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エッセイ書いたんだよ!  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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ポン中スパイラル

 実に不思議な話ですが、ヤンキーという人種はやたら上下関係が厳しいんですよ。世の中の規律や管理を嫌い、自由を求めてヤンキーになったはずなのに、さらに厳しい環境に身を置くとは、何とも理解不能な話ではあります。

 そんなヤンキーにとっての重要な課外活動であり、今や死語……いや死族ではないかと思われていた「暴走族」ですが、未だに存続しているようですね。


 以前、といっても二十年以上前ですが、私の地元にも暴走族が存在していました。

 この暴走族は主に都内で活動しておりまして、知人のユーゴ(仮名です)はそこに所属していたのですが……まあ上下関係がつらかったと言っておりました。先輩の命令は絶対であり、ヘマをすればボコられるのは当たり前だったとか。ブラック企業みたいですね。

 そのあたりの事情を詳しく書きたいところですが、今回のテーマとはズレますので書きません。




 先ほど登場したユーゴですが、彼はかつてポン中でした。説明の必要もないとは思いますが、ポン中とは覚醒剤依存症に対するスラングです。

 彼が覚醒剤を射ち始めたのは、地元の暴走族に入ってからでした。上の人間から進められたのがきっかけのようです。

 暴走族というのは、先ほども書いたように上下関係が厳しいです。先輩の命令は絶対でして、しかもその先輩から「何だよ、お前ビビってんの?」などと言われたら断ることなど出来ません。さらに、彼らにとって「ビビってる」という評価は、それだけで死活問題なのです。よく「薬物を勧められても、断る勇気を持とう」などと言いますが、そんな勇気のある人間は、最初からヤンキーなどになっていません。

 ユーゴもまた、そのパターンで覚醒剤を始めたようです。しかし彼らの場合は、さらに厄介な問題がありました。




 基本的に、暴走族という集団はヤクザとも関わっております。ここで登場するのが『ヤクザ屋さん』の章で登場した石野さんです。石野さんはポン中であり、さらには暴走族のOBでもありました。つまりは、ユーゴの先輩に当たるわけですね。

 ユーゴは、この石野さんから覚醒剤を売り付けられていたようでした。それも、かなり割り増しした値段の覚醒剤を……。

 どういうことかと言いますと、ヤクザが覚醒剤をポン中のA氏に一グラム二万円で売ったとしましょう。

 すると、A氏はそれを友人のポン中や後輩などに売りますが……その際、必ずと言っていいほど削ります。ひどい奴になると、一グラムを五等分くらいすると聞きました。五等分、つまりは〇・二グラムですが、それを二万円で売りつけるわけです。つまり、一グラムが最終的には十万円になるわけです。マスコミなどで発表される「覚醒剤の末端価格」というのは、こうしたものを参考にしているそうです。

 前述のユーゴは、石野さんにたびたび削られていたとか。もっとも、これはユーゴだけではありません。石野さんは、他にも覚醒剤を売り付ける後輩を何人か抱えていたようです。さらに「お前、俺以外の売人から買うなよ」とも言っていたようです。

 ちなみに私も「赤井、もしネタ(覚醒剤)やりたくなったら、いつでも言え。俺が安く売ってやるからな。ただし、他の奴からは買うなよ」と釘を刺されていました。買わねえよ、と私は心の中でツッコミを入れてましたが。




 ヤンキーの人間関係というのは、本当に厄介なものです。この石野さんから覚醒剤を買っていた連中の中には、カルキ(水道水を綺麗にする薬)などを混ぜてかさ増しし、さらに下の後輩に売り付けていた者もいたそうです。要は、ネズミ講にも似たシステムが出来ていたんですよ。

 ヤンキーの組織に特有の上下関係を利用し、上の人間が下の人間をポン中に変えて覚醒剤を売りつけ、その下の人間はさらに下の人間に売りつける……こうした「ポン中スパイラル」とでも言うべき現象は、一度巻き込まれたら逃れるのが難しいでしょうね。

 たまに学園ドラマなどで「あんな子と遊んではいけません!」などと叫ぶ教育ママが登場します。大抵の場合、悪役として扱われますが……実際に刑務所に入った人間などを間近で見ていると、教育ママの考えも間違いではないと言わざるを得なくなりますね。

 ちなみにユーゴは、その後に依存症治療のため某団体の施設に入り、やがてその団体の職員になったそうです。




 余談ですが、私はヤンキー連中との付き合いはありました。が、暴走族だのチーマーだのに入るよう誘われることはありませんでした。

 なぜかと言いますと、いろんな理由はありましたが……主な理由として、私はあまりにも服装に無頓着だったことが挙げられます。特に当時は、染みだらけのよれよれのシャツと穴の空いたジャージ、さらには左右違うビーチサンダルを履いて近所をうろうろしていました。

 これは「俺は流行りなんかファッキンシットだぜ」という、見せかけだけの清潔さを尊ぶ世の中に対する反抗の意思を示していた……つもりだったのですが、端から見れば若いホームレスでしかありません。

 特にヤンキーという連中は、ファッションには異様に気を使うんですよ。なので「こんな奴とは町を歩きたくねえ」と思われたのでしょうね。おかげで、そうした集団への加入を勧誘されることはなかったです。

 それが良かったかどうかはともかくとして、当時の私はヤンキーとは違ったベクトルの「痛い」人間であったということは間違いないですね……。







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