察は何をやってんだ!」と思っていたことでしょう。

 脱獄や、あるいは看守への反抗や暴力沙汰といった事態を未然に防ぐためには……多少のゆるさは必要なようですね。厳しく締め付けるだけだと、プラスよりもマイナスの方が大きいでしょう。

 実際、ある知人は言っていました。

「むかし自衛隊にいた奴とか、パルクールやフリークライミングの経験者なら、脱獄しようと思えば出来ないこともないと思うよ。でも、問題はその後だからな。脱獄した後、外でどうやって生きるか……ホームレスみたいな生活するくらいだったら、刑務所の方がまだマシだよ」

 童話『北風と太陽』ではありませんが、脱獄させないことより、脱獄したいという気持ちをなくさせる……それが出来れば、管理する側としては勝ちなんですよね。また実際の話、脱獄などしても何のメリットもありません。

 逃げた後に別人として生きられる手段のある人間なら話は別ですが、そうでない場合は徹底した捜索が行われることとなります。いずれは捕まり、逃走罪を追加された状態で刑務所に戻されることとなるでしょうね。

 しかも知人の話によると、自殺や逃走を企てた囚人は特別な房に入れられるそうです。二十四時間ずっとカメラで監視され、自由を極端に制限されるとか。

 しかも、仮釈放は無しです。初犯なら、ほぼ確実にもらえたであろう仮釈放。ところが今回の脱獄犯は、僅か二十日ほどの自由(?)を味わうために仮釈放がパーになり、その上に刑期を増やされた挙げ句に二十四時間監視体制の特別房行き……私なら、確実に気が狂いますね。

 もっとも、そうした事情に関しては脱獄した彼の方が確実に詳しかったはずです。そうした事情を知りつつも、逃げてしまったとなると……精神的に追いつめられていたのでしょうね。




 ただし、件の脱獄犯は……この先、確実に手記を発表し、そこそこ売れることでしょうね。その流れを計算の上で脱獄したのなら大したものですが。

 また、こういう書き方は不謹慎ですし誤解を生むかもしれませんが、あえて書かせていただきます。いじめに悩んでいるような学生さんは、学校という場から一度くらい脱走してみてはいかがでしょうか。

 学校という環境にいることで精神的に追いつめられ、自殺を考えるくらい悩むなら……まずは脱走してみるのも手かもしれません。結果、様々なことが表に出る可能性もありますし。







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